108.カツアゲ?
とっとと学園に行けよ。という声が聞こえてきそうですが、1話挟みました。
夕食までブフラルの街を見て回ることにした僕らだが、翌日出発の予定であり、すべて見て回ることは不可能なので、露店や屋台に絞って見る事にした。治安の関係上、僕らの単独行動は厳禁だ。皆で美味しそうな匂いにひかれながら見て回る。
このブフラルの街は都市連合所属だが、地理的な観点から南西にあるワールハイト、西にあるニゴ帝国を結ぶ中継都市としての役割も持つ。そのため人の流れも多く、中にはあまり性質の良くない者も入ってくるのはある程度仕方ないことなのかもしれない。そんな街で僕ら子供がお金をもって単独行動すればどうなるか?少額とはいえ奪おうとする者が出てくるのを予想するのは難しくはなかったため、集団行動としたのだが‥
「おいガキども。そんなに金持ってんなら、痛い目見る前に少しお兄さんにも分けてもらおうか?」
‥絡まれた。
大通りの露店で色々買っていたのを見ていたのだろう。1本大通りから外れたとたんに出て来たのが20歳くらいと思われる、あまり身なりのよくない男だった。こんな少額のために子供を脅してくるくらいだ。おそらくは稼げていないのだろう。戦闘能力の一点だけ見ても明らかに大したことはないのがわかるくらいなのだが、少数の子供ならなんとでもなると思っているのだろう。
「なんだコイツ。俺がやっていいか?エルド」
「う~ん。どうしようか?イオ」
なんか、ライドがやる気満々だ。これはライドに限った話ではないのだが、孤児院の子供たちはその環境のためか戦闘行為で自分の仲間以外の命を奪うという行為に対し、一切忌避感やためらいといったものがない。一応道徳や倫理観の教育もしているのだが、ためらいや迷いが自分の首を絞めることを身をもって理解しているためか、あまり教育の効果はなかった。今回の場合、僕がOKといえばライドはあっさりと相手を殺すだろう。それは今ここではまずい。なので‥
「いいけど、殺すなよ。明日出発なんだから、面倒になる」
「オッケー」
軽い感じで返事をしたライドは男に対してボディーブロー一発。そのまま数発攻撃し、男の頭を持つと男は
「ガハッ!テメエこの俺様にこんな真似してタダで済むと思っているのか?俺のバックについている傭兵団がだまっていないぞ」
とか、ぬかしてきた。それを聞いたライドはチラッと目で「どうする?」と聞いてきたので。僕は
「それならそれで好都合。ついでにその傭兵団潰して、そこを僕ら傭兵団の支部にすればいい」
と言ったらライドは嬉しそうに
「だとよ」
と言って、顔をぶん殴って、男の意識を刈り取る。
「じゃ、次はその傭兵団か?」
「きっと来ないよ」
「?? そうなのか?」
「おそらくはデマカセだろうし、仮に本当でも子供に完全にやられましたって報告はしない。したら、自分が舐められるだけだし、信じてもらえないだろうから」
子供にカツアゲしようとして返り討ちに会いました。代わりに復讐をしてくださいって言われたら、「お前はアホか?」と言われるのは間違いない。そんな報告、普通はしないだろう。
翌日、特に何もなく僕らは南西ワールハイトに向けて出発した。
孤児たちの中でもライドは強い方です。普通に傭兵団に入っても問題ないくらいまで鍛えられています。大きな視点からの判断力はまだまだですが。




