188.魔の森での野営
魔の森での野営は他と違い、特殊かつ過酷なんです。
「さて、飯だ。飯!とっとと準備しようぜ」
「今、やってるよ。もう少し待って」
「しかし、以前はここまで来れなかったんだが。俺らも成長したもんだ」
野営の準備をしつつ、ライドとノフス、エルドで会話している。
現在いる場所は、ワールハイトから東にある魔の森。南東方向に入って、4kmほどのところ。
ここまではワールハイトの傭兵や探索者が入ってくることができる限界だ。しかし、入ってきている人がいるために、森の中で視界も良くはないが、それでも、まだ、道らしきものがあったり、近づいてくるものがあればわかるくらいの視界はある。
僕、エルド、ライド、ノフス、ルル、ミーアの6人で僕らの村、“逃亡者の村”へと移動中。そしてこの野営の後はまともな休みが取れないまま移動し続けなければいけないため、少し早めの野営となっている。
「しかし、野営は良いが、少し早くないか?まだいけるだろ?」
「オイ!?事前の話聞いてなかったのか?ライド」
「ここから、遺跡または廃墟まで、6kmほどあるが、その間は休憩すら取れないから、早めにここで休んで朝早く出発すると言ってあっただろう?」
ライドのアホな疑問に答えるエルドと僕。
ここから、中継の目的地である、かつてのダンジョンマスターがいた、元ダンジョンの遺跡だか廃墟へ道は全く存在しない。道を進むというよりは開拓しながら進むと言った方が正しい状況になり、道中は植物系や昆虫系のモンスターの楽園でもあるため、元々高い攻略難易度をさらに跳ね上げて、人類未踏の地レベルとなっている。
そんな中で休憩を取るようなスペースなどありはしない。しかも、一定時間立ち止まると、木に巻き付いた蔦が襲ってくるため、食事も警戒しつつ、歩きながら交代で摂らなくてはいけない。
「火魔法、使えれば楽なんだけどね」
ルルが言うように魔の森内部で火は厳禁である。
理由は、延焼しないようにとか、森が減少しないようになどではなく、魔の森内部の植物。特に植物系モンスターは火に反応して消火、原因の排除に最優先で動くためだ。つまり、魔の森内部で火を使うと数百匹、もしくは数千匹以上のモンスターに一斉に襲われるという事態になる。
「では予定を確認しよう。今日はここで野宿。明日朝は早めに移動開始。明日中に遺跡までたどり着きたい。その後、東へ2~3日かけて移動し、魔の森を抜ける」
「エルドの補足として、不測の事態を考慮し、予備日に2日を考えている」
「了解。隊列はどうするんだい?エルド、イオ」
「隊列は1列で先頭からイオ、ライド、ノフス、ルル、ミーア、殿は僕、エルドで行く。なので、ノフスは3番手で周囲の警戒を中心にしてほしい」
僕とルルの風魔法か土魔法で開拓しつつ、道を作り、道中襲ってくるモンスターはライド中心で対応。エルドは後方から来るモンスターの警戒と対処をしてもらう。
魔の森での野宿と言っても、火が使えず、テントを広げるようなスペースもないため、木の下などで、木を背に寝たり、魔物避けの香を焚いてはいるが警戒をし続けるという、全く休まる状況ではないが、ここから数日、今のような休憩すらできる場所はない。
食事も携帯食料を大量に作り、各自持っている。今はそれを水で溶いて、簡単なスープを作ったりといったものを用意しているが、味はお察しといったところ。栄養やカロリーは考えて作ったため、味だけなんとかできれば‥というシロモノだ。
しかし、これ以降はスープすら出せない状況になる。ひたすら固形の携帯食料や水で飢えをしのぐという状況にならざるを得ない。
つまり、以降の行程や難易度から考えて、ここからが本番だ。
今まで、だれも魔の森を通り抜けようとしない理由が今回の話です。
こうやってスタミナと精神力をガリガリ削っていきます。これでは攻略はまず不可能でしょう。そもそも、今エルドたちが野営しているところまで来れる人がそう多くはないのですから。




