113.入学試験 後編
やっと入学試験が終わりました。
ホムンクルスとはいえ、僕の血液からできた人形だ。その魔力資質は本人と全く同じ。僕の測定結果は真っ白い光が強く濃く辺りを照らすという結果。この結果を見て周りは
「ワハハッ」
「こいつだけ無能とかウケる」
「かわいそうに。他があれだけすごいのに」
「せっかくの魔力量なのにもったいない」
など、同情と嘲笑。
この反応をしなかったのは僕の仲間たちと一部の試験官たちだけだった。
エルドたちは以前エルドを通して僕の魔力資質のことは伝えているので驚きはない。問題は試験官の方。驚いたような、絶句といった表情を見せている試験官が数名いる。この反応は知っているな。どういう意味かを。
少しだけ解説する。測定結果からMP、INTが高いことはわかると思う。ではなぜ多くが同情と嘲笑という反応になったのか?原因は魔力資質のところだ。
得意属性が色で出るこの測定球で、例えば、得意属性が火なら赤、風なら緑、光なら黄色もしくは金色となる。
では白は?というと無属性となる。
この世界で無属性は使えない属性とされている。何もできないと。実際は違うのだが、それは別の話としておく。
では今回の測定結果を見て、何も反応しなかったエルドたちは理解できるとして、なぜ、試験官たちは驚いたのか?
実は例外として無属性以外で白い光を放つ場合がある。
“全属性適性”
地水火風光闇そして無属性、すべてに適性がある人を魔力眼で見ると魔力は白く見える。
おそらく、この適性を持っているのは神かダンジョンマスターだけ。勇者すら持っていない。精々が5属性らしい。
何が言いたいかというと、これを知っているということは見たことがある。もしくは聞いたことがあるということになる。この測定球はニゴ帝国製。つまりニゴ帝国には人間に協力する、もしくはさせられているダンジョンマスターがいるということだ。ワールハイト、その周辺にダンジョンマスターはいないことが確認できている。
これは早めに手を打った方が良いかもしれない。僕の敵に回る可能性が高いダンジョンマスターだから。今回のことでほぼ居場所はつかめた。あとは少し領域を広げれば接触できるだろう。
一部の試験官たちは気が付いたのだろう。魔法は使わないと成長しないとされている。光の強さから、全く使われていない魔力ではない。鍛えられた魔力だと。では、白い光は無属性ではなく、全属性の可能性が高いと。後はどこまで情報として知っているか?が問題となる。全属性に適性を持つ人がいないということまで知っているのか?
もしそこまで知っていれば、何らかの敵対的な接触がありえる。こちらも注意が必要か?だが、正直こちらはなんとでもなる。敵に回るのであれば容赦はしないさ。
などと思っていたら、試験は終了。あとは集団での面談だけとなった。僕ら5人と数名の試験官での面談。その面談も何かあるかと思っていたが、試験官たちが鋭い方ではないのか、僕には当たり障りのない質問ばかりでルルやエルドにばかりいっていた。最後の方で1人の試験官が僕に色々聞いてきたが、適当に当たり障りのない返事をしておいた。
試験終了。あとは1か月後の結果待ち。合格発表とクラス分けが行われるので、それまでは鍛錬しつつ、辺りの様子でも伺おうかと思っている。おそらく試験は皆通っているだろうから、そちらは大丈夫だろう。あーいや、ライドが危ないかも。あいつ色々やらかしてたし。変な心配させるなよ。も~。
全属性適性が人間にいないというのはリュート情報です。彼はそれだけの長い間、数多くの人間を見ています。ですが、それだけで人間の中にいないと断定できるのはダンジョンコアを通して魔神様から聞いているからです。




