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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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目標達成能力

 オルナでヴァルコピーを見つけて、惹き付けたところで剣戟を繰り出すも、やはり寸前で逃げられた。けれど、ここからがさっきとは違う。


 やろうとしていることはいつもと実はあまり違わない。大抵は逆だけど、たまに僕が追い立てる役割を担うこともあった。ソードでの連撃はディレイやウェイトを殺して、ようやく形になって来るがショットガンはワンアクションで住む。特に水平二連ショットガンはポンプ式と違って、最大二発ではあるが連発できる。それを両手で一挺ずつ持っているわけだから、計四連発が叩き込まれるわけだが、これが近距離において絶大的なダメージソースになることもあって、ソードでの撃墜より、ショットガンで撃墜した方がミッション時間の短縮に繋がる際に、交代していた。


 なのでこうして、身軽でとにかく速い敵機体を追い掛けるのはそれほど苦では無い。正直、右に左に蛇行されたところで僕はただ最短距離を突き進むので、そのような目まぐるしい動きをされたところで、大して慌てる必要も無い。

 追い立てる、ということは望む場所に相手を誘い込むだけで構わない。だからビームで撃って、追撃をしているように見せ掛けて左に曲がりそうなところを右に逸れてもらったり、下降しようとしているところを引き止め、上昇させたりと、CPUが出来る限り攻撃を回避しようとするそのシステムとしての穴を利用する。バグ技ではない。どんなゲームだって仕様外の抜け穴があればいずれ塞がるし、塞がらなければこのデータを参考に、CPUに改善措置を取ってもらいたいとも思う。意図してやっていることではあるが、やっぱり後ろめたさはあるので、出来れば早急に改善を望む。

『もうちょっと左』

「了解です」

 ヴァルコピーの右側を狙い撃ち、左へと機体を逸らさせる。

「あー、少し下降しちゃいましたね。問題あります?」

『大有りかも』

「ですよねー」

 焼き切らせる直前でブーストを解く。まだ焼き切らせるには早い。このタイミングじゃ、まだヴァルコピーが逃げる。だからスラスターの移動だけでヴァルコピーを追い掛け、ビームで移動先を調整する。

 と、ヴァルコピーが急激に速度を落とし、オルナの前方数十メートル先まで迫ったかと思ったら、上昇して機体全体を引っ繰り返す形で後ろを取られた。バレルロールという技術だ。戦闘機のアクロバット飛行の一つで、後ろを取られた際の起死回生の一手になる。

「けど、CPUにやられても全く焦る理由が無いんだよなぁ」

 呟きつつ、後ろから撃たれた散弾で装甲を削られつつ、耐久力も削られつつされながら、ショットガンの装填動作に移ったヴァルコピーの直後を狙って、同じようにオルナを宙返りさせて、再び敵機体の後ろを取る。そしてマップでヴァルフレアの位置を再度、確かめてエネルギーライフルの一発で更に移動先を修正させる。

「入った」

 ここでブーストを掛ける。ヴァルコピーが全速力で逃げ出す。蛇行し、どうにかして攻撃を避けようとするその高速の移動ではあるが、無駄がある分、オルナがただ最短ルートを選ぶだけで、付かず離れずの位置を取り続けていられる。


 行き先は分かる。なんとなく分かる。僕の“直感”は外れない。


 左右に揺れるヴァルコピーをただただ追い掛ける。ブーストゲージが赤を通り越した。限界を告げるアラートが鳴るが、構わず噴かし続ける。

『範囲から外れて』

 丁度、ブーストゲージが空になったところで機体速度が落ち、しかし慣性は残っているため機体を一気に左へと傾けて、バーニアも切り、急降下させる。

『毎回思うけど、スズの目標達成能力って、ゲームの中だけは高い。やって欲しいことを頼んだら、大体、全部叶えてくれるし』

「ゲームの中だけ、はよけいです。あと私はみんなの便利な助っ人でもありませんから」


 ヴァルコピーはヴァルフレアがばら撒いていた空中機雷群に突っ込み、複数の爆発が止め処なく引き起こされている。機体を回転させて上空を見てみれば、更にヴァルフレアがヴァルコピーよりも上の位置からレインボムを降らしているので、その爆発量はさながら地獄絵図である。

 あんなところに突っ込み、更に爆弾を降らされるなんて、想像しただけで嫌だ。絶対に逃れられない。前の戦いでは二つを同時に使って来なかったからどうにかなっただけだからな……。


 爆発がやみ、静寂が辺りを包み込むが、それを一瞬で掻き消してヴァルフレアが超絶的な速度でもう動くことさえままならないヴァルコピーに迫り、その寸前でピタリと停止したかと思うと、二挺のショットガンが敵機体の腹部に出し惜しみせずに四発全て撃ち込み、撃ち込まれた敵機体はそのあまりの威力に弾け飛び、あちこちから火を噴いて中空で散った。


『どう?』

「追い掛けている時にちょっと喰らいましたけど、かなーり耐久力は保てたと思います。でもこれは、追い掛けるだけで済んだからなので、次がこう上手く行くとは限りません」


 とは言え、一番の問題だったヴァルフレアを乗り切っただけでも随分と余裕が出来る。だって、嫌いだし。にゃおのトライデントぐらい嫌いだし。


「次、リグリスさんでお願いします」

 僕は開かれたコンソール画面からプレイヤー名をタッチ、そして『決定』する。


 オルナごと転送された場所は上空ではなく、焼け野原。やはり地上戦だった。

『よろしくお願いします』

「こちらこそ。ところで、先ほどから通信が静かなのは、どうしてですか?」

『二対一のこのセクションでは、あまり合同通信で話をしないようにと心掛けることにしたんです。戦うメンバーの集中力が乱れては行けませんので』

 ああ、だから個人間では通信はしているってことか。確かに、真剣に戦っている最中に気の抜けた通信が混じるとその一瞬で命取りになることもある。けれど、ミッションでそこまでピリピリしなくたって……ああ、このミッションは一発で終わらせたいってことか。

「クーシーコピー……クーピーで良いですか?」

『なんですか、それ?』

「いえ、通信では口にしませんけど、こう私ってよく独り言を呟くんで、クーシーコピーだと長ったらしいなと思いまして」

『独り言でなにをどう言おうと、構わないと思いますけどね。俺でしたら、了解すら取らないこともありますけど』

「それは……まぁ、人それぞれですね。ところで、リグリスさん?」

『分かっています。ちゃんとマップ画面は見ます。突っ込んでも引き際を考えます』

「それは良かったです。ネムネムさんみたいに五分で一回なんて生易しい物では無く、一分に一回ぐらいのマクロを組んでいましたから」

『スズさん、腹黒くないですか?』

「無いですよ?」


 ゲームで変なことされたら腹が立つだけです、とはさすがに言えない。


 隣に立つクーシーが徒手空拳の構えを取っている、はるか向こうで似たように近接格闘術の体勢を取っているクーピーを、どう攻略したものかと考えている中でカウントダウンが始まる。

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