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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第六章 -Together-
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ギルドとしての戦い方

 パラディンに捕まった以上は、鎖の破壊が最優先となるが、しかし拘束してどうするのだろうか。高速での移動は、右足のジョイントさえ外してしまえば問題無いが、またパラディンにアンカーを穿たれてしまってはたまらない。

 短絡的な操縦は出来ないが、しかしパラディンは尖鎗を拘束武装にしているため、これでは鎖を巻き上げてヴァルキュリアを引き寄せたところで近接での戦闘は難しいのではないだろうか。


 貫いている穂先と柄を連結させて、引き抜き、そしてそこから更に刺突という流れならばどうにか、というところであるが、それはヴァルキュリアが抵抗しないこと前提の操縦になる。あの水平二連ショットガンを見ているはずだ。近付けば近付くほど、散弾は機体全体に浴びる。穂先と柄の連結までの間に、ヴァルキュリアは同時に距離が詰まるわけだから両手の二挺計四発を撃ち切ることさえ可能だ。


「早まったのか……それとも、これも策の内なのか」

 ともかく、ヴァルキュリアの動きは制限されることになる。まるで犬を繋ぐリードのようだ。ひょっとするとサールサーク卿もそのような、相手を見下す気持ちを強めるためにわざとアンカーを撃ち込んだのかも知れない。それに、近接戦闘に限って言えばヴァルキュリアに軍配は上がるが、動きを制限した上での中距離での立ち回りならパラディンが強い。あの腰から展開されるエネルギーランチャーはさっきより当てやすくなっている。

「いたぶりたい……のか? そうじゃないな。なにかを狙っている。なんだ? 油断させるつもりか?」

 わざと接近を許させる可能性も捨て切れない。シャロンならば、近付くことの方が有利だと思うはずだ。けれど、そんなすぐに近付くという判断を取るのは早計過ぎる。


 つまり、鎖を破壊することも重要ではあるが、この状況で迂闊にパラディンに近付いてはならない。それがヴァルキュリアが現状においてパラディンへの最大限の対処法だ。もっとも、これら全てをサールサーク卿が想定しているというのであれば、もう見せてもらう他ない。見てから対処する。隠しているものがあるのなら、もうそれしか手段は無い。


『ほぉ? よもや見つけられるとは思わなかったぞ』


 ミスターの通信が入り、僕は画面表示を切り替える。


「どうなりました?」

『バイオがミスターの弾丸を二発、エネルギー系列のスナイパーライフルの射撃を一発、中距離でのエネルギーランチャーでの一発を避け切って、カリキュレーターを見つけた』

「避けた?」

『その通りだが』

 バイオの操縦技術で、ミスターのカリキュレーターが撃つ弾丸やビームを掠るでもなく、避ける? それはやり過ぎだ。

『おい、爺さん! 当たるか当たらないか微妙なところを狙って来やがったな? 手ぇ、抜いてんじゃねぇぞ!』

 ほら、バイオには勘付かれている。

『手を抜いたつもりは無いんじゃがのぅ』

『だったら、俺に一発も当たらねぇのはどういうことだ? 一発はマジでギリギリ、俺が避けたが、残りは全部、擦れ擦れしか狙って来てねぇだろうが!』

 一発は付け焼き刃で叩き込んだことで避けた。そう自覚できるくらいに狙いが正確だったのだろう。それはバイオも分かっているようだが、残りはミスターが手を抜いたとしか思えない。

 既にランクの同期によってサールサーク卿とミスターはハンデを背負っている。そこに更に手を抜かれたとなれば、素直には喜べない上に、まずバイオは喜ぶような人じゃない。特にこの戦いに強い想いで挑んでいる。それを小馬鹿にされていると思えば、良い気はしないだろう。

『本気で来い、爺さん。本気じゃねぇと意味がねぇんだ』


 それにしたってバイオの機体はアンブッシュから機体構成が大きく変わった。脚部は多脚から二足歩行型へと変わって……ん? あれ、重脚、か?


「僕と特訓していた時は普通の二脚だったんですけど、入れ知恵しました?」

『バイオが望む機体の概念には、重脚が合っていた。それだけだ』

 ここから見える範囲だと重脚。昆虫型頭部、機体カラーは迷彩色で関節部位は銀色。腰にエネルギーライフル、肩にも武装はあるが、なにかまでは分からない。

 そして左腕部――左の二の腕に、その腕部よりも大きな武装収納が装着されている。小型、中型、大型と武装収納はあるけれど、あれは間違い無く大型のもの。任意で中から武装を取り出せるようになる。近接戦闘用の武装が腰や背部に見えないところから、あの箱に全て収納されているのだろう。武装収納自体から、大型の剣を展開させることも出来るのだが、なにせクセが強いから使う場合は、その機体は戦闘に入らずにチームに武装を配る運び屋としての、サポートに回るものだ。


 当然ながら、左腕部に重量が集中するため、機体バランスは左寄りに。そして武装収納と二の腕の異様な外見と合わせて、機影は歪な化け物を彷彿とさせる。重脚であるから、重量制限をオーバーしていても、スラスターやバーニアの機能の低下は大幅に軽減されるが、あれは扱い切れるんだろうか。


「カリキュレーターより欲張りですね」

『あれも割と欲張っている機体だがな』

 通常二足の重量ギリギリまでオールラウンダーに立ち回れるように武装を取り揃えているのがカリキュレーター。いぶし銀の利いたカラーリングに、スナイパーライフルを実弾用とエネルギー用の二挺、エネルギーランチャーを腰に、エネルギーライフルはその上に乗せるようにして搭載。直剣が背部に。二挺のスナイパーライフルは丁度、小さく折り畳まれて左右の肩に一挺ずつ引っ掛ける形で収まった。

『ここまで近付かれたのならば仕方が無い。そう、仕方が無いんじゃよ。しかしのう、手を抜いたつもりは無いんじゃ。のう、バイオ? ワシに意見できるほど、君は近接戦闘と中距離での立ち回りが得意かね?』

「スナイパーライフルでチマチマ狙い撃つより、中距離と近距離で仕留めるつもりなのか」

『あたしじゃ絶対にやらないけどねー。でも、ミスターにはそれが出来る』

 恐らく、バイオがミスターの見立て以上に狙撃へ対応し過ぎた。だから戦法を変えた。手を抜いたのではなく、近付いてもらえるように適度に狙いを外した。憤慨したバイオなら、そこに含みがあると考えず、飛び込んで来るだろうと踏んで……?


 二人揃って腹黒い。柔軟に戦法を変えられるからこそ、誘い込みが功を奏してしまう。


「『オラクルマイスター』は攻めて、引いて、チームで蹂躙する」

『深追いさせるように動いて、引き下がったところで畳み掛ける』

 僕の言葉に続くように、にゃおが声を零す。

『貢献度は捨て、全体での勝利を優先する』

 オブシディもまた、経験から言葉を零す。

「そして、こっちの誘いには絶対に乗って来ない。勝機があってもチームでの勝利のために、見逃す。あとで袋叩きにするために」

 味方が二機だけであっても、その概念は変わらないのだ。たとえ一対一であっても、サールサーク卿もミスターも安直な行動に走らない。安全を留意し、確実な方法を選び取る。

「サールサーク卿が“愚者”なら、ちょっとした挑発にも乗って来ると思っていたけど……そうか、あの人は、ゲームを始める前から……『オラクルマイスター』に入る前から、狂っていたんだった」

 狂っていながらも規律を、概念を忘れずに飲み下して来たサブギルマスを、そして、そもそもの規律と概念を作り上げたギルドマスターを僕ですら甘く見過ぎていたのかも知れない。

『ワシはいたぶるのが大好きなのでな。簡単に撃墜されんでくれ』

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