表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Armor Knight  作者: 夢暮 求
第一章 -Encounter-
5/645

プレイヤーネーム

【-1-】


 自身を存在定義する上で今後、どうあっても変わることのないものがあるとするならば、それはきっと出自と性別であると僕は思う。婿入り嫁入りなら苗字が変わるが、産まれた家系ばかりはどう引っ繰り返そうが変わらない。


 名前の無い主人公が性別不明の何者かを助けに行く話などあるわけがない。基本的に主人公には名前が与えられ、助けられる何者かは女性であることが常である。ヒロイックサーガとは往々にして、昔から変わらない。


 となれば、このネットにおいても重要視されるのはプレイヤーネームと性別となる。かといって、なにも本名をそのまま公開しろというわけではない。氏名となるべきプレイヤーネームはなんでも良い。ニックネームでも、アニメのキャラクター名でも、或いは厨二病満載な、どう読んだら良いか分からないものでも、記号だらけで、もはや発音することさえままならないものでも、ゲームの世界では基本的に受け入れられる。


 かの有名な王道RPGで『ああああ』と入力し、ふざけて始めたのは良い想い出である。


 が、全てのゲームでそれが通用するというわけではない。少なくとも、発声することが必要なVRゲームでは、記号だらけの名前を用いられると不都合が生じる。

 チャットシステムを取り入れた従来のネットゲームでは、名前なんて本当の意味で記号に過ぎない。『♪!??$』なんてプレイヤーネームでも、チャットでは『♪!??$さんはどうしますか?』とキーボードで打ち込んでしまえば通る。世の中には音声チャットを好む人も居るけれど、そういう人たちはまず読めない名前を付けたりはしないので、これは例外だ。


 仮想世界では、キャラ同士が顔を合わせて“実際に話し合う”のだ。となれば、さっき述べたような馬鹿げた名前は読むことができない上に、呼ぶこともできない。辛うじて指を差しつつ『あなたはどうしますか?』といった方法で話は振れるだろうが、妙な名前を付けた本人が悪いのであるが、それはマナー違反として受け取られてしまう。


 『Armor Knight』に限らず、日本人向けサーバーのVRMMO及びVRMOではキャラクターネームには振り仮名を打つことが必須となっている。これはカタカナやひらがな、そして漢字や英単語などを用いる人たちにも必ず入力が求められる。そして、その振り仮名はプレイヤーの頭上に表示されるプレイヤーネームに載せられる。

 けれど、どれだけ配慮されていても、記号だらけの人と知り合いになりたくない。荒らしか放置の類は大抵、そういった名前を用いる。一部に真っ当な人が居ようが、少数でもそういった人が居る以上は、そっちのイメージが強くなるため、仕方が無い。そういった荒らしや放置が故意であるか無いかはゲームに慣れてくれば自ずと分かってくる。協力プレイ、チームプレイをないがしろにするプレイヤーは誰にだって嫌われるものだ。


 なにより『Armor Knight』は協力ありきで成り立っている。それもロボットを操縦するというコアな一面を持つ。機体はArmorと、そしてその上位機体となるKnightの二種類。最初から始めた僕らはまだ、Armorしか使えない。


 経験値を積んでのレベルアップは無い。むしろ経験を積んでの自分自身の腕前の向上が求められる。即ち、プレイヤースキルやプレイヤーの質がダイレクトに戦闘、及びミッションの遂行速度に直結する。

 ただ、レベルの代わりに対人戦によって上がる『PvPランク』と、受注したミッションをクリアして行くことで上がる『CoMランク』が存在する。

 前者が上がることで受けられる恩恵はギルドの作成や格納庫にマイホームのカスタマイズ、機体のカラーリングの自由度が増すといったちょっとした特典であるが、後者のランクは上がれば上がるほど武装が解放され、機体の性能を上げることができる。


 対人戦はやりたくないが、武装の強化はしたいといったプレイヤーはもっぱら、この『CoMランク』を高めることに執心する。かといって、『PvPランク』が極端に低いからという理由だけでは、そのプレイヤーの強い弱いは推し量れない。対人戦ばかりでは機体性能を上げられないため、ランク昇格における高難度のミッションをクリアすために、その手の確立した攻略法を見つけ出したミッション専のプレイヤーを頼るといったこともある。


 フリーマッチングシステムは、負けたチームにもランクポイントは入るが、当然のことながら勝利チームに多く入るようになっている。プライベートマッチングシステムにおいてはそのポイントが入らない。あともう一つがチームマッチングシステムだが、こちらではフリーマッチングと同程度のランクポイントが入る。そのため、大抵の人がチームメンバーを募集してのチームマッチングを選ぶ。

 フリーマッチ――通称、野良は初心者からベテラン、効率重視まで様々な人が含まれるため、戦場がちょっとしたカオスに包まれる。それでも「初心者はまず野良へ行け」とBBSの初心者用スレッドでは書き込まれる。荒波に揉まれることで少なからず糧となる。


 アクションゲームでよく言われるプレイヤースキルというものが培われる。ルールも把握できるようになり、場合によっては戦闘開始時の初動についても最適化されて行く。そのあとでチームメンバーを募集してのチームマッチングに移れば、大抵の人は許してくれる。


 なにせ、野良では通信が出来ないので作戦の立てようもないのだ。だからこそ、どれほどのランクの人であっても『初心者歓迎』のチーム募集は行われる。むしろ初心者の育成に力を入れているギルドだってある。


 ちなみに、チームマッチング時における敵チームとの談合でのランク上げはログでバレる。運営からランクの巻き戻しを喰らうので厳禁だ。


 だから、協力プレイをないがしろにするプレイヤーは、嫌われる上にそもそもプレイするゲームを間違えているのだ。かといって、そういった迷惑プレイヤーが一体どのゲームに適しているかは、ゲーマーな僕にも判断しかねるところではあるのだが。


「今日も掲示板前は人で一杯、か」


 手元のコンソールからスレッドを覗いている人たちを見て僕は呟く。


 掲示板前は回線状況によっては非常に重く混雑していることが多い。そもそも、許容量が少なめにされている。BBSの閲覧、及びブラウザでの閲覧については書庫エリアの方が圧倒的に許容量が大きく、回線も軽い。が、書庫エリアに行くよりも掲示板はログインしてすぐの広場から行けるため、お手軽なのだ。


 広場は待ち合わせ場所としては一番分かりやすい場所だし、待っている人がログインして来るまでBBSを閲覧しようと考える人は幾らだって居るわけだ。ただし、広場がサーバーによって処理能力が異常に高く設定されているにも関わらず、掲示板前の回線が重くなってしまうのは、運営側としても不本意だろうから近々、サーバーの増設が行われることを切に願う。


 恐らくみんなが目を通しているのは、このサーバーのプレイヤー同士で行われる大会のスレッドだろう。公式大会は今までも何度か行われて来てはいるが、エントリーしても選考に落ちたり、そもそも出場規格を満たさなかった場合、エントリーすらままならなかったりといったことが当然のことながら起こる。しかし、プレイヤー間で催され、観戦モードを付けて行われる大会にはそういった条件が緩めに設定されているものがある。優勝しても賞金や賞品が貰えるわけではないが、誰でも参加できる可能性があるという点においては、人気の高い催しである。

 場合によっては低ランクプレイヤー限定の大会、又は初期武装限定大会といったものも、開催されるぐらいだ。


 今日の午後六時から開催される大会について、時間を潰すために読もうと思ったのだが、あの重さと接続の不安定さにめげるのは目に見えていることなので諦めることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ