179.ヒドゥン
別名、主人公に2つ名をつけようの回
主人公の今までのダンジョンマスターとしての活動を外から見て簡略化するとこうなるというお話です。
“隠者”
この2つ名はエルドゥーさん陣営のダンジョンマスターの間で少しづつ広まっていった。
セントリクス大陸西部、つまり僕がいるところ周辺は、最初、大した力のないダンジョンマスターが集うところであった。だが、“人間の敵”としてどんどん英雄や勇者に倒されていき、ついにはいなくなったと思われていた。(ニゴ帝国にいたトトークのような例外はいるが)
ここでエルドゥーさんが手を伸ばせば、すべてエルドゥーさんの物になったのだろうが、色々問題が起きて手を出せなかった。
具体的には任せる予定だった配下の筆頭が突如引退を宣言してしまったことだ。しかも、同時にその配下と領域を繋いでいたダンジョンマスターが人間にやられてしまったことで、計画は頓挫。
その後、時間が経ち、イナミイナシを育てている最中、情報を精査していて気が付いた。セントリクス大陸西部が静かすぎるということに。
計画が頓挫してから100年ほど、セントリクス大陸西部に新たなダンジョンマスターが1人も生まれていないことがわかった。これは異常なことだ。
ダンジョンマスターが生まれるとしばらくして大抵人間に対して何らかの行動を起こし、力が付く前に倒される。というサイクルができるのだが、ダンジョンマスターが倒されると周囲の街や村ではお祭りとなるが、その情報が一切ない。倒せなかった場合はそこを避けるために情報が大量に拡散される。
つまり、静かであるということは、セントリクス大陸西部中央での討伐報告を最後に約100年、新たなダンジョンマスターが生まれていないということになる。
この100年の間にダンジョンマスターは100人ほど生まれ、セントリクス大陸西部以外の世界中に現れているにも関わらずだ。ここでエルドゥーさんは気が付いた。
「師父はダンジョンマスターの領域やその近くに新たにダンジョンマスターを配置することはない。この100年ダンジョンマスターを配置していないのはたまたまではなく、そこにダンジョンマスターがすでにいるから。しかも比較的広大な領域を持つ」
ちなみに師父はエルドゥーさんが魔神様のことをそう呼んでいる呼び名である。
「人間たちとの接触を極力避け、隠れるように存在し、力を貯え続けたダンジョンマスターだ。しかも、人が多く、DPも貯まりやすい。これは迂闊に手を出すと危険かもしれん。幸いドラゴンハンターが集う街が発展してきた関係で予定よりDP獲得が進んでいる。ここで無理をして西部すべてを手に入れるために、戦争などになって荒廃しては意味がない。それにこの“隠者”は明らかに人との融和型ダンジョンマスター。うまくすれば大陸西部が発展して、利益がこちらにも流れてくる」
そのようにエルドゥーさんは考え、イナミイナシをサウザンビーク山脈に送り、情報を集めさせた。この時、この西部を支配しているダンジョンマスターを“隠者”とした。
この“隠者”の情報を人間たちに広め、探させようとしたことで、セントリクス大陸西部の南から北部へこの“隠者”の2つ名が広まった。
また人間たちの強さを測ることも目的としてワールハイト南部にホーンタイガーを放ち、その死亡速度を観測したりしたそうだ。
モンスターによる威力偵察といったところか。
つまり、僕とエルドで倒したホーンタイガーのことだ。…ここで黒幕が判明するとは。
エルドゥーさんの話しから、この“隠者”の動きは僕の動きと一致する。つまり“隠者”は僕で正しいだろう。
「‥というわけで、ワシらはお主と敵対する気はないのじゃよ。今敵対したところで、お互いに益は少ない。損は多いくせにな」
エルドゥーさんの話は続く。
あれ?これだけで1話終ってしまった。そんなに尺使う予定なかったのに‥。
現在、投稿を週3回で予定していますが、火木日か火金日もしくは水金日で悩んでいます。確実なのは週3回投稿になることです。




