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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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噛み合いながらも

 ガチで近接戦闘をしろと言われるのならば、そうするしかない。スナイパーライフルのダメージソースは侮れないし、なによりこちらからでは手も足も出ない。一応ながらエネルギーランチャーを搭載してはいるものの、精度が違い過ぎるのと、こちらは溜めのモーションを必要とするのでやはり一歩出遅れる。


 そんな中で、僕が出遅れない方法は、近接戦闘にしか見当たらない。クランチを決め込んで、そこから連続の打撃を喰らわされないように、懐に入り込まれないようにステップダッシュとバックダッシュを使い分けて、強烈な一撃が来る時にはソードの平で受け止め、機体を半回転させつつ、もう一方の手に握るソードでカウンターを放つ。攻撃回数は両手のソードと両手のナックルダスターで、揃って二回ずつ。クーピーの左腕はクーシーが射抜いたが、それでも破壊させるまでには至っていない。けれど、左からの攻撃はさほど危険視しなくて良いだろう。威力は間違い無く減少しているはずだから。


 ソードで拳とやり合うのは、有利不利の概念を突き抜けている。現実じゃ圧倒的に格闘に持ち込む側が不利になるが、このゲームだとほぼ均衡していると言って良い。大体、ほとんどの武装が均衡しているのだから、一つの武装――拳だけが冷遇されるということは無いのだ。リーチの差はあれど、振りの速度では拳には敵わない。そして、密着されればソードを振ることが出来ないので、防御に回らざるを得ない。だけど、拳でこちらの攻撃を防御するという手段は、無い。


 だから回避に全てが注がれている。剣戟を入れようとすれば寸前で避けられるし、こちらも拳を受けないためにソードで受け止め、切り払う。切り払えば、当然の如く、クーピーは回避に移る。それ以外の防御――回避方法が無いからだ。

 この回避が実に厄介で、ソードで振り回せば大概の機体は掠ってくれるものだが、クーピーの重心移動が抜群に上手すぎて、掠らせることさえ難しい。CPUの強弱があるのなら、間違いなく強いCPUが搭載されているだろう。


 それとも、ヴァルコピーがヒット&アウェイと逃げながらの奇襲であったのと同じで、クーピーもリグリスの戦い方をある程度はレベルを落としつつもトレースしているのかも知れない。それにしては、非常に厄介な動きをされるのだが。


 特に読みが良い。CPUのクセに着実に避けて行く。バーニアの操作に抜け目の無さを感じる。リグリスがこれ以上ってことは、リョウの時に不意討ちでボコボコにした際は、本当の意味で奇襲となったのだろう。逆に言えば、リグリスには奇襲が通じるということでもあるのか……霊感やエネルギー云々と言っている人への奇襲なんて、それこそ攻略を共にしていると思っていた仲間からの襲撃くらいしか無いような気もするけど。


 正拳突きをソードの平で受け、そこから機体の足をズラしつつ、且つバーニアでバランスは保ちながら攻撃モーションの終わり際に、もう一方のソードでクーピーの左腕を切り落とす。綺麗にダメージを与えることが出来た。自分でも満足の行く結果だったため、ほんの僅か、心が高揚する。

 瞬間、オルナの腹部にクーピーの右の拳による二撃目が入った。ソードで受け切ったと油断して、ウェイトを殺すのが数秒遅れた。その数秒の遅れに、クーピーは入り込んで来た。


「あー、クッソ。ここで一撃を貰ったか」

 けれど、まだ耐久力も損傷ゲージも許容範囲内だ。むしろ、ここから左の拳による連撃が来るかも知れなかったことを思うと、それを先に阻止できたのだから良かったと考えるべきだ。


『間に合いました?』

 間に合ってはいないけれど、ともかくクーシーもやって来て、クーピーのスラスターを思い切り拳で叩き壊してくれたし、これで移動速度も低下した。

「タコ殴りにします」

『はい』

 右手のソードを収納し、左手に握るソードで剣戟を繰り出して行く。両手での剣戟を避けたのは、クーシーと合わせるためだ。フレンドリーファイアは無いが、ソードを二本振るえば当然ながらその攻撃範囲は広がるわけで、そこにクーシーが入ってしまった際に僕が対応しようとして一気に協力の流れが崩壊する。リグリスは自身の感覚だけで動いて来るため、意味無く飛び込んで来る可能性も否めない。実際、何度か行ったミッションではそういう場面が何度かあったわけだし。


 だから左手のソードだけにした。利き手の方が応用が利くのと、クーシーの立ち位置が僕のモニターから見て右寄りであったためだ。これで滅多なことで剣戟をクーシーに浴びせるなんてことは無いだろう。


 クーピーはなんとか離脱を試みようとしているが、クーシーがそれを阻むかのように左側のスラスターだけでなく右側のスラスターも叩き潰したので、ここでクーピーがバランスを取るためにバーニアを噴かしたところで、逃さずオルナに剣戟を続けさせる。

 クーシーの動きに合わせる。左へ行こうとするならば、それを阻まないように逆へ。右ならばやはりその逆へ。拳を打ち込む箇所、蹴る箇所、どれもこれもを逐一観察し、それを補助するように別の箇所の破壊を狙い、アシストする。ここまで来れば、クーピーはサンドバッグだ。密着されようが下がればクーシーが割り込んでくれるし、離れようとすればオルナの剣戟で引き止める。あとはディレイとウェイトの殺し方に手を抜かなきゃ良い。


「これで」

『おしまいですね』


 オルナの剣戟がクーピーの頭部を切断し、クーシーの回し蹴りが腹部へと放たれる。クーピーの体から電気が目に見えて分かるほど飛散し、弾け、動力が停止して行く音が耳に入り、僕たちは機体をクーピーから離す。ガシャンと地上に崩れ落ちたクーピーはそこから火柱を上げ、小さな爆発を繰り返し、煙が立ち昇る頃にはただの残骸と化した。


「あー、精神的にやってられませんね、こういう戦いは」

『後半、かなり余裕があるように見えましたけど』

「気のせいじゃないですか? それより、リグリスさんはまだまだ強くなる気だったりします?」

『まぁネムネムが文句を言わない程度まではやるつもりなんで』

 勝率を気にしているわけじゃないんだけど、苦手意識で戦いたくないと思っているから、穏便に事が済めば良いなぁ……でも、ネムネムって多分、ルーティとちょっと関わりがありそうだから、なぁんか嫌な予感がする。

「次は、バイオさんか」

 僕は『バイオ』を選び、『決定』をタップする。オルナが腹部に受けたダメージは20%ほど回復し、装甲の損傷ゲージも同程度ほど回復する。けれど、クーピーと単独で打ち込み続けていた際の、些細なダメージでちょっとずつ耐久力を削られてしまった。装甲の損傷も実を言うと、さほど良いとは言えない。


「バイオさん? 延々と逃げ続けて、長時間、遠距離で撃ちまくって攻略で良いですか?」

 オルナは再び空中のマップへと転送されて、バイオの乗るアンブッシュと横並びになる。

『は? 俺をナメてんのか?』

「ですよねー、楽をしようとしたんですけどねー」

『……テメェが楽をしたいんならそれで構わねぇが』

 おや、折れてくれそうだ。

『このあとに控えている二人がそれを許すかどうかってところが、引っ掛かる』

「スポーツにおいて無気力試合はご法度ですけど、これスポーツじゃないですし」

『その言い訳が、二人に通用するか? あと、待っている側としたらさっさと終わらせて欲しいに決まっているのに、時間を取っていたら、イラッと来ないか?』

「それはその通りですけど」


『特にティアはもう殺気立っている。自分の番はまだかと個人通信で全員に訊ねているくらいだからな』

 ティアってホント、僕の気持ちをちっとも分かってくれない人だよね。


「はぁ……どうせルーティも待たせることはよくあるのに、待つの苦手ですから、ここでヴァルフレアやクーシーのコピーと戦っていた時間よりも異常に時間を掛けたら、絶対に怒るんですよね……やってられませんよ、ホント」


『テメェの女運の悪さに嘆け……いや、女運は良い方なのか? 女と縁が無さそうなテメェがここまで女を(はべ)らせてんだからなぁ』

「逆ですよ逆。私――いや、僕が女の子に使われているんです。分かります? あっちが雇い主で僕は雇われた側で、そりゃもう扱き使われているんです」


『じゃぁもっと女に強気で接してみたらどうだ?』

「社会的に殺されるんで、無理です。ちょっと考えたら分かりません? 馬鹿なんですか?」

『馬鹿はテメェだ、テメェ。あーウゼェウゼェ。ウゼェから、さっさと終わらせるぞ』

「そうですね、マッハで終わらせる感じで行きましょう。一秒でも早く、あなたと協力しているという事実を短くしておきたいので」

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