104.出発
少年時代という名の学園編です。定番ですね。
少し時間が経ち、僕が、正確にはホムンクルスが7歳になった年の10月の初め、僕らは孤児院を出発してワールハイトへ向かう。
「では行ってきます」
「いってらっしゃい」
「頑張ってね~」
「絶対合格だよ~」
僕らは孤児院の皆に見送られて、エルマンドさんの商会についていく形でワールヘイトへ行く。
目的はワールハイトにある学校への入学のためだ。今回学校への入学試験を受けることになったのは、僕の同部屋のエルド、ルル、ライド、ノフスと僕の5名だ。これが孤児院初の学校入学者になる予定の第1代目だ。来年以降も孤児院の選抜試験を通った者が入学試験を受けることになる。ミーアは1学年下のため来年受験予定だ。
この世界の場合、1年は12か月。1月は30日。学校は1月5日に入学式があり、始業式は翌日というのが共通で、ワールハイトの場合、入学試験は11月1日。合格発表は12月1日となっている。
この村からワールハイトまで2~3週間ほどあれば着くので、少し余裕をもって移動する予定となっている。
今後僕らはワールハイトで入学試験を受け、合格すれば12月から学校の寮で生活をする予定だ。落ちた場合はそのまま孤児院へ強制送還されるのでプレッシャーだ。ワールハイト到着後、結果発表までの間は宿をとり、その間は薬草や鉱物、鉱石などの採取をしてそれらを売ることでお金を稼ぐつもりでいる。ただ、採取と言ってもそれは街の外で行うため、魔物に襲われることは多々ある。そのため命がけになるが、比較的実入りの良い仕事の1つである。まあ、僕らの場合は僕が中心となって鍛えたから、ゴブリンなどであれば問題なく戦えるくらいにはなっている。道中も魔物を狩りながら進んでいくつもりだし。
そのようなことを考えていると、北の村を出発していた。西にある魔の森を北に迂回してワールハイトへ行くのだが、まずは1番近い村であるティト村へ。この村は都市連合最南端の村で、この村からさらに南に行くと逃亡者の村がある。ティト村は2~30世帯ほどが住む小さな村で、農業が盛んな村だ。自治都市と言っても特に自衛する戦力が多くいるわけでもなく、逃げた犯罪者などが集まる村ではあるが、そういった者たちはすでに疲れていて、見た目でもすぐわかるため、特に警戒が必要というわけでもない。たまに逃亡者を捕まえに来た人たちの大捕り物が見られるくらいで、実に平和な村だ。
「そういうのがたまにでもある村は平和な村とは言わないと思うぞ」
「‥‥頭の中を読まないでくれないか?エルド」
「いや、今回は考えていることが漏れてきただけだ」
エルドはこうやってたまに僕の思考を能力で読んでくるようになった。孤児院の皆を鍛える関係で色々やったので、皆おびえてしまったのか、こうやって軽口を叩きながら僕をいじってくるのはエルドくらいなので貴重ではある。
今日はティト村で1泊し、明日ワールハイトへ出発する。
西にある魔の森は瓢箪のような形をしており、視界が狭い上に、魔物であふれていると言われており、通り抜けることはよほど力のある者でも難しいとされている。そのため迂回するしかないのだが、南からは迂回できないため北から迂回するしかない。北にある、瓢箪の口にあたるところにある街、ブフラルをまずは目指す。
ティト村からブフラルまでのルートは主に2つある。まずはこのまま北を行き、貿易都市にして都市連合最大の都市、カルナチョスに行き、西へ行く街道ルート。このルートは街道が比較的道幅が広く、人通りもあるため安全とされているルートであるが、地図上は遠回りとなる。
もう1つのルートは北西に進み、魔の森に沿う形で小さな村らを通って行くルートで地図上は一番移動距離が短いが、道は狭いところも多く、魔の森に近いが故に魔物の出現が多いルートだ。
翌日狼車に乗りながら、ティト村を出発、分岐点を北西に行く。つまり魔の森に沿って移動するルートを選んだ。理由は出てくる魔物と戦い経験を積み、魔物の素材を売り資金にし、なにより身を隠しやすいことだ。つまり、周りに目がないので、思いっきり鍛錬、能力を見られる心配もないわけだ。鍛えたい放題なので、ブフラルまで皆をしごいていこうかな。
「ヒソヒソ‥なんかイオが鍛錬とか」
「しごくとも聞こえた。ヒソヒソ」
「勘弁してほしいよ~」
「‥生き地獄」
‥‥ガクプル、ガクプル‥
あれ?声に出てた?そしてその声を聞いて皆が怖がっている。…なぜだ!?
イオは鍛錬させる立場なのですが、皆のこの恐れられよう。いったい何をやったのだろうか?




