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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
234/645

誰もフル装備で来いとは言っていない

***


『うぁー暑い。痛覚の軽減があるなら、温度の軽減もして欲しいよ』

 休憩時間に入って、ルーティがそんな愚痴を吐き出す。炎熱耐性を高めていても、熱風や炎に包まれた焼け野原をあれだけ駆け巡れば、機体全体が発熱し、コクピット内の温度が上昇するのは当然のことだ。

「これでも、軽減されている方だと思いますけど……普通だったら蒸し焼きなんじゃないですか?」

 どれだけ発熱しても機体のシステムは熱暴走を起こさないし、炎を浴びてもコクピット内の温度は、体感では真夏日、或いはそれよりも低い夏日の平均気温程度に保たれているように感じる。

 場合によっては、火傷するような熱を手に感じることもあるけれど、でも、それを現実に引きずるのは脳の勘違いが引き起こすことで、しかもさほど酷くはならない。


 酷くなるパターンは大体、“異常性”と戦う場合、なのかな。そう経験しているわけではないけど、バイオとシャロンと戦った時は現実に痛みは引きずった。となると、パッチペッカーもなにかしらの“異常性”を持っていたのかも知れない。でなきゃ僕が骨にヒビが入っているというかほとんど折れているような現実への痛みの引き摺り方は起こらないだろうし、ティアだって救急車で運ばれることも無かっただろう。恐らくルキに痛め付けられたルーティが入院することになったのも、ルキに“異常性”があるからに違いない。逆に不思議なのは、僕が大馬鹿をやらかした大隊ミッションだ。永山さんは確実に“異常性”を獲得していたし、僕だって暴れ回った。なのに、これまでの練習の中でリグリスにそれとなく訊いたが、現実にあのあと怪我が表面化したということも無いようで、僕だってオブシディに限らず全員にボッコボコにされたにも関わらず、精神の不安定さだけで体への怪我の表面化はゼロだった。逆に僕が不意討ちで倒した永山さん自身は怪我をしていたらしいし、彼女が撃墜した奈緒は傷だらけになっていたと大樹さんから聞かされた。なのに、僕が撃墜したみんなも怪我一つしていなかったらしい。境目が非常に曖昧過ぎて、混乱する。


 熱中すれば熱中するほど、現実とゲームの区別が付かなくなる。そんな言葉だけで怪我の表面化の話を畳んでしまって良いんだろうか。VRゲームは、新しい刺激を脳に与える。不可能だったことが可能になるファンタジーの世界で受ける刺激が、脳に新たな発達を促すという記事を新聞でも見たことはあった。その脳の発達が起因であるのなら、発達し過ぎている人ほどこの怪我の表面化の被害を受けやすいってことなのだろうか。“愚者”や“死に近い人”みたいな言葉で扱われるプレイヤーは総じて、脳への刺激が強すぎるという可能性もある。


「脳への刺激が強すぎる、か……」

 自分で考えた言葉を、そのまま言葉にして反芻する。

 発達云々ではなく、刺激が強ければ強いほど怪我の表面化の率が上がるのか? それはなんだか、あり得そうであり得ないような……でも、僕も含めた加害者側は大体みんな強烈なキャラだし……って言うか、“愚者”に強烈じゃないキャラの人が居るとは思えないし。


『次、スズが一番頑張るんだっけ?』

「私はさっきも、その一つ前も頑張っていたと思うんですが」

 シャロンにそう喰って掛かる。

『でも、ミッション受注責任者が一番疲れるのが第三セクションでしょう? 攻略情報にもそう書かれていたじゃない』

 しかし、ティアの追い討ちによって僕はすごすごとこのやり取りから撤退する方針へと心境を転換させるのであった。

「まぁ一機撃墜すれば20%回復の恩恵は受けるから、なんとかなるとは思います。それに二対一だから有利ですし」


 第三セクションは、旅行していた時にも話題になった自身の機体とその武装をコピーした機体にCPUが乗せられて敵機として登場する。ただし、全てを一度に相手にするわけではなく、見えない壁――空間断裂、バリア的な設定で一機ずつに区分けされる。なので、必然的に戦う機体は自身の機体とそのコピーとなる。

 ここで運営側のちょっとした難易度を易化させるための手段なのか、ミッションを受注したプレイヤーが僚機として、参加タグを受け取ったプレイヤーの機体のサポートに入る、というか入らされる。そして僚機として戦い終わったのち、機体の耐久力が20%ほど回復される。そして最後にミッション受注責任者は一対一で自身の機体のコピーと戦わされる。


『戦う順番は決めたんですか? 順番を待っている間はモニター越しでしか確認できませんし、サポートも不可。遠目から見て指示を出しても逆に混乱させるだけだと思うんで、文字通り見守るだけになってしまうんで、なるべく早く自分の番は終わらせておきたいと思うんですが』


 リグリスの言葉を僕なりに解釈すると、機体を動かしていないと落ち着かないっていうものになる。体を動かしていないとなんだか気分が落ち着かない人ってたまに居るから、あんまりジッと待つということが嫌いなんだろう。


 ボスラッシュってどのゲームが起源なんだろう? どっちにしたって、僕はそのボスラッシュに挑むような心持ちなわけだ。だって、メンバーの機体は僕も含めてどれもこれもピーキー過ぎるもん。辛うじてルーティとバイオが普通ってぐらい。


「面倒臭い順で行きます。まずシャロンさんから始めて、続いてリグリスさん、そしてその次にバイオさんを入れることで休憩して、ティアさん、最後にルーティさんでまた回復を狙います」

『俺を休憩ポイントにするなんて良い度胸だな』

『まぁ私たちは普通に支援に機体の性能を振っていますから、仕方ありませんよ』

 キレてしまいそうなバイオをルーティが宥める。

『私が一番面倒臭いの?』

「シャロンさんの機体のなにが面倒臭いって、多分、機体の性能に合わせて地上やら空中やらと分けられると思うんですよ。シャロンさんの場合、十中八九、空中戦なので、いつも通りの速度で動かれたら最悪です。CPUがどこまでシャロンさんを再現できるかは不明ですけど、もう速いってだけでキツいです。次に武装ですけど空中機雷は外して来ました?」

『外してない』

 外せよ!

「レインボムは?」

『装備させているままだけど』

 外せよ! なに装甲の炎熱耐性だけ上げておいて、フル装備で来ているんだよ!

「えーと、空中機雷とレインボムのコンボを決められると、もうグッチャグチャになります。すると耐久力がどんどん減らされると思うんですよ。シャロンさんを後回しにすると、万全の態勢で自分の機体とぶつかれませんので、真っ先に処理しておきたいんです」

 一番、耐久力を減らされそうな機体を真っ先に破壊する。いわゆる強敵は先に撃破して、楽な敵を残す作戦だ。


「ちなみに皆さんに訊いておきたいんですけど、この第三セクションも踏まえて武装をある程度は外していますよね?」


 返事が無い。

 え、なに? この人たち、事前の情報でコピーと戦うことを知っておきながら自分のお気に入り武装且つフルで来ちゃっているの? 冗談を通り過ぎて、吐きそうなんだけど。

 嫌なんだけど。速過ぎて狙いを定めるのも辛いヴァルフレアとか、嫌がらせ武装をフルで搭載しているアンブッシュとか、近接特化のクーシーとか、斬撃が当たれば大ダメージを受けるパールとか、万能性能で相手を絡め取るキューキャットとか、嫌なんだけど!


「あー……マジかぁ。僕の知っている武装をフルで搭載しているみんなの機体と戦わなきゃならないのかぁ」


 これでCPUの方が上手かったら、もう駄目だろうなぁ。

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