184.エルラノーア商会幹部会
導入その2。
エルラノーア商会の構成人物紹介も兼ねています。
「では定例の幹部会を始める」
これから始めるのはエルラノーア商会の方針などを決定する幹部会だ。
「では、まず財務部門からの報告を」
「は!では今年度前期の収支を報告させていただきます」
エルラノーア商会の財務部門の代表は去年まで僕と同部屋だったアッシュ先輩だ。色々手伝ってもらっているうちに、そういうことになった。
「‥以上、戦争による臨時増税がありましたが、その分食料などが高値で売れたため、財務は問題ないと考えております」
「ありがとうございました。では次に、管理部門の報告を」
「は!管理部門からの報告としましては、わが商会は設立してまだ半年ほど経過しただけではありますが、すでにワールハイトの中では上位の規模を持つに至りました」
エルラノーア商会の管理部門の代表はフラビオ・ワールハイト先輩。去年までエルドと同部屋で、ワールハイト領主一家の6男だ。6男であるため本人は継承順位が低く、継承の見込みは無いものとしてあきらめ、我が商会で働いている。6男とはいえワールハイト領主の名前はすごく、様々な場面で役に立っている。
「‥その大きな要因としましては、やはり、金銭的に困窮している小規模商会や行商人を援助し、わが商会に吸収していることであると考えます。特に戦争による増税の影響で破産する商会もあり、わが商会で引き受けてもいます。また、そこで出た利益をワールハイト同盟内の各都市に貸付にまわしています。こちらの効果はまだ先になるかと思われます」
わがエルラノーア商会はエルドたち傭兵団が狩ってきたモンスターを解体し、素材や加工した商品を売り、利益を上げているが、元々販路はなかった。そこで、販路を得る目的で潰れそうな商会に資金を貸し、経営が立ち直れば、そこから利益の一部を利子と一緒に資金を回収し、潰れる場合は潰れる寸前に介入。場合によっては潰れた後、良いところ、良い人材を引き抜く。もちろん販路もそのままこっちで引き受ける。
いきなり、今までの商会が潰れて、別の商会が来たところで今までどおりの付き合いとはいかない場合が多いが、「商会の名前は変わりましたが、担当者は変わりませんので」となれば、特に警戒もされにくいし、付き合いは変わらないことが多い。
異世界版M&Aだと勝手に思っている。この世界にM&Aの考え方はない。ライバル商会は潰してしまえ。というだけであるが、我が商会は潰すよりも飲み込むといった対応をしている。そうすることで急速に規模を拡大してきた。
そして、ワールハイト同盟内の各都市への貸付。これで一定の利子を受け取ることで常に利益が出る。うちの傭兵団の力もあり、借金を踏み倒されることはまずない。踏み倒そうとするなら、そのまま街ごと飲み込むつもりだ。無能な領主一家はお飾りとさせてもらって。
今なら戦争で多額の出費をしているところが多く、どんどん貸し付けている。
「ありがとうございました。では次に総務部門」
「はい!総務部門からとしましては‥」
エルラノーア商会の管理部門の代表はセリア嬢。クラスメイトであり、去年野外授業で同班になった女性で、ワールハイトの有力商家の次女で高飛車な態度で覚えている人もいるのではないだろうか。
彼女は野外授業のあと、わが商会を手伝うと言ってくれたのだが、最初は皆とうまくやっていけるか不安だった。しかし、反省したのか、態度も良く、女性らしい気配りができ、気が付けば、我が商会の女性陣の代表のような感じになっていた。そこで思い切って、商会内部の環境整備などを行う総務部門の代表に抜擢した。
「‥以上であります」
この幹部会は他に、エルド傭兵団から団長エルド、魔法部門からルル、狩猟部門からノフスの三名が参加し、会頭の僕を含めて計七名で構成されている。そして会議も終わりになり、僕の閉会のあいさつの番だ。
「では、最後に‥‥僕は今日で会頭を降りる」
「「「「はぁ~!!??」」」」
最後に爆弾を落とすスタイル。




