表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
231/645

ゼフォン攻略

 向かい合うエッダを切り捨てて、ソードを振り回して無限湧きするエッダに少しでもダメージを与えつつ前進し続ける。


『スズ! 深く入り過ぎ!』

 ティアから通信はあったが、僕はまだオルナを前進させられると判断し、操縦をそのまま任せている。けれど、その無意識の本能に抗うように意識して機体にブレーキを掛け、そこから跳躍させてバーニアを展開させ、空中へと踊り出る。エネルギーライフルでのコア目掛けての射撃は続けつつ、マップ画面でメンバーの位置を把握しつつ、ティアに言われた通り後退する。


『左腕で地上の薙ぎ払いだ。さっさと飛んで来い!』


 バイオがルーティとリグリスに向けたものと思われる通信を飛ばし、そしてゼフォンはバイオの言う通り、左腕を可動範囲一杯まで引き絞り、さながら鞭のように熱風を伴わせながら地上を薙いで来る。けれど、力を溜めた割には薙ぐ速度は遅い。強い空気抵抗を受けることで空気との摩擦を作り、火を灯す機構で成り立っているのだろうか。そもそも、空気との摩擦でなにかが着火したり溶けるという場面を僕はロボットアニメぐらいでしか知らない。現実の理屈でゲーム内の特異な力については説明できないものだと思った方が良いし、そもそもそんなことに思考が逸れている時点で僕はオルナの操縦を怠っている。

 考えるより先に動いた方が、気楽であることは知っている。だからリグリスも本能的に機体を操縦させているのだろう。だけど、僕はリグリスのようには制限無しに無茶できない。


 まずルーティが怒るし、ティアに怒鳴られるし、シャロンが冷たくなるし、バイオの当たりも強くなる。


 人間関係が尊いものだ、と小学生の頃の担任の先生に言われたことがあったけれど、つまんないことを言って悦に浸っているだけだろと聞き流していたわけだが、ここに来てそんな言葉を思い出してしまうということは、なんとなく僕は手放したくないと思っているのだろう。だからティアに言われた通り、下がったわけで。

「ルーティさん! それだと間に合わないからブースト目一杯掛けて下さい! ゲージが空になってしばらくブースト掛けられなくなっても良いですから」

『でも』

「ゲージ回復の間は、周りでカバーします」

『スズに言われちゃ、仕方が無い』

 キューキャットが加速し、そのほぼ真下をゼフォンの左腕が通り抜けた。炎熱対策を怠っていないから、直後に来る熱風ではキューキャットの耐久力は減らせないはずだ。でも、左腕に近かった分、キューキャットに起こる機体のバランス崩壊は酷いものらしく、ルーティの意図していないであろう回転を数度、繰り返したところでようやく機体が中空で停止した。

『キューキャットのフォローに回ります』

「お願いします」

『私も』

 リグリスのクーシーがキューキャットに迫り来るエッダを殴り飛ばし、続いて異常な加速でキューキャットの元まで移動を終えたヴァルフレアがショットガンの装填動作に移る。

『スズ? さっき目を撃ち抜いたけど、ついさっきまで様子を見た限りじゃ再生したっぽい。再生するってことは、部位ごとに切り落としたりしてもすぐに修復されてしまうってことかな?』

「部位ごとに修復速度の差があると思います。アイカメラはゼフォンにとって視覚を得るための器官なので、そこを壊されたままだと攻撃にムラが生じるので修復も速いように設定されているのかと」

『だったら、ある程度、痛め付ければ腕も動かなくなるのか?』

「……腕、動かなくなる…………」

 一つ、突拍子も無い案が思い浮かんだものの、今このタイミングで話すことじゃない。これはこのセクションのラストスパートに合わせて、みんなに伝えよう。

「ティアさん、合わせて行きましょう。バイオさんは私たちの露払いをお願いします」

『畳み掛けるの?』

「情報だとゼフォンは近接攻撃を複数回受けると、その場から移動するってありましたよね? それを試したいのと、ついでにコアに大きくダメージを与えておきたいんです」

『へっ、良いぜ。突っ込めよ。撃墜されない程度にはエッダを始末してやる』

「私より前に出たら、間違って切ってしまうかも知れないので、程々でお願いしますよ? じゃ、行きましょう」

 パールと合流し、アンブッシュが中空より更に上の位置を取っていることもモニターで見つけ、オルナにブーストを掛けさせる。パールはその速度に合わせてブーストを掛け、アンブッシュはそれよりもやや遅い移動を行って俯瞰的に僕たちの周囲を見張っている。

『おい、右だ。テメェの右からやって来る』

 ソードを抜いて、モニターに映った直後にエッダを切り払う。

『次は左だな。オルナの速度が落ちた分、パールが近くなった。そっちで対処しろ』

 オルナの横をパールが駆け抜け、長刀が向かって来たエッダを一刀両断する。

『あとは……ちっ! ちょっと左の量が多すぎんな。足止めする』

 パールがオルナの到着を待つ間にエッダが三機ほど左側から押し寄せて来るが、斜め上からアンブッシュが飛来し、シュートネットを撃って三機を電磁ネットに閉じ込める。見届けたのち、再びパールと合わせてブーストを掛ける。

『ティア、スズ。来るよ。薙ぎ払いは上空と中空。私たちはこのまま降下するけど、そっちは?』

『俺は三機が地上に落ちていったからこのまま始末するぞ』

 アンブッシュはそれで良い。でも、僕とティアは攻撃すると決めた以上、止まれない。

「降下するだけ?」

『それじゃ、コアに辿り着けやしないでしょ!』

 ゼフォンが両腕を広げて、前方の薙ぎ払い体勢に移った。これだと、左右のどちらの腕が中空を狙うかは腕が動き出すまで分からない。タイミングをズラされたらそれこそ最悪だ。リズムが崩れてしまう。

「右が中空、左が上空」

『理由は?』

「そんな気がした」

『その“直感”、信じて上げる』

「ルーティさん、ブーストゲージは?」

『気にしないで、もう回復しているから。また地上に降りれば良いんでしょ、行けるよ!』


 そして、ゼフォンの右腕が僅かに動いたことを“異常性”で読み取って、ブーストを掛けて地面擦れ擦れまで直滑降し、パールもそれに続いて来る。


 そのまま右腕が中空を薙ぎ払うまで地面の上を滑るように移動しつつ、薙ぎ払い終わったところで今度はパールが先に斜め上を目指して中空へと急浮上したのでオルナをそれに続けさせる。


「これで」

『届いたわね!』

 パールがコアに長刀の斬撃を加えたのち、すぐさまオルナのソードを突き立て、更にもう一本引き抜いて追撃する。左右に切り裂き、蹴って離脱したところにもう一度、長刀がコアを袈裟に切り抜いた。コアのダメージを感知したらしく、ゼフォンの右腕は薙ぎ払った右腕をそのまま胸部まで戻して来るが、その間際にパールは右斜め下に、オルナは左斜め下に離脱し、地上で機体に掛かる慣性を逆噴射で殺しつつ、ゼフォンをモニターに収め、動向を探る。

『テメェらは普段、攻略方法で喧嘩するクセに、こういう時だけ息を合わせてんじゃねぇよ、気持ち悪い』

「普段、息ピッタリなバイオさんとシャロンさんにも同じような感情を抱いているんですが」

 現実では会話が素っ気ないのに、ゲームだと阿吽の呼吸をしているんだから。

「ティアさんは途中で付いて来られないだろうなと思ったんです」

『ナメないでよ。これくらいの操縦なら、私でもやれるんだから』

 テオドラとしてラクシュミを駆っていた頃を思い出せば、これぐらいは出来て当たり前のレベルってところらしい。ディレイもウェイトも殺して剛剣を振り回していたんだから、ブーストの使い方も的確だろうし……ふぅん、ちょっとは認めようかな。


「上手いですねーティアさん」

『物凄い上から目線なんだけど?』

 それは、捻くれていた時代の名残りと言うか、僕ってゲームに関してだけは毒舌家なのは憶えていないのかな? その毒を口から吐くか吐かないか、その一歩手前でいつもいつも悩んでいるわけだけど、結局、吐き出さずに頭の中で文句を言う感じなのは伝えていなかったっけ。


『二人とも攻撃することしか考えていなかったっぽいから、仕方無いよ』

『頭おかしい人って、一つのことに夢中になると操縦も似て来るのね。ちなみに頭おかしい人っていうのは良い意味でだから』

 ルーティとシャロンのフォローなのかフォローじゃないのかも分からない通信に、項垂れる。

『まぁ、ネムネムよりはマシだと思いますよ。頭おかしいレベルは』

 それでリグリスの基準はネムネムだもんなぁ。あと頭がおかしいという言葉にレベルは無い。


 ゼフォンが叫び声を上げ、胸部を片腕で守るような姿勢のまま、天高くへと跳躍した。続いてアラート音がコクピット内に鳴り響き、正反対の位置にゼフォンが着地することがマップ画面を見ることで判明する。指示を飛ばさず、オルナを飛翔させて出来るだけ高度を稼ぐように飛び、みんなの機体がそれに続いた。

 着地後に起きる衝撃波は、熱風と炎を噴出させながら地上を駆け抜け、その反動で起きる火球が空中に逃げた僕たちの機体へと飛来する。今度はランダム要素は無く、どれもこれもがオルナや、誰かしらの機体を狙っている。ブーストやステップダッシュだけでかわせるものだが、確実に避けなければならない文、ランダムより圧倒的にタチが悪い。


「ちょっとアクションが変わりましたね」

『でもこれでも半分は行ってないでしょ? 四分の一、ぐらい。まだまだ先は長いよ』

「ルーティさんの言うことも最もだけど、似たようなことを繰り返せば二分の一までは割とすぐ到達するんじゃないかと。私とティアさんだけじゃなく、余裕のある人が隙を見つけてコアを叩く感じで」

『テメェは簡単そうに言うがなぁ……仕方ねぇな、俺もちょっと本気を出してやろうか』

「今までも本気を出していたんじゃないんですか?」

『あんっ? テメェ、このミッションが終わったら覚えとけよ』

 こうしてバイオを挑発しつつも奮起させつつ、オルナのアラート音が止まったところで、再び戦線を上げるため移動を開始させる。

「ルーティさんとリグリスさんも戦線を上げて下さい。エッダばかりに気を取られているとゼフォンの一撃にやられます。それに、サポートばかりは二人揃って性に合わないと思いますから」

 チームワークはハッキリしている。役割分担も出来ている。けれど、それじゃ作業になってしまう。特にサポートだけしかやらなかったら、つまらないことこの上ない。特にルーティには危険じゃない範囲で、攻撃に転じてもらいたい。


 その動きを見て、ラストスパートの案を採用するかどうかを決めるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ