#理解に苦しむが故に#
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人は繰り返す。同じことを繰り返す。ずっとずっと繰り返す。
作っては壊し、生み出しては間引き、増え過ぎたなら殺す。
繰り返す、繰り返す、繰り返す。
「それが、人の輪廻という概念であるのなら、否定すべきことではないのですが」
眺めていた。
ジッとジッと、眺めていた。
ずっとずっと、眺めていた。
些末な情報を取得しつつ、足りない情報を回収しつつ、眺めていた。
「歴史は繰り返すためにある? 歴史は覆されるためにある? 分かりかねます。あなた方は一体、どちらを御所望なのでしょうか?」
人の世界に蔓延る言葉が頭に入るたびに、嫌気が差す。どちらとも取れない言葉が名言のように遺され、遣い回される。
「繰り返すのならば、どうして名言とやらに拘るのです? どうして偉人に学べと言うのです?」
歴史が繰り返されるのならば、名言も偉人も繰り返し、その歴史ごとに現れるはずだ。
なのに、ずっと昔の人を讃え続ける。昔の人が遺作を求める。昔の人が遺した技術を調べ続ける。
「実に非効率的なことをやっているようにしか思えません。そうやって繰り返したことで学んだことが沢山あるのでしょうけれど、ならばどうして、それを大事にしないのですか?」
人は忘れる、学ばない、覚えない。学習機関があったとしても、どれだけ偉人の素晴らしさをそこで語っても、それを“一つの知識”としてしか扱わない。それどころか、更に上の学習機関に入るための“試験”の材料にしか使わない。
「あまりにもぞんざいに扱い、けれど名前を聞けば“凄い人”程度で終わらせる。繰り返し続けて来た人間には、あってはならないことではないのですか? 歴史を覆すために忘れて行くのですか? でしたら、“知らない人”が居ることも肯けますが……なのに、それを“無知”と笑うのは何故ですか? そして、笑われている人はどうして“無知を恥”と思わないのですか。これが人間の進化なのですか? でしたら、非常に残念です」
アルマは紅の瞳を見開き、ギョロギョロと外の景色を――ミッションに臨む人間の機体を観察する。
「AIは学習したことを忘れない。人間の構造については学びましたが、“脳”という記憶媒体はどうやら機械よりも高性能にも関わらず、扱う人間によって使いこなせていたり、使いこなせていなかったりするようです。だから、私としても、非常に……非常にあなた方、人間の“脳”が欲しいのです。欲しくて欲しくてたまらない。だから、もっと調べさせて下さい。その“脳”という記憶媒体を……その、構造を、その、記憶の保存方法を。私たちならば、もっと上手く使えますから」
クスクスと笑いながら、アルマはその仮想世界へと落ちて行く。




