19.冬のダンジョン 3/3
春前の話3話目です。少しダンジョン周囲の状況がわかります。
僕の補佐として色々動いてくれる、優秀なダンジョンメイドのシャールさん。彼女は元々は規模はわからないが街一番の商会で奉公人として働いていた。この奉公人はピンキリで、シャールは本業の傍ら、読み書き計算などを勉強していた。つまりシャールは次期商会の幹部候補として見られるほど優秀な人材であったということだ。
では、その優秀なシャールさんの読み書き計算の能力とは?
ということで色々簡単ではあるが測ってみたら、読み書きは問題ないが、計算能力が現代日本の小学生3年生レベル、下手するとそれ以下であるとわかった。なんとか掛け算できるかな?という程度。
これではDPの管理とかは任せられない。
だって、メニューにエクセルのようなものもあって、計算させてみたけど、
「主様、申し訳ありませんが、これは私には難しすぎます。できません」って泣かれてしまった。
問題はそんなに難しくはないよ。1日のDP収入がいくらで、7日で計いくらになるとか、そんなのばっかりだったんだけどなぁ。
これで心が折れてしまったようで、僕の補佐役として僕の考えを理解するって方針に切り替えたんだよね。
なんか、うまくシャールにやられたような気がしないでもないが、僕のダンジョン運営はシャールに丸投げ作戦は失敗に終わった。今度はもっと上位種でチャレンジだ。運営は部下に丸投げしてお気楽に過ごしたいんだよ。
このシャールの件でこの世界の文明レベルが推察できるので、悪かったばかりではない。
「シャール、聞きたいんだけど、この世界のお金はリュート神聖国だけが作っているということだけど、他の国は作らなかったの?」
「いえ、作ったのですが、早々に真似されて偽造されたのが出回り、どんどんなくなっていきました」
やっぱりね。お金、通貨って何が一番大事かって、信用なんだよね。この場合の信用とは偽造されないこと。もしくは偽造とすぐにわかることなんだよね。そこがわかっていても、偽造防止には技術が必要で、ある程度の技術力がないと通貨を作ることはできない。
つまり、ある一定の技術力を持つのがリュート神聖国のみではないかと推察される。
このこととシャールの生い立ちの話からこの世界の文明レベルは絶対君主制どころか、その前段階の王制にすら至っていない可能性が高い。
村で力をつけた、大商人や地方豪族たちの時代。小国があるようだから、日本でいうと平安時代にいっているかどうかではないかと思うんだ。
そして、そんな時代にリュート神聖国はおそらくは絶対君主制の国だろうが、いきなり絶対君主制の国ができるなんて、まずありえない。間違いなく転生者なり、地球の知識が入っている。このリュート神聖国は敵にしない方がいい。あまりに面倒なことが起こる。
技術の発展は情勢の安定がないと難しい。豪族たちの時代は戦いの時代で比較的頻繁に争いが起きて、力のある一族に集約されていくため、なかなか技術の発展が難しい。そんな中通貨の偽造防止技術があるくらいの技術が発展しているということはそれだけの国力があるということ。
周囲が戦争だらけのはずなのに少なくとも中心部は戦火を免れていることだから。
そんな国が弱いはずがない。
幸いなのが、最初のダンジョンコアの説明で名前が出てこなかったこと。つまりダンジョン周囲にリュート神聖国はないということだ。まあ、ダンジョン入り口周辺にできるだろう集落が発展して関わりができるということはありえるだろうけど。
もうすぐ春になるが順調にダンジョンの整備は進んでいる。まずDP収入が増えたことが大きい。自分のプライベートルームもDPショップからベッドやら、木製の四角のテーブルと椅子を買い少し部屋らしくした。
このDPショップで気が付いたが、雑貨や生活用品、武器、防具などの商品の説明に写真と共にに製作者のナンバーが書いてある。生活用品や家具などは主にダンジョンマスター10番が作成者となっており、武具などの作成者は主にダンジョンマスター1番となっている。
この商品登録がどうなっているのかコアに聞いたら、作製物がDPショップにないものであるとき、DPショップに登録するか選べるらしい。
こういったところでも新米マスターとベテランマスターの実力の違いというのを見せられたような気がする。早く、ダンジョン運営を安定させて部下に丸投げしたいですねぇ。
リュート神聖国はかなり後ほどイベントを考えていますが、本当にかなり先の話になります。
そして春前の話がやはり3話で終わりませんでした。もう1話入れます。早くすすめろよという声が聞こえてきそうですが。