-Epilogue 05-
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「つまんないなぁ」
《おい、なにボサッとしていやがる!》
動きを止めたルキの機体に、対戦中の機体がブーストを掛けて近寄り、攻撃モーションに移る。
「邪魔っ!」
ルキの機体の左腕が鋭く伸びて、鋭利な先端は敵機体の胴体に突き刺さる。
《ち、ぃいい!》
「あー、あーあーあーあーつまんないつまんないつまんないつまんないんだよねぇ!!」
苛々しながら、ルキは自らの体を動かす。機体がルキの動作に合わせて動き、鞭のように伸び続ける左腕は、突き刺さった先端部分を基点にして、残りのパーツが展開され、四本の鉤爪が敵機体を握り潰すかのように拘束する。
ルキは休むことなく体を動かし続け、苛立ちを発散するかのように拘束した左腕を――鞭のように伸びた拘束具を振り乱しながら、遮蔽物や地面に叩き付けるのをやめない。
「ボクがさぁ! 考えている最中にさぁ! 意味も無くさぁ!! 喧嘩を売って来るんじゃない!!」
高々と振り上げた、伸び切った左腕と拘束具は、しなりも加えた驚異的な速度で掴んだままの機体を地面に叩き付けた。四本の鉤爪は、元の鋭利な先端へと戻り、さながらロープを巻き上げるかのようにルキの機体の左腕が元の長さまで戻る。
『またこんな無意味な痛め付け方をしていたんですか?』
「無意味じゃないよ。発散材料にはなってくれたからね。まー向こうはどれほどの“痛み”で今、苦しんでいるかは知らないよ? 声も出ないほど、グッチャグチャなのかも知れないけれど。それでも死なないんだから、甘ったれた世界さ」
ルキはラヴィットの通信にそう返し、ふぅと息を吐く。
「運動不足だなぁ。しばらく体を動かしていなかったから」
『ゲームでリアルの運動不足はあまり関係が無いと思いますけど』
「いやいや、リアルで運動不足って認識の元でゲームをやっていたら、頭の中もそういう認識の元でこの体を動かそうとするからね。リアルで体を動かせない人が、ゲーム内ならピョンピョン跳ね回れるとか、そういう夢みたいな話は無いのさ。不治の病の人は、久しく体をどう動かせば良いのか、どれくらいの力でどれくらいの物を動かせるのかってのが分かっていないし、貧弱になった体を否定はしても頭では肯定しているから、どうあってもゲームでは楽しめない。それを医療に使おうなんてするなんて……ミスター・ルールブックも馬鹿だよねぇ。絶対に出来っこないのに」
『そういえば、サールサーク卿が『RoS』から脱退したいと。それが無理なら、今後は名前は貸しはしますけどギルドには寄らないと』
「そこなんだよねー、ほんっと……最悪だよ。困ったものだよ、サールサーク。大切で大事な憎しみ、恨みを晴らすわけじゃなく、放り出すなんて……ほんっとうに、頭に来るよ……リョウ」
ルキは歯軋りをし、それから溜め息をつく。
『リョウさんを苦しめるにしては随分と回りくどいことをしていると思いますが』
「良いんだよ。お楽しみは最後まで取っておかないと。回りくどく、困らせて苦しませて悩ませて、最後の最後はシンプルに喰い荒らす。でも、あー、あー、あーあーあーあー。反抗してボクに挑んで来たってことだよ。で・も、まだまだ苦しんでもらわないと。そして、ボクがこの“チカトリーチェ”で失意の底へと叩き落とす。昔みたいなリョウに、スズがなってくれるようにね」
『チカトリーチェ……意味は……傷痕』
【To Be Continued】




