固有名詞など
第一章において、作品内で少し分かりにくいと思われる点の補足みたいなものです。世界観についてはまた気が向いた時にまとめるかも知れません。
・神経接続端末『Nerve Splicing Terminal』
略して『NeST』。HMDとパソコンに繋げるタブレット式携帯端末。内部には接続の際に用いる、痛覚に触れないほどに細く、驚くほどの柔軟性を有する蚊針――モスキートニードルを用いたケーブルを収容している。
このケーブルをうなじ付近に突き刺すことで、脳から体に伝わる電気信号をHMDと共同で処理する。脳に至ることのない脊髄反射についてはこのケーブルが処理している。
肉体的な面での疲労は一切ないが精神的疲労が強いため、一日二時間以上のプレイは現実世界に支障をきたすと言われているが、実験段階では一日中接続を続けていても人体に影響は一切無いと言われている。ただし生理的欲求には抗えないため、一時的に接続をオフにしなければならない点だけは共通である。
タブレット式携帯端末であるため、持ち運び可能。セキュリティが強く、未だ突破されたことはない。個人情報を入力することでVRゲーム全体のアカウントを管理、紐付けしているため他人の『NeST』でログインすることは難しい。しかし、隣にその『NeST』所有者が居り、ログインIDやパスワードを代わりに入力することで、その所有者のプレイヤーキャラクターを操作することは一応、可能である。
・VRMO『Armor Knight』
ロボットアクションゲーム。プレイヤーはパイロットとなり、ArmorとKnightと呼ばれる二種類の機体に乗ってミッションや対人戦を行う。プレイヤーの拠点となる街は広く、大きく八エリアに分けられているため、エリア間の移動は徒歩に限らず、転送端末も用意されている。
サーバー毎の総人口は数千人規模に限られているが、これは拠点である街にプレイヤーが溢れ返ることで起きるラグやサーバーへの負担を減らしているためである。そのため、サーバー自体の数は多いため、プレイ人口はRPGやハンティングゲームなどに比べれば圧倒的に少ないものの万単位であると考えられる。対人戦においては別サーバーのプレイヤーと対人戦を行うこともできるが、海外サーバーと日本サーバーはラグの関係上、マッチングしないように設定されている。
・サーバー
プレイヤーの入るべき仮想世界全ての情報を管理する機械。『Armor Knight』ではアズール(青)、ロッホ(赤)、シュヴァルツ(黒)、ヴァイス(白)などのスペイン語、ドイツ語の色の呼び名で分けられている。涼たちが属しているのはアズールサーバーである。尚、特にアズールサーバーは対人戦ガチ勢の集まりと噂されており、『野良マッチでアズールサーバーのプレイヤーと当たった時は覚悟するように』とまでネットではテンプレ回答として用意されている。
・Armor
『Armor Knight』内でプレイヤーが操縦する機体のことを指す。アーマーと聞けば、重歩兵をイメージするが素体そのものは、シンプルでスマートな形となっており、女性素体と男性素体に分けられている。プレイヤーはこの素体に各々、好きな装甲や武装を身に付けさせることができる。
装甲は機械的で無骨なものもあれば、侍や甲冑――それこそ本当に重歩兵を想定させるようなものも存在する。ただし、ランクが低い内は装備重量が少なく見積もられており、また武装そのものも制限が掛けられていることが多い。
『CoMランク』が上がれば装甲と武装が解禁されて行き、また改造の段階も広がり、能力を底上げすることができる。強化できるものは武装や装甲に限らず、補助機器やスラスター、バーニアにまで及ぶ。
また脚部は二足に限らず、四足や多脚型もあり、パーツによっては生物をイメージしたものもある。
・Knight
『Armor Knight』内で『CoMランク』を一定まで上げたプレイヤーが特殊ミッションをクリアすることで入手することのできるArmorの上位互換となる機体。
装備重量が上がり、解禁される武装や諸々の性能などが、あらゆる点で上回っているため、全てのプレイヤーがまず、このKnightの入手のために躍起となる。
Armorの武装や装甲全てと互換性があるが、Armor側はKnightの武装、装甲との互換性は無い。改造段階が上がった場合、Armorでは最終強化段階のままで処理される。そのため、制限の多いArmorに敢えて乗り続けるプレイヤーは居ない。この仕様のため、『Knightを手に入れるまでがチュートリアル』とまで言われる。
・クリティカル距離
近接武装及び実弾系武装に採用されている、距離減衰などが一切無い、武装に与えられている数値、或いはそれ以上の数値を叩き出せる距離のこと。
近接武装のみ、この距離でモーションに移った場合、オート、セミオート、マニュアルに関わらずシステムアシストが掛かり、相手に一撃を浴びせる追尾性能が加わる。この一撃の対処法は盾での防御、近接武装での応戦、スラスターでのクリティカル距離からの脱出の三パターンほどとされている。こういった操縦によって距離がズレるため、ダメージは受けても最大数値の攻撃を受けることはない。また、オートやセミオートより、マニュアル操縦の機体の方がクリティカル距離からはやや離脱しやすい。
尚、ベテランプレイヤーでもそのクリティカル距離を見定めるのは難しく、またわざわざクリティカル距離を気にせずとも剣戟、斬撃、銃撃のどれも威力の減衰はあっても耐久力を削ることはできるため、それほど気にしているプレイヤーは少ない。これを重視するのは精々、玄人や奇人変人、やり込みプレイヤー程度である。
・ギルド
プレイヤーの所属する集団及び団体。設立はプレイヤーの自由。『Armor Knight』ではフレンドだけでなくギルドに所属することで、複数人での効率の良いプレイが可能となっている。
ギルドには、その集団及び団体を管轄し、代表としての権限を持つギルドマスターと、それを補佐するサブギルドマスターが存在する。サブギルドマスターの人数はギルドによって異なるが、最大で五人まで設定可能である。彼らに与えられる権限は、ギルドメンバーへの強制的な追放権限、ギルド設立に伴い得られるギルドフロアの装飾の変更などである。また、ギルドによってはそのメンバーになんらかのルールを課している場合もある。所属するメンバーは基本的にギルドへの勧誘権限を持つだけに留まる。
ギルドフロアへの入室には専用のパスカードが必要となるが、これもまたギルドマスターとサブギルドマスターからしか貰えない。そのため、ギルドには所属していてもパスカードは持っていないというプレイヤーも多い。
・『スリークラウン』
アズールサーバーでの有名ギルド。優秀な人材しか勧誘せず、能力の乏しいメンバーは勧誘されても頂点に達することが難しい。また暗黙のルールとして、対人戦を申し込まれた際には断ってはならないというものがある。なにより、敗北に厳しく勝利にうるさい。
ブラリ推奨プレイヤーと揶揄されるプレイヤーを庇護下に置いているなどと噂されることもある。
また、敗北したという理由だけでは追放することはほとんど無く、その者がなんらかの悪事を働いた、なんらかのズルをしたなどの理由があったならば追放を行う。ただし、対人戦を申し込まれた際に負けた場合は、追放対象としてマークされる。
設立当初のギルドマスターは『炎将』と呼ばれ、それを支えていたのはサブギルドマスターは『雷神』、『氷皇』と呼ばれていた。彼ら三人が頂点であるからこその『スリークラウン――三冠』である。現在は昔に起きたお家騒動に伴い、ギルドマスターとサブギルドマスターの総入れ替えが行われ『炎帝』がギルドマスターを務め、『雷狼』がサブギルドマスター。三人目の座は空白のままである。
・『オラクルマイスター』
巨大ギルド。選り好みせず、初心者経験者問わずメンバーへの勧誘を行うことで有名。また加入した初心者プレイヤーへキッチリとしたレクチャーを行うこともあって、人気度では『スリークラウン』を上回る。
ギルドマスターはミスター・ルールブック。サブギルドマスターはサールサーク卿。
違法性のある行為、または非公式Modの使用禁止など徹底しており、規律を破った者には有無を言わさず、追放処分を行う。特にサールサーク卿は規律にうるさいことで有名である。
・『Re;Burst』
『スリークラウン』、『オラクルマイスター』には劣るものの、中規模な有名ギルド。規律はほとんど無く、メンバー加入に関しても比較的緩い。そのため、ギルドそのものとしての評価は低く、極端に強いプレイヤーが所属しているというわけでもないため人気が無い。しかしながら、“ゲームを楽しむ”ことを最優先としているため、基本的に楽しければなんでも良い。噂されようとバカにされようと大らかに楽しんでさえいればそれで良いというプレイヤーが所属している。
よって、“ゲームを楽しむこと”を否定する行いをした者にだけ、追放処分を行う。
ギルドマスターはウルドレッテ。サブギルドマスターはネムネム。また、メンバーにグッド・ラックが入ると言われているが、定かではない。
・“愚者”
VRの世界にのめり込むことで、人格が歪んでしまった者たちを指す言葉。
本来であれば体験することのできなかったことが体験できる仮想世界に依存してしまうことで、そこに居るべき自分こそが本当の自分自身であると誤認し、現実世界でもそうで在ろうと思ってしまうことで人格が歪んでしまう。常識人であれば、しっかりとした分別が付くが、特に思春期や反抗期に入った中高生などの、アイデンティティを確立し切れていないときに、のめり込めばのめり込むほど、この人格の歪曲化が進むと考えられている。
基本的にコミュニケーションが取れないものの、仮想世界においてはそれが可能。またゲームにおいては独特の才能を見せる。
・『狂った眼――クレイジーアイズ』
魔眼持ち、眼がおかしい、頭が狂っているなど色々と言われていたが最終的に『狂眼』で落ち着いた、ある種の才能であり同時に能力。“愚者”になった者に極端に多い点から、脳の成長が影響していると考えられる。また、眼に現れるのは、最も外部からの情報を得られる感覚が視覚であるからとも言われている。そのため、残りの聴覚、嗅覚、味覚、触覚にこのような能力の発露が起こる可能性はある。
涼の場合、『空間把握の化け物』と呼ばれるほどに機体と感覚を共有し、距離感、重量、物体の数、厚みなどが手に取るように分かる。
それを可能としているのは人並み外れた“直感力”。直感的に認識し、把握し、掌握し、自由自在に動き回る。現実では周囲100メートル、『Armor Knight』内では機体の大きさからキロメートル単位での空間の把握を行っている。パージを防御に用いることのできる要因もここにある。
尚、涼だけに限らずこの“狂眼”を持つプレイヤーは存在しているため、両目という意味も備わった複数形が用いられる。
・異常性
“狂眼”やその他の五感に起こる能力の発露に対する名称。“狂眼”はここにカテゴライズされる。
『空間把握の化け物』 スズ
『次点認識力』 シャロン
・システム的措置
仮想現実内におけるベースシステムを超越した異常に対して、システム側そのものが異常と捉えることを拒み、あたかも正常であると思わせる簡易的措置を指す。ティアの“視覚”に対するモノクルのサポート、バイオの“攻撃後に遅れて鳴るアラート”は両者揃って、システム的措置を受けた状態にある。これは『Armor Knight』のみに限らず、全てのVRゲームに備わっている機能で、異常性は取り除けないシステムトラブルとして認識されている。




