129.採掘
いつもありがとうございます。
ワールハイト近くにある採石場はかなり大きな岩山がいくつか連なっているところを切り開き、斜面とした場所で、まだまだ枯渇する様子は見せない。良質な石が採れるためワールハイト軍が管理している区画もあり、そこは許可なく入ることはできない。他の区画でも大きさはないが比較的良質な石が採れ、道などに使われるため大規模な採取が行われている。大きさのないものはgいくらで買い取りを専門店でしてもらえ、比較的大きさのあるものは専門店で庭石などとしてお金持ちに売られるため、高値で買い取りをしてもらえる。
僕らは比較的大きさのある石を『収納』に入れ、お目当ての鉱物を採りに行く。
「いや~、子供もかなりの数いるな」
「話には聞いていたけど、人が多いね」
「これは残っているのかな?」
採石場にも子供含めかなりの数の人がいるのだが、金や銀が採れると言われているところはその採石場近くの洞窟のような穴が掘られているその中にある。
元々洞窟の存在は知られていたが、そこから金や銀を含む石が見つかったのは十数年前。その時はワールハイトでは大騒ぎになり領主が調査に乗り出したのだが、大した量がなく、採算が合わないことがわかるとすぐに放棄し、一般の採掘者たちが入るようになった。純度が低く、大したお金にならないと言ってもそれは領主側の話。少しの量で金貨がもらえるのであれば一般の人には一攫千金に見える。
その後、話が広がり、子供の貴重な稼ぎ場となっており、生活困窮者も少しでもと言うことで集まるようになった。それが今の光景である。
ちなみに、洞窟というがこれは立派なダンジョンである。全2階層しかない上、モンスターは一切いないが、ごく少量の金と銀が採れるように調整されている。元々はかつていたダンジョンマスターのダンジョンだったのだが、すでにダンジョンとしての機能は失われていたのを復活、現在の状態に調整した。
中に入ると罠などもなく本当にただの洞窟となっており、すぐに2階層への階段が見つかる。金と銀が採れるのは2階層の奥の広間だ。
「‥人が多いね」
「そんなに採れるわけでもないのに、こんなに人がいるとは」
「入り口見てたらわかっていたことだろ?」
「洞窟の奥なのに上から光が当たって、明るいのですね」
「ここは大分掘られたんだろうな。かなり広いし、上も高い」
体育館2つ分くらいの広さの広間の天井に光る石がはめ込まれている。この石が広間を照らしているので洞窟の奥とは思えないほど明るい。実はこの石、ダンジョンコアだったりする。普通届かないし、明かり用の石に偽装しているのでそうと気が付かなければ取られることはない。
僕らはまず、探知系の魔法でお目当ての場所を探していく。見つけたらそこを掘っていくという作業だが、探知系の魔法で魔力制御と気配察知能力の訓練に、掘るという作業は体を鍛える良い訓練にもなる。
そうして探し出した金や銀はそこそこの純度であった。他の人が掘らないような深さまで掘ったからではあるが。普通の鉱山でこんな掘り方をすれば確実に崩落に近いことは起きるだろうという掘り方であるが、ダンジョンなので崩れることはない。しかも翌日にはこっそり元に戻っている。…気が付く人は気が付くのだろうけど、今のところダンジョンと気が付いた人はいないようだ。
なぜこのようなダンジョンを作ったのか?
保険の意味とワールハイトそのものではなく、そこに住む民へのお礼代わりのプレゼントとして作った。
保険とは仮に今のダンジョンのコアがすべて壊されたとしても、ここにコアがある限りマスターは死なないし、ダンジョンはなくならない。この広範囲にダンジョンコアをばらまかれたら、どうやったらすべてのコアを壊せるのか?
ワールハイトは僕がエルドたちと出会う前まで良いおこづかい稼ぎの場であった。これ以上埋蔵量を増やすと領主が独占する。そのため最小限度の量しか出ないように調整した。狙い通りだった。
今回は僕らの良い稼ぎ場となってくれた。帰ってから換金したら金貨10枚ほどになった。これでまたしばらくは大丈夫だ。
本当はイベントを考えていたのですが、相手の力量を考えると、今のエルドたちではどうにもできない相手なので、今回は見送りました。もう少し成長したら出すかもしれません。




