16.転生して1年経過
冬に入る前、最後のお話で、ここで異世界転生後1年経過となります。
僕が蜂と熊の戦いを見ている間に、ゴブリンたちがビルドアントを狩ってきた。これで、ダンジョン建築が楽になる。
熊にやられた蜂の行き先が気になり見ていると、北側に行ったところで、突然動きを止めた。
「ここで巣作り?」
とか思っていたら、メイドのシャールさんから
『いえ、これは違いますね。動きを止めたのではなく、止められたが正解のようです』
と指摘される。
もう今ではダンジョンマスターの威厳とかはないですよ?
仲良くなりすぎた?……裏切ることはないからいいですよ。
どうせ、僕はこんなもんですよ。実際、主といっても戦えば負けるし。
と卑屈になっていると、蜂は捕まったということがわかった。
巨大な蜘蛛のモンスターが出てきた。この蜘蛛のテリトリーが一部、ダンジョン領域にかかっていたようで、獲物がかかって近づいてきたので見えるようになったが、最初はわからなかった。
この蜘蛛デカい。黒い鎧のようなものを身にまとった、体長5mはある巨大蜘蛛。
忘れる前に<鑑定>しとく。
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名前
種族 ナイトスパイダー
LV 35
HP 1223
MP 455
STR 680
DEX 345
INT 560
MEN 700
AGI 556
LUK 8
スキル 爪術LV5 金剛糸 隠密 毒攻撃 麻痺攻撃
特性 堅甲殻 自動HP回復(小) 自動MP回復(小)
称号 元ダンジョン守護者
特徴 蜘蛛系モンスターの中では最上位に位置する。罠にかかった獲物を狩るのが得意。その糸にかかると脱出は困難。普段は決められた領域内で獲物が来るのをじっと待っている。肉食で特に昆虫系が大好物。
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ハニービーが暴れても全く切れる様子がない細い糸。その特徴通り、この蜘蛛ヤバすぎでしょ。さっきのビックベアとか目じゃない。
称号のダンジョン守護者は、いわゆるダンジョンボスモンスターとして設定されたモンスターで、元がついているから、ダンジョン|領域(テリトリ-)から外れたか、ダンジョンを攻略されたか。
どうやらこの森にダンジョンマスターがいるか、いたのか。どちらにせよ、このモンスターを見る限り、僕より格上のマスターであるのは間違いない。
「シャール、このナイトスパイダーっていう蜘蛛のことは何か知ってる?」
『主様、最初に話した通り、私はなんでも知っているわけでも、特に博識というわけではないのですよ』
「ということは?」
『聞いたことないです。ただ、蜘蛛の魔物はどれも強く、糸は強靭で、蜘蛛の糸で編んだ服は最高級品の1つです』
「へ~。そうなんだ!」
いつか蜘蛛召喚できるようになって、服作ってみようと思う。
この蜘蛛はこちらから手を出さない限り、自分の領域からは出ないみたいだから、このまま放置で決定。というか、手を出したら死ぬ。序盤からラスボスに突っ込んでも負けるに決まっているでしょ。
北側のダンジョン入り口付近には泉と野菜などが生えているところがある。そこから北に50mほどのところに小高い丘になっているところがある。そこに簡素な皮の鎧に剣または弓という装備をした男が4人いて、観察していた。
「驚きだな。こんなところにこんな場所があるとは」
「ああ、水があり、食料となりそうなものも生えている。ここはいい場所だ」
「そうだな。最初は草しかないと思っていたが、少し足を延ばして正解だった」
「ゴブリンがいるが、早速蹴散らすか?」
「いや、やめておこう。どうせ、すぐに冬だ。蹴散らしても、またすぐには来れないだろう」
「ああ、それに、ここが誰のものかで話し合いが必要だ。今回はこのまま村に帰る方が良いだろう」
「そうだな。ついでに雪に埋もれて、そのままゴブリンどもが死んでくれればなお良い」
「では、戻って報告だな。冬が明けたらまた来るぞ」
「「「おう」」」
ということで、この世界初めての人を見かける。彼らは自分たちだけで話しているつもりだけど、僕には丸聞こえなんだよね。予定わざわざ教えてくれて助かったよ。
元々ダンジョンの入り口は草で隠していたし、人が来たのがわかっていたから、外には最低限度の人数しか、ゴブリン出さなかったし。簡単に蹴散らせると勘違いしてくれた。実際はその何十倍もいるんだけどね(笑)。
ということで、やっと人が出てきました。
16話もかかってやっと人がでるというこの展開。本当はもう少し早めに出す予定だったんですけどねぇ。
領域内は盗聴、盗撮し放題の主人公ですので。
次話からは冬編を3話ほどお送りする予定です。