189.魔の森へ挑む
野営を終え、朝早くから行動を開始する。
「えーと、行くのは良いんだけど、これどうやって行くの?」
「エルド、開拓しつつ行くんだ」
「当然、モンスターも襲ってくるよね?」
「もちろん。ここからは植物系と虫系が主にね」
そういうことで、道を作りながら進む。風魔法で草木を切り、飛ばし、土魔法でならす。その間、モンスターも襲ってくるが、
「あ~、その草、モンスターのような気がする」
「その木、モンスターのような気がする」
「上から実が降ってくるような気がする。当たると痛い気がする」
「このまま、真っ直ぐ進むと何かある気がする」
などなど、ライドが言う通りのことが起きる。ライドは獣人族で耳など五感が人間よりはるかに良いのだが、なぜわかるのか聞くと、今回のは完全に勘だそうだ。
見えているか、わかっているとしか思えないのだが。まあ、大いに助かっているのだが。
そうして、南東方向に進むこと1日。ついに目的地である遺跡が見えてくる。その前に
「あ~。なんかそこらの木だけど、全部モンスターのような気がする」
というライドからのありがたい勘と言う名の予言を聞き、そのとおり、トレントの集団に襲われる。しかし、ここでもライドが大活躍。
今回ライドは斧を装備してもらっている。トレント対策として。剣では枝を払えるが、幹はなかなか難しい。というか摩耗が激しすぎるので、森を抜ける頃には使い物にならなくなっているだろう。その点、斧なら力任せに切り倒すこともできる。
トレントから採れる木そのものは、魔法力との親和性が高く、魔法杖に加工すれば高級品として扱われるし、魔法建材として高級住宅にも使用されており、高値で売れる。今回かなり大量に入手できたので、金銭的には大きく黒字となった。
トレント達の襲撃をしのぎ、逆にすべて倒したあと、元ダンジョン入り口にたどり着く。
そこは周囲を木に囲まれていて、ちょうど1人が入れるくらいの石でできた祠のような入り口がある。祠の石は苔やら草やらに覆われており、長い年月が経過していることを想像させる。
その祠の入り口の傍らに、今までいなかったはずの子供がいる。7.8歳くらいの男の子で緑色の髪に藁を編んだものを羽織り、短パンにサンダルと言う姿でこんなところにいる子供が人間であるはずがない。
コロポックルと呼ばれる妖精の姿に近い。
もちろん、正体はトレント型ダンジョンマスターのトトークで、そのドッペル体である。
「僕の領域にようこそ。人が来るのは初めてだ。歓迎しよう。僕はダンジョンマスターのトトーク。さて、君たちはこんなところに何の用かな?」




