第十話 死闘の果てにレア剣を見た
走る。走る。礫夜が走る。
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[悪魔の強いる幸福の垂れ流し]
レアリティ:D
イヴィル
あなたは今日を含めた一週間分の幸運を、今から10分で使い切る。
――愚か者は悲鳴を上げた。[後悔]という言葉の意味をようやく知って――
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このカードが礫夜を走らせていた。
背中のリュックの存在すら忘れさせ、走らせていた。
エファすら置き去りにし、林道からも外れて、森へと走り込ませていた。
バクバクと早鐘を打つ心臓も血がのぼった頭も、礫夜の時間間隔を狂わしていた。
果たして残り時間は何分だ?
あと何分で、自分は運に見放された、やる事なす事うまく行かない男になる?
運がいいなら獲物よ出でよ!
運がいいならさっさとなにかしら成果を齎し、オレを町へと帰らせてくれ!
クレバー礫夜の脳裏をよぎるのは最悪のパターン。
森に入ったが獲物は見付からず、
あえなくラッキータイムは終了。
森に残されるはとことんついてない少年が一人。
異世界の森は不幸な少年に容赦なし。
哀れ礫夜は【身の毛もよだつ巨大昆虫】に【血も凍るような殺され方】をされる破目に。
そんなのゴメンだ。礫夜は叫ぶ。
「なんか出せー! オレが運いいならなんか出して、オレにチャンスをものにさせろー!」
〈グルルッ〉
礫夜は驚き息を呑み、森の腐葉土を撒き散らしながら急停止――
「――いたああああ?!」
びっくりした。礫夜は獲物を発見した。
狼だ!
「アゥノン! ヌヴザレテパ!」
「おわ、バカ!」
気付かなかった。後ろからエファがついてきていたのだ。しかも急停止した礫夜へと止まりきれずに突っ込んできた。
礫夜は抱きとめるようにエファを抱え込み、後退しながらぐるぐる二回回転することで、ようやく彼女の勢いをいなした。
これは果たしてラッキースケベか? とにかく抱きしめたエファは柔らかいしいい匂いだが、
今はそんな事言ってる場合じゃないぞ!
礫夜はキスする時くらいにメチャ近なエファの顔に言った。
「狼だ、エファ!」
「ウィッ――ウィ!」
二人は離れた。二人同時に百八十度回転しあって背中を付け合った。
見れば狼に囲まれている。
大型犬より体格のがっしりした灰色の狼たちだ。
ちくわなら足がガクガクし始めてしまいそうなほど迫力がある。
狼どもが礫夜とエファへと〈グルゥルルル〉とうなってる。
「オイオイおい、本当に運いいんだろうなオレ!? いきなり狼に囲まれてんぞ!?」
狼は三頭いる。グルグルうなって牙をむいており、戦闘意欲は礫夜たちよりよっぽど高そうだ。
さあ戦いの時だ。礫夜は急いで腰の鞘を左手で掴み、右手で掴んだ剣の柄を引く。
剣がスラリと引き抜けた。
本当に自分はこれから戦うのだと、背筋がゾクゾクとした。
その時だ。背中のリュックから〈シュシュシュン〉という音がした。
カードだ。五枚のカードが礫夜の目前へと回り込んできた。
バトルカードたちだ。
戦闘が始まれば使えるようになるという礫夜の推測は当たっていたのだ。
「スキル一発分の借用書」消費マナ8 レアリティF
[火のスモールマナ]消費マナ0 レアリティG
[無効化]消費マナ4 レアリティF
[火球]消費マナ3 レアリティG
「分解」消費マナ9 レアリティE
いっぺんに見せられても、説明文まで読んでいる暇などなかった。
しかし礫夜はクレバーにして入念な男。
カードの効果はそれなりに頭に入っている――たしか無効化は運動を妨害する効果を何分か無効化するカード。
分解は低レアリティのカードを三枚山札から引いてくるカードだ。
つまりどっちも強そうな名前してるくせに、今使っても意味なんて殆ど無い!
「レキヤ! フェルアタンスィオン!」
背中でエファが多分『気をつけて!』と言った。
「レベル1の、お前のほうが危ないんだって! ――くそ、今更遅いよなっ」
三頭の狼に取り囲まれ、初めての実戦で、礫夜はどうしたらいいのかわからない。
内心では臆病なちくわが顔を覗かせている。
自分に本当にこの狼たちと戦うことなんてできるのか?
あまつさえ殺すことなんて、できるのか?
ちくわはゴキブリさえ殺虫剤で殺すならともかく、スリッパで叩くのは抵抗を感じていた少年だ。
ゴキブリを潰す〈グシャリ〉という音と感触が、自分がこう潰される時の事を想像してしまい、不憫に思われてくるのだ。
スリッパで潰すと〈ブビュ〉っとスリッパの底から飛び出すゴキブリの体液も、自分がひどい事をした――命を乱暴に押し潰したのだと責め苛むようで、安っぽい後悔の念を想起させるのである――
礫夜は思った『いったいオレはこんな時に何を考えているんだ!?』
オレは礫夜だ! もうちくわじゃない!!
「うおおおおラアアアああ!!」
真紅礫夜は吼えた。狼たちへ吼えた。
威嚇の為に咆哮をして、その掛け声の勢いに乗って、目の前の一頭の狼へと剣を振りかぶりながら突進する。
狼の動きは俊敏だった。
礫夜が吼え声を上げながら迫ると、身を翻して逃げ出したのだ。
そして後ろから悲鳴。
「レキヤ!」
礫夜が振り返れば、自分がエファから離れた隙を突くように、残り二頭の狼が彼女目掛けて走っていた。
礫夜の脳裏で弾けたのは、二頭の狼に飛び掛られたエファの華奢な体が押し倒される光景。
礫夜の口が勝手に動いていた。
「火球発動!」
その声に目の前の[火球]のバトルカードが呼応した。
〈キン――ブヴォン!〉
礫夜の目前で[火球]のバトルカードが、燃え上がるように真っ赤な火球へ変貌し――消えた。
礫夜が見たのは宙へ刻まれた赤い残像。火球は瞬く間もない早さで、礫夜の望んだ場所へと突き立ち、
そして爆発が巻き起こった。
目の前が真っ赤になっていた。火の粉が撒き散り、エファが悲鳴を上げている。
火球が突き立ったのは狼二頭とエファの中間地点。
二頭の狼が火球の爆発にひるみ、片方の狼などはきびすを返して逃げ出していた。
しかし、エファの前の二頭とは別に、彼女の後ろから別の狼が突進していた。
礫夜が切り掛るなり逃げ出した奴だ。
その狼は口を開くなり、エファの後ろから飛び掛った。
「エファ!!」
礫夜も走っていた。エファと飛び掛った狼の間へと、身を滑り込ませたのは間一髪の事だった。
礫夜は剣を振りかぶっていた。その目の前には飛び掛ってくる狼。
礫夜は迷う事、怖じける事もなく、狼目掛けて剣を振り払った。
剣が礫夜へと激しい手ごたえを伝え、ギャインという悲鳴が鳴った。
襲撃に失敗した狼が礫夜の脇をすり抜けながら地面へと激突した。
なにかが切り飛ばされ、血を引きながら明後日のほうへ飛んでいくのを礫夜は目の端で捉えていた。それを目で確認する暇などなかった。
礫夜は自分の右後ろで地面へと激突した狼へと急いで振り返った――空いた左手でエファをかばうようにしながらだ。
礫夜の目の前で狼がもがいていた。
見れば右の前足が、中途から忽然と姿を消して血を噴き出していた。狼は起き上がるのに苦労し、残り三本の足を暴れさせながら〈ヒューン〉と弱ったような声を鼻から漏らしている。
カワイソウ!
かつてのちくわならそう思っていたはずだ。
「オアアアアア!!」
礫夜が咆哮したのは雄叫び。
チャンスを逃すな! そう思うままに狼へ剣を突き込む雄叫び。
攻撃力88の剣は、狼の灰色の毛皮に激突すると不可解な激しい衝撃を受けたが、その衝撃さえ鋭く貫き、狼のわき腹へと突き刺さった。
ギャアーンという、身の毛のよだつような叫びを狼が上げた。
礫夜は思わず剣を引き抜いてしまった。恐怖を忘れていたはずなのに、怖かったのかもしれない。
腹を突かれた狼が体を痙攣させている――
「レキヤ! ダンジェ!」
エファの注意を喚起する声が礫夜を打った。
「――っ?!」
ガウという吼え声を聞いたと思った時には、遅かった。
礫夜は横合いからの乱暴な衝撃に見舞われ、鎧われていない二の腕には痛みが走った。更に二の腕を引っ張られて地面へと引き倒されてしまう。
グレイスが正確に33減ったのを感じた。
残りグレイスが161/206だと、脳みそか危機意識が警告した。
「レキヤ!!」
「ちくしょっ!」
礫夜は左の二の腕を狼にくわえ込まれていた。
狼はすぐさま二の腕を解放したが、ガルルと吼えながら今度は無防備に倒れ伏した礫夜の足へと食いつこうとしてくる。
「アタンスィオン!!」
エファが叫んだ。
彼女は手にしていたレッピス檜製の魔術杖を両手で振り上げ、狼の背を力いっぱいに叩いた。
響いたのは、ポキンという小気味よい音だった。
頼りない杖の折れた音だった。その片割れが宙へと舞い上がるのを、礫夜は寝たままの姿勢で見ていた――がっ。
エファの一撃は狼にダメージこそ与えなかったっぽいが、少なくとも狼を若干怯ませ、礫夜へと貴重な隙を生んでくれた。
そのチャンスをものにしてこそクレバー礫夜だ。
「この野郎!」
礫夜は倒れたままの状態で足を突き出し、狼の鼻面へと強烈な蹴りを見舞った。
今度はギャインと悲鳴が響いた。
チャンス! 礫夜は鼻面を蹴られた狼へ更に剣を振って牽制しつつ、その反動を利用して上半身を起き上がらせた。何とか再び立ち上がるのだ。
しかし礫夜が自分の事ばかりにかまけていた代償は大きかった。
ガウ! という声に礫夜が振り向けば、一頭の狼がエファへと跳躍し、襲い掛かっていた。
「――エファー!!」
エファは悲鳴を上げながら地面へと倒れ伏した。
礫夜は頭の血の気が引く音を聞きながらも、遮二無二立ち上がった。
レベル5・防御力111の礫夜でダメージが33だ。
レベル1・防御力68のエファがどれだけのダメージを食らったのかはわからないが、グレイスの最大量がたった77しかない彼女にとって、狼の一撃はそのまま致命傷になりかねないダメージ量かもしれなかった。
狼の興奮した声に混じって、エファの悲痛な叫びが迸る。
「アイ! ――レキヤァ!!」
彼女が助けを求めていた。
狼が彼女の太ももをくわえ込み、ぶんぶんと首を振って蹂躙しようとしていた。
「うおおおおお!!」
礫夜は吼えた。エファを襲う狼へとこれ以上ない鋭い踏み込みをし、繰り出すのは数打ちの剣による全力の斬撃だ。
血塗れた鋼鉄製の剣が狼のわき腹へ激突し、切り裂く。
ズバンとアニメみたいな音がして、血が宙へと撒き散った。
エファを襲っていた狼の体も、何かに弾き飛ばされたように吹っ飛んでいた。
まるでバットでかっ飛ばしたような光景だった。異様な吹っ飛び方だった。
斬撃を食らって宙へ舞い上がった狼は、受身も取らずに地面へと激突した。
そしてその狼がそれ以上動くことはなかった。
ワウッと鳴き、残り一頭だけになっていた狼が劣勢を悟ったのか逃げ出した。
礫夜の本能が心の中で叫んだ『逃がすな!』と。
「待てええ!!」
礫夜は逃げる狼へと追いすがった。
しかし狼は、すぐさま逃げるのを止めて礫夜へと向き直り、一転して飛び掛ってきた――
やられた。誘い込まれた。
礫夜はつんのめるような体勢で慌てて急停止しながら、振り上げた剣を飛び掛ってくる狼へかざし、身を守ろうとした。
ギャリンと音がし、剣へとすさまじい衝撃が走った。礫夜の顔へと血が飛び散って少し掛かった。
あまりの衝撃によろめく礫夜のその背後で、狼はきれいに着地した。
狼は口の切り口から血を流しながらも、すぐに身を翻し、礫夜へと更なる攻撃を仕掛ける。
しかし狼へ身を翻していたのは礫夜も同じだ。
再度飛び掛ってきた狼に対し、今度は礫夜は斬撃を繰り出した。
狼と礫夜の攻撃が交錯するその瞬間が、まるでスローモーションにでもなったように、礫夜の眼球が世界を克明に捉えていた。
斬撃は狼のあごの下を通り過ぎ、喉元から切っ先が入り込んで、腹へと一息に切り裂いた。
吹き出す血しぶきさえ避けられそうなほどスローモーに見えた。
礫夜は腹を切り裂かれながら頭上をすり抜けていく狼の下をくぐり、血を浴びぬように体を逃がしながら、左斜め前方へと駆け込んだ。
狼と礫夜がその立ち位置をそっくり入れ替えた時、
礫夜が振り返ると、その目の先では、
腹を割かれた狼が地面への着地に失敗し、ごろごろと転がって血のりを腐葉土へと擦り付けていた。
――ッハ、と、礫夜は反射的に止めていた息を吐き出し、ハアハアと高鳴る心臓の脈打つままに呼吸を繰り返した。
「レキヤ! エスパマル!?」
「エファ! ――無事か!?」
エファが礫夜へと歩み寄ってきた。噛まれた方の足をかばうような歩き方だ。修道着にも血がついてしまっている。
礫夜はエファのグレイス量が心配だ。自身のステータスを呼び出し、グレイスの部分を指差しながら尋ねる。
「グレイス量は大丈夫か!? スキルで回復したか!?」
「レキヤ――アゥ、ジュフィソラジィ」
エファはレキヤのステータスを見て勝手に安心している。
「オレの事はいいって――エファ、大丈夫なのか!? 大丈夫、なんだな?」
礫夜の問い掛けにエファは『わかっている』とこくこくと頷き、すぐにその場に腰を下ろした。
彼女は服もまくらず、服の上からスキル[回復]を使用した。
すると、かざした手が光り、服についていた血のりまで消えた。
瞬く間の事だった。多分服の下の太ももの傷も、消えてしまったのだろう。
便利なもんだなと、礫夜は感心すると同時に、気が抜けていくのを感じていた。
というより、気を抜きたい。
随分緊張していたようだ。休みたかった。変な力の入っていた手や足が、今にもぶるぶると震えだしそうだった。頭の芯も妙にボウッとしている。
しかし、エファが礫夜の後ろを指差して言う。
「レキヤ……ルガルデ……」
ルガルデとは見てという意味だ。
礫夜が振り返って彼女の指差すほうを見ると、
そこには、狼の死体が転がっていた。
が、様子がおかしい。
狼の死体が半透明になり、まるで使用したオラクルカードのように、光の粒子が天へと昇っていっているのである。
「…………なんだ?」
礫夜がいぶかしみ、近寄ろうと立ち上がると、更なる変化が起こる。
不意に半透明だった狼の死骸が、消失したのだ。
そしてガランガンという激しい音が立て続けに鳴り、三振りもの剣と、良くわからないなにかが姿を現した。
「ケスクエル…………エペ?」
エファが眉間にしわを寄せていた。意味がわからなかったのだろう。
礫夜には少しわかる。
きっとドロップアイテムが出現したのだ。
礫夜が運がよかったおかげ、だと思う。
周囲を確認してみれば、狼の死骸は一体しかなかった。
最初に剣を突き刺して殺した狼の死骸のあった場所には、死骸ではなく、なにか小さな紙包みが落ちている。
「はあ…………まあ、なにもないよりは、よかったよな……」
というより、礫夜はもう戦闘を無事終えられた、そのことだけで満足していた。
かなり危なかったと思うのだ。礫夜のグレイス量の事ではない。
エファの身が危なかった。
きっと一つ間違っていたら、死んでいたと思うのだ。
エファは立ち上がり、足の様子を見ながら紙包みのほうへと近寄っている。便利なものだ。
[回復]のスキルがなかったらと思うと、礫夜はゾッとした。
さて、戦利品の確認をしよう。
礫夜は三本の剣と、なにかのほうへと近寄った。
狼一頭やっつけただけで、剣三本+αの収穫というのは、すごい運のいいことなのだろうか?
まあそれも、アイテム次第か。
まず三本の剣。
これは全て、同じ種類のものだった。
もう一つのほうは革製の、鞘のようだったが、なんだか良くわからない形をしている。
礫夜は剣を一本を拾い上げてみた。
すると、不思議なことが起こった。
「――おおうっ、びっくりした」
礫夜が剣を一本拾い上げると、残り二本の剣がスーッと、宙へと浮かび上がったのである。
剣は柄を下に、切っ先を上にして、礫夜の左右後方へと位置取るように浮かんだ。見れば紙包みを拾い上げたエファが、こちらへと目を丸くしている。
「え……なんだよこれ? 気味悪いな」
礫夜は少し混乱したが、そうだと思いつき、ステータスを呼び出した。
すると、思ったとおりだ。
礫夜の装備している武器が、今手に持っている剣に変わっていた。
そこにはその剣に関する説明文も書かれている。
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[三倍剣トリプルソード]
レアリティ:C
ランク:D
攻撃力:180
重量:3
説明:魔法剣。拵えの同じ三振りの剣。
装備者は三振りの剣の内の一振りを装備するだけでよい。
残りの二振りの剣は装備者の周囲を浮遊する。
この浮遊する二振りの剣は、装備者を守る為に自動的に振るわれる。
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「――――んっ?」
礫夜は一瞬、頭が混乱していた。
レアリティCというのは、それほどすごくないと思っていた。Sとかのカードだって礫夜は持っているのだから。
が、この剣の効果は、絶対すごいものだと思った。
それに剣の攻撃力。
礫夜の装備しているランクFの[数打ちの剣]の攻撃力は、88だ。
この剣の攻撃力は、180だ。
礫夜はクレバーにして冷静沈着の男。
論理的に評価してみよう。
礫夜がレベル1から5に上がった際の、ステータスの攻撃力の上昇量は、26である。
単純計算で、レベル1当たり6.5の上昇量というわけだ。
この剣の攻撃力は180。数打ちの剣に比べて92も大きい。
この剣の変更による攻撃力の上昇量を、正確に評価する為に、レベルアップによる攻撃力上昇量に換算してみよう。
要はこの剣の装備による攻撃力の上昇量92を、レベル1当たりの上昇量6・5で割ってやればいいのだ。
すると、答えは約14・15ということになる。
つまりこの剣を装備した場合、礫夜の攻撃力は、レベル14程度アップした時の礫夜と、同等ということになる。
この剣を装備した礫夜レベル5の攻撃力は、
数打ちの剣を装備した礫夜レベル19と、同程度ということ。
今の礫夜の攻撃力は、レベル19くらいあるということっ。
そして更に、ほかの二振りの剣が、周囲の敵から礫夜を守ってくれるらしいっ。
ここまで冷静に分析して、ようやく礫夜は体を[ビクリッ]とさせた。
背中がゾゾゾ、と総毛だった。
ちょっと目がランランとしてくる。
「うわっ…………これ、レア剣だっ。――――絶対レア剣だぁ!!」
礫夜はレア剣[三倍剣トリプルソード]を手に入れた。
一週間分の運気を使い果たし、代わりにレア剣を手に入れた礫夜の未来は、果たしてこの先どうなってしまうのだろうか?
[トリプルソード]の元ネタはSFCのRPGロマンシング サ・ガ2です。
攻略本の記述によれば『刃が三枚もある特性の大剣』らしく、装備をすると[ダンシングソード]という特殊な技が使えるようになる、とか。
この剣。遺跡に出現し、一度しか倒す事の出来ない中ボスクラスの巨人が稀に落とすという、めっちゃレアなアイテムでした。
子供のころにゲームをプレイしていた筆者にとっては、攻略本でその存在を知るのみであり、手に入れてみたいものだと夢想するしかない、高嶺の花のようなレア剣でした。
まさか今更、このような形で手に入れる事になろうとは。手に入れたの主人公ですけど。
ということで、『名前がダサい』とか思わないで欲しい。