13.ダンジョンメイドに話を聞く
転生後初の異世界の住人の登場です。
いつもお読みいただきありがとうございます。
感想、メールへの返信はなかなかできないかと思いますが、ご了承下さい。
僕の目の前には僕の補佐役として召喚した幽霊のダンジョンメイドが土下座をしている。今、召喚したばかりで特に何かこのメイドがミスをしたとかはないし、特に態度が不快に思ってもいない。それよりも、ダンジョン内で他に人がいないとはいえ、目の前でお姉さんが土下座している状況は、逆にこちらが申し訳なく感じているくらい。非常になんだか気まずいが、とりあえず声をかけてみよう。
「えーと、……」
『申し訳ございません、主様。どうか、むち打ちや火あぶりといった罰だけはご容赦願います』
「いや、……あの……」
『やはり、私のような無礼者は罰ではたりず、処刑なさるおつもりでしょうか。ううっ。』
と泣き始める。
うん。これ無理だ。そもそも、ずっとボッチで、この世界に来てもずっとボッチで過ごしてきた僕にとって、この状況で上手いこと言うなんてミッション、ハードルが高すぎる。
もう素直に思うがまま言おう。
「別に君に罰を与えようとか、ましてや処刑とかはしないから、頭上げて。まずは君と話がしたい」
ハー。ハーッ。なんとか言い切ったぞ。(汗)
『…え?…そうなんですか?』と顔が上がり、震えが止まるメイド。
「うん。」
『とか言って、噓でしたとかはないですか?』
「ないわ!!……えーと、名前教えてください。なんて呼べばいいですか?」
と、僕はまず、名前を聞いてみた。
『わたくしごときに名前などございません。主様がご自由にお決めください』
「では、死ぬ前の名前は憶えている?」
『はい。シャールという名前でした』
「じゃ、シャールで」
と、あっさりと名前を決める。というか、数年ぶりにまともに人?と話するのに色々考える余裕などないですよ。
その後、幽霊のシャールに色々聞いてみて、わかったことは、まずシャールはどこかの商家の奉公人として働いていたとのこと。奉公人といっても、主な仕事は雑用で、読み書き計算はできるが、商売に関することを何か任せてもらえるわけではなかったとのこと。
そしてシャールと話してわかったが、この世界は何故か日本語が共通言語で、文字はローマ字であった。
で、シャールの生い立ちは貧しい一般家庭に生まれて、読み書き計算を教えてもらいつつ、商家の奉公人として預けられたらしい。
周りの街や国での争いが絶えない地域で、なんでも5歳で預けられて、18歳のときに隣の街の軍隊に攻められて住んでいた街とともに、商家も焼かれて一緒に死んだそうだ。
あれ?
「シャールって、今何歳?」
『18歳です』
「…僕、19歳です」
…年上のお姉さんと思っていたが、年下と判明した瞬間でした。
「シャールにはこれから僕の補佐と身の回りの世話をお願いしようかと思うんだけど、良い?」
『はい。もちろんです。私ではきちんと補佐できるか不安がありますが、精いっぱい頑張らさせていただきます。あと、身の回りの世話ですが、私、もう死んでいますし、そっちのことはご期待にそえないかと……』と顔を赤らめて横を向くシャール。
って、
「いやいやいやいや、身の回りの世話ってそういうことじゃないから。それに僕は種無しの不能ですから」
と、いくら部下とはいえ、初対面の人にいきなり大暴露してしまった。
『え?そうなんですか!?…ではお世話とは食事や掃除など、普通の世話で良いのですね?』
「もちろんです。といっても、僕は食事が不要ですから、普段はほぼ食事はしませんし、掃除はスライムがしてくれるので、そっちの方の仕事はほとんどないかと思います。補佐についても、僕はこの世界のことは知らないことだらけなので、そういった方面からの助言やアドバイスがほしいんです」
『そうなんですね。ただ、私も元々そんなに街から出たことはないですし、博識というわけでもありませんから、助言、アドバイスするなんておこがましいです』
「いやいや、僕なんてこのダンジョンから出たことありませんし、人間がどのように生活しているかとかわからないことだらけですから、その知識と経験は大いに僕を助けてくれるはずです。今後よろしくお願いします」
『かしこまりました。精いっぱい頑張らせていただきますので、こちらこそよろしくお願いいたします』
と、お互いに握手するのであった。
後ほど、よく考えたら、魂が地球とこの世界を循環しているのであれば、この世界の住人の魂ではなく、地球の住人の魂を召喚しててもおかしくなかったんですよね。
なんとか上手くいってよかった。
見た目20代、実は18歳の女性でした(笑)
次回からは少しずつではありますが、本格的に物語が進む、前段階に入ります。
更新ペースは火、木、土日の週4回となっています。これが維持できるようにしていきます。