199.勇者マルコ
ネタ回になりました。
その日の夜、孤児院の院長先生、副院長先生にここまで来た経緯を話し、南にあるエルフの里について聞いた。
院長先生たちは僕たちが魔の森を通ってきたことに驚いていたが、エルフの里についての話もしてくれた。
場所は南にほぼずっとまっすぐ行けば良いのだが、距離がある。その間ほとんど道らしい道はないので、魔の森の時ほどではないが、道を作りながら進むことになる。そういうこともあり、一日10kmほど進めても1か月はかかる計算になる。
そして、次の日、朝から村唯一の鍛冶師であるドワーフのベルグのところへ行って、挨拶と東にある鍛冶師の村、ブラックスミスについて聞く。
色々教えてもらえたが、結局、距離も道もエルフの里と大差ないことがわかった。つまりどちらも今回行けない。計画を練ってからとなる。(もちろん、最初からそのつもりだった)
ベルグさんに、孤児院出身の彼の弟子たちの話をしたりして、今日のところは村の見回りがてら訓練へということになった。
ベルグさんのお店というか工房を出たところで、壁の影からこっちを見ている男の子がいる。勇者のマルコだ。
「猫耳、ハァハァ。ミーアちゃんかわいいよ。ハァハァ」
‥‥ドン引きだよ。猫人族のミーアを見て鼻血まで出てるし。というか、この距離で聞こえていないとでも思っているのだろうか?本人にも丸聞こえだと思うのだが。
「何だ?アイツは?」
「ああ、放っておくのがいいニャ、ライド。マルコはいつもワタシの耳を見てコーフンするから気持ち悪いのニャ。変態ニャ」
ほら、気づかれてる。
そして、ライドがちょっと来いと言って手招きしている。逆らうわけにはいかないのだが、顔を引きつりつつおとなしく来るマルコ。あ、ダンカンも一緒だった。
「何ですか?ライドさん。俺は今、猫耳というこの世の神秘を愛でる時間なのに」
「怖いニャ~!」
そう言って、僕とエルドの後ろに隠れるミーア。
「隠れるならライドの方が大きいからそっちに行きそうなのに」
「ライドはミーアのことを売るから嫌ニャ」
「売らねーよ!!」
ノフスの疑問に答えるミーアと理由を聞いて怒るライド。
「まあ、いいや。オイ、マルコお前“勇者”なんだって。これから模擬戦やろうぜ。“勇者”ってのがどんだけ強いのか見たい」
「嫌です!」
「いいから来い」
「ギャー!!ライドさんに勝てるわけないでしょ!?死ぬわ!ちょ、本気で助けて~!!」
そのままライドに首根っこ掴まれて連れていかれる勇者マルコ。助けを求めるが、皆知らんぷり。ダンカンに至っては親指立ててサムズアップ。
「あとで覚えていろよ。ダンカン!!」
そう言いながら連れていかれる勇者マルコ。
ちなみに帰ってきた後、マルコは孤児院の片隅で膝を抱えて体育座りしつつ
「もう、お嫁に行けない‥」
などと遠い目をしつつ、呟いていたとかなんとか。…やっていたのは模擬戦だよね?何があったのか。
勇者マルコは今後も重要人物になる予定ですが、だんだん不安になってきた今日この頃。




