107.道中
回想から戻ってきました。移動再開です。
あれから1年少々経ち、それまで鍛えていたからね。怖がられても仕方がないかな?と少し思っていた。だが、本気で傭兵団を立ち上げて、生き残る。そして国を作るとなるとそれくらいのことはしないと、ダメだと思うからこその鍛錬だ。僕は彼らをこのまま見殺しにはできないから。
ティト村では特に何もイベントはなく、そのまま魔の森に沿って北西方向へ進む僕らの前にソイツ達が現れた。人間の子供ほどの大きさの緑色の肌に額の角を持つゴブリンが3体。僕たちが乗っている車を引いているウルフでもなんとかなるが、ここは僕たちでなんとかさせてもらうことにした。ちょうどいい実践経験になるだろう。
「じゃ、行ってくる」
「危なくなったら、ウルフに任せるからな」
「リョーカイ!」
一緒に来ている行商人のお兄さんは心配しているが、皆はやる気満々。村の周囲の魔物狩りも経験しているから、今更、躊躇はない。危なくなったら僕もフォローに入るし。
装備も村の鍛冶屋のベルグさんに作ってもらったもので、初心者向けとしては十分な性能がある。エルドとライドはショートソードより少し長い鉄の剣、ノフスは丈夫な木製の弓、ルルはショートスタッフと呼ばれる短い木製の杖を装備している。ライドは大剣を持ちたかったようだが、まだ成長途中の身体に合わず、もう少し身体ができるまでは我慢ということにしている。
それから、少ししたら、無事ゴブリンたちは退治できた。もちろん、このゴブリンたちは野良でウチのゴブリンではない。どちらでも良いが。
「強いな、お前ら」
「私、出番なかった」
戦闘を見ていた行商人のお兄さんとルルだ。ゴブリンはモンスターの中では最下層に位置するくらい弱いモンスターであるが、倒そうと思ったら、大の大人が3~4人がかりでやっと1体倒せるといったくらいの強さがある。しかも大抵は複数で出てくるので普通の戦いを専門にする傭兵でも油断はできない相手なのだ。それを7歳の子ども4人、実質3人で3体倒してしまったわけである。
「解体しようぜ。肉食いたい」
「オッケー」
食材の肉は非常に貴重かつ高価だ。畜産がほぼ不可能のため、魔物の討伐が大変など様々な理由から肉を食べることができるのは魔物狩りをしている傭兵かお金持ちだけとなる。
ゴブリンの場合は肉質、味共に最低だが、食べることはできる。体の臭みとかの問題もあり、食べることができるのは手足のみではあるが。それでもきちんと解体して売ればそこそこの金額になる。今回は数も少ないし、なによりこちらは食べ盛りなのだ。すべて食事へと消えることになった。
ゴブリンから得られるものとしては肉の他に魔石がある。魔石は魔道具の動力源として使用されるが、ゴブリンの場合は非常に小さく、用途も限られるため安価で取引される。こちらは持っておいて、どこかの街で売ることにした。子供のおこずかいとしてはちょうどいいだろうという金額である。
僕らはその後、たまに襲ってくるゴブリンやウルフといった魔物を退治し解体しつつ、途中で小さな村で商会の行商人であるお兄さんのお手伝いをしたり、野営を学んだりしつつ最初の目的地であるブフラルの街へと到着した。ここまで出発から1週間ほどかかっている。カルナチョスへと迂回するルートでも同じくらいの時間がかかるから、概ね予定通りの進み具合といったところだ。
入街税を払って、ブフラルの街へと入り、ここで宿を取り翌日出発の予定となっている。僕らは宿に荷物を置いて、夕食まで街を見て回ることにした。荷物を置くと言っても実は皆『収納』が使えるので、ほぼ手ぶらなのだが。僕以外は魔法LVが低いため大きなものは入らないが、着替えや魔石くらいのものなら入るため非常に便利なのだ。盗まれる心配もほぼないし。
皆で魔石を扱う商人のお店へ行き、魔石を売る。そのお金を分けて、街を見て回るうちに欲しい物があれば、そのお金で買うことにした。僕は戦闘に参加していないのでお金は辞退した。ここで特にほしい物もないし。
実は皆すでに並みの傭兵くらいの力は持っています。入学試験の関係とその後のことを考え、イオが鍛えた結果です。
『収納』は無属性魔法のLV1から習得可能ですが、LVの低いうちはほとんど物が入らないこと、理論が解明されていないことから使える人はあまり多くはありません。イオの場合はすでに理論は解明済のため、教えて練習させれば使えるようにできます。




