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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第六章 -Together-
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一つずつ

 クラスメイトが一致団結しているという様は、冷めている僕からしてみると言葉が出て来ないほど呆れてしまうというか、しかしそれでも僕という要因で、なんとなく一致団結したのであれば、今後一年間は雰囲気の良いクラスになるのではという希望も見えて来るわけで、そこまで呆れるほどのことでもない、のかも知れない。そもそも僕を助けてくれたわけだし、それなのに僕自身が冷めているというのがおかしな構図であるのだけど。

「認められているって悪い気はしないだろ? 俺も、言っちゃアレだけどまさか立花でクラス全員が動くとは思わなかったし、あと何気なく俺たちにも声を掛けて来てくれたし、リア充な奴らも、俺たちをそこまで見下しているってわけじゃないんだな」

 レアなケースだと思う。でも、「別のグループのことにまで目を向けられる俺たちカッケー」と思っている可能性は捨て切れない。それが織り込み済みであっても、今回ばかりは助けてもらったのだから文句は出て来ない。

「僕も、まさかクラス全員で上級生に目を付けられているところにやって来るとは思わなかったよ」

「立花はクラス公認の放っておいちゃ駄目な奴ってことなんだろうな。捨て猫とか捨て犬を心配する感じ」

「そうなんだろうね……」

 複雑な心境ではあるが、よく喩えられるので、それにあやかってしまった方が良いのではないかとすら思えて来た。要するに愛玩動物のような扱いを受けていようと、気に掛けてくれているのだからそこに異議を唱える必要は無いのでは、と。今回のように面倒見良く助けてくれることも今後もあるかも知れないわけだし。

「ま、これでまだ日にちは決まっていないけど、リア充グループとカラオケに行く話は断れなくなったな」

「そんな話、出ていたっけ?」

「出ていたけど、お前が嫌だろうなって理由で断り続けていたんだよ。まぁ俺たちも馬鹿にされるんじゃないかって若干、思っていたから断っていたんだが……もう断る理由に、立花を引っ張り出せないし」

「今回のお礼も兼ねて、カラオケに行くっていうことか……はぁ」

「溜め息つくなよ。一人で行くわけじゃないんだし、なんとかなるだろ。俺たちも今から不安なんだけどな」

 カラオケ、ボウリング、その他諸々は僕の行くべきところじゃないと思っていたんだけどなぁ。ゲームセンターだけなら付き合っても構わないけど、カラオケはなぁ……でも、断ったらクラスの折角の団結力が総崩れになりかねない。というか、僕の扱いが危うい。

 胃薬持参で、受け入れるしかないか。向こうだって別に見返りを求めて僕を助けたわけではないだろうけど、カラオケに僕が参加することでなにかしらの報酬だと思ってくれるのであれば、それでどうにか勘弁してもらうしかないだろう。このままだんまりを決め込んだり、断ったりしたらもっと無茶な見返りを求めて来るかも知れないし。


「立花君、今日は風紀委員長の仕事無いから」


 廊下で望月が呼んでいる。

「それじゃ、また来週の月曜日に」

「おう」

「元気にな」

「じゃーなー」

 この三人は特に僕と望月の間柄には触れない。もしかしたら三人で居る時に触れているのかも知れないけど、それを感じさせない。陰口ってのはこういう風に、相手にバレないようにしてくれるなら、構わないとさえ思う。でも大抵、バレるから嫌な雰囲気になるわけで、そこのところ上手くやれない人が多いんだろうな。僕も嘘はつけないし、性格が捻じ曲がっているから平気で馬鹿にするようなこと口走ることあるし……人付き合いって、不慣れや慣れを通り越して、疲れる。

 望月と階段を降りて、校舎の外へ出る。ふと前後左右を眺めてみたが、あの上級生に尾行されている様子は無さそうだ。

「聞いたよ、今日は立花君一人に大騒ぎだったんだって?」

「クラス公認の愛玩動物らしいよ」

「要するに放っておいたらなにをしでかすか分からないから見守らないとヤバい人、みたいな?」

「多分そんな感じ」

 愛玩動物とは程遠いが、でも扱いのされ方は的を射ているので同意しておく。

「日程決まっていないらしいけど、カラオケに連れて行かれることが決定しているみたい」

「ああ、今回のことで断れない雰囲気に?」

「そういうこと」

「カラオケ、楽しいのに」

「人の声って、聴き過ぎると頭が痛くなるんだよね」

「そうは言うけど、旅行の時に行ったゲームセンターは楽しそうだったけど」

「ゲームとカラオケは別。BGMやSEを肉声と比べないで欲しい」

「その言い方がまずヤバい」

「そう言うと思った」

 でも、絶対音感を持っている倉敷さんみたいな人ってカラオケに行ったらどうなるんだろ。情報過多で頭がオーバーヒートしたりしないのかな。僕の頭が痛くなる原因とは無関係だけど、気になるところではある。

「話じゃ立花君が大声出していたらしいけど、ほんと?」

「自分で自分を笑ってしまいたくなるよ。啓二さんへの苛立ちや、サールサーク卿への苛立ち、それを目の前のことと置き換えて、勝手に当たり散らしたんだから……僕らしくない。失敗したと思っているし、反省もしている。けど、年上やあの手の輩に言いたいことは言えたから、スッキリはしている」

 当たり散らしはしたけれど、普段から思っていたことを吐き出したのだからそりゃスッキリもするはずだ。当たり散らされた側はどう反応して良いか困っていたけれど。

「啓二さんも、サールサーク卿も、似ているようで似ていないけど根本は一緒なんだよ。僕たちになんか分かりっこないって決め付けて来て、でも話してくれなきゃ分からないことなのに、それすらも門前払い。さすがにそろそろ僕も限界だった」

「それで大声を出したと」

「僕のことを分からない奴が、分かっている風な口振りで、なにもかも決め付けて来たのが嫌だったから」

 あとは望月のことも考えていたら、腹が立ってしまった。

「結局、兄さんもそこなんだと思う」

「そこ?」

「お母さんと話すこと自体を拒否していた時期って、兄さんも『自分のことなんてなにも分からないクセに』って決め付けていて、『分かった風な口振りで話し掛けられるのが嫌』だったんじゃないかなって。それはただの思い込みで、決め付けで、お母さんは歩み寄ろうとしていたけれど兄さんが歩み寄ろうとしなかったから、互いに歩み寄れなくて……会話自体を拒絶したんじゃ、なんにも始まらないから……だから、立花君が大声を出したことは別に、変なことじゃないと私は思う。ちゃんと反論して、自分の言葉をぶつけられたんだから……まぁ、言い過ぎや、やり過ぎって言葉もあるから、程度は大事だけど」

 話さなければ分からない。打ち明けてくれなきゃ語れない。けれど、話さなくても“分かった気になっている”。“分かるわけがない”と決め付けている。それはレッテルを押し付けて来ているのと同じだ。

「次からは大声を出さないようにするよ。最近、ちょっと怒りっぽくなっているんだよ」

「前が怒らなさすぎだったんじゃない? どんなこと言われても、大抵は笑って誤魔化していたから気持ち悪かった」

「あー、だから潜在的ドMって言ったのか」

「そういうこと」

「怒り過ぎも良くないけど、怒らなさ過ぎなのも良くない、か。それはそれで極端だな。ちゃんと発散はしないと駄目だな……ゲームで怒りはある程度、発散出来るから、あとは運動かな」

「運動する気あるの?」

「無い。基礎体力作りでもう良いかなってなっているし」

「無いのに……『運動かな』って……言ったの? ……決め顔、で?」

 どうやら、望月のよく分からない笑いのツボに入ったらしく、しばらく彼女は悶えるように笑い続けていた。


 笑っていられるなら、まだ望月は心配しなくて良さそうだ。あとは、意地でも啓二さんから事情を訊き出す。それでまず一つ、片付けなければならない問題を突破しよう。

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