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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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戦線を上げる

 カウントダウンが終わり、全員の機体が中空に君臨するゼフォンを目標として移動を開始する。ただ、ここで一人だけ抜け出して突撃をする機体は無い。まずは様子見だ。それは全員が分かっているようで、いつでもゼフォンの攻撃モーションに対応できるように位置取りは中距離。この位置に居た場合、ゼフォンがなにをして来るか。それが避けることの難しい危険な攻撃であったなら位置取りをまた変えて、けれど決して防戦一方にならないようにエネルギーライフルで攻撃も加える……で良いのかな。


『スズ? これ、ちょっと空中戦と違う気がする』

「どういうこと?」

『ブーストの速度が空中戦より制限が掛かっているから……半空中戦、みたいな。それに、降下限界も上昇限界も思ったよりすぐに辿り着いちゃう』

 シャロンはまず上昇と降下を行って、機体の動かせる範囲を確かめていたらしい。

「……地面――焼け野原がこうやって下を見ると近いですね。炎のスリップダメージが起こるのもこのせいだろうけど、じゃぁ、ラムエルより重力場の操作が弱いっていう設定なんでしょうか」

『地上擦れ擦れでは地上戦での操作に近く、ゼフォンの頭部くらいの高さまで行くと空中戦に近い……でも、空中戦より自在には飛び回れない』

 だから半空中戦、或いは半地上戦という言葉が合うということだろう。ややこしいな。どっちかに専念してもらった方が、操縦ミスが少なくて済みそうだ。


「ルーティさんとリグリスさんは地上擦れ擦れで戦って下さい。その方が地上戦に近いので、空中戦の小さな制動操作を行わなくて済むかも知れません。シャロンさんとバイオさんはゼフォンの腹部より上で。そこならやや空中戦よりなので、これでそれぞれの得意分野で戦えると思います」

『私は?』

「私とティアさんは、どっちも使います。天と地、両方使って立ち回りましょう」

 テオドラだったティアとリョウだった僕なら、この一定の高度で操縦の変化が目まぐるしく変わろうと対処し切れる、と思う。取り敢えず、やってみなけりゃ始まらない。それはティアも僕も共に言えることだ。これで操縦ミスが頻繁に見られたり、僕でも操縦に困る有り様だったら、空中と地上のどちらかに完璧に分かれてしまおう。


『来るよ』

 シャロンの通信で、モニターを深く見つめる。ゼフォンが右腕を振り上げる。消えそうだった炎は、その振り上げの動作に合わせて再び噴き上がり、右腕を包み込む。


『振り下ろしか?』

「違います、薙ぎ払いです。進軍を中止して、防御か一気に後ろに引いて下さい」

 ゼフォンの炎の右腕が空気抵抗を受けながら、ゆっくりと、しかし確実に前方の上空と地上の丁度、中央付近を薙いだ。熱を伴った風圧が機体を揺らし、オルナのバランスが一薙ぎで崩れた。慌ててバーニアで立て直し、耐久力と各種部位の装甲を調べ、ノーダメージであることに安堵の息をつく。

 さっきのも、スリップダメージが伴っていたに違いない。炎熱対策をしていなければ、壊滅していた。そして、地上と上空のどちらか片方を狙ったわけではなく、その中央を狙っての薙ぎ払いは、攻撃モーションじゃない。これはスリップダメージを与え、更に体勢を崩す風圧を全機体に与えるモーションだ。


「次が向こうの攻撃モーションです!」

『おいおい、自分の取り巻き共々かよ!』

 なので、左手が炎を(ほとばし)らせながらの掬い上げこそが、地上限定の攻撃モーションなのだ。ゼフォンのやや左寄り前方一直線が炎に包まれ、そして掬い上げられた土の塊は、それぞれが炎を纏った火球となって落ちて来る。左手の攻撃はそもそも範囲外だったので動く必要が無かったが、この追加で降って来る火球ばかりは大きく避けるしかない。


 ついでにゼフォンは取り巻きのエッダも巻き込んで掬い上げたので、一際大きな火球は地面共々、掬い上げられてしまったエッダが炎を纏ったものだ。既に動かなくなってはいるが、通常の火球よりも直撃してしまえば威力は高いと思われる。わざわざ確かめなくて良い。だって、そういう風に見えるんだから。視覚情報は受け取ったその時に感じたことが大体、正解だ。視覚は人が得られる情報の八割を握っている。ティアのような絶対音感、ルーティの“異常性”であれば視覚よりも聴覚が重要となり、八割以下になることもあるが、それこそ人それぞれなので、平均して八割と考えて良い。だったらその八割で得られた情報に、だまし絵でさえなければ間違いは起こらないだろう。


『あうぅう、ギリギリだったよー! ギリギリだったー!』

『ルーティさんほどじゃないですが、こっちも危なかったです。体勢を崩されていたので』

 中央の薙ぎ払いは体勢を崩させるため。この行動の次が、機体への攻撃の意思を秘めたモーション。機体の立て直しに時間を取られ過ぎれば、その次の攻撃を避けるのに間に合わなくなる。そういう一種の即死するほどではないけれど、コンボめいた一連の動作があるようだ。

 情報で見ただけじゃ、ここまでは分からなかった。主観視点じゃ、どこをどう狙われているのかの判断は付き辛い。文章でも、薙ぎ払いがあることと掬い上げ攻撃があることは把握していたけれど、それらが一連の動作として組み込まれているとまでは読み解けなかった。


 情報不足なのか、情報が過多だったのか、なんにしたって詰め込み過ぎて最適な動きばかりを気にしていた分、このゼフォンの動作には戸惑いを覚える。


「けど、やるしかないんだよなぁ」

 呟き、ゼフォンの火球を全てやり過ごしたことをマップとモニターから確認し、反転して攻勢に出る。要はタイミングゲーみたいなものだ。中央の薙ぎ払いが機体のバランス崩し――場合によっては中央付近で動き回っていたら攻撃にもなる。そしてもう一方の手で掬い上げは一直線上にダメージ判定、そしてしばらく火球が降って来る。こうなるとあとは上空に居た場合、どのような攻撃をして来るかだけど、薙ぎ払いと掬い上げが来たなら――

「バイオさんとシャロンさん、ゼフォンがまた動き出しました。“叩き付け”攻撃に注意して下さい」

 羽虫が飛んでいたなら、僕たちはどうするか。両手で叩くか、或いは地面に向けて叩き落とすか。前者は確実に潰すため、後者は叩き付けることで羽虫が地面に落ちてしばらく動きが鈍くなる。ゼフォンも恐らく、似たようなアクションを起こす。

「リグリスさん、エッダをお願いします」

『ああ』

 オルナの真横まで迫って来たエッダは、取り敢えずソードで切り飛ばしておいて、破壊まで行かずとも追い掛けて来ること自体を阻止する。一瞬だけ機体を翻し、後方でクーシーがエッダにトドメの一撃を与えている様を見てから、再びゼフォンを視界に捉えるように機体を回転させ、胸部で煌々と輝くコア目掛けてエネルギーライフルでビームを放つ。一発、二発、三発と与えたところでゼフォンは僅かにもがいたものの、振り上げた腕が止まる様子は無く、上空で飛び回っているアンブッシュとヴァルフレア――この場合、移動速度がヴァルフレアよりも遅いアンブッシュがターゲットとされ、移動先を読むかのようにゆったりとした腕の振り下ろしが開始される。

『どこに居ても、当てて来るってか?』

「防御、或いは攻撃範囲から逃れるくらい下がればどうにかるとは思いますけど」

『バイオを下がらせることは許さない。絶対に』

 ヴァルフレアが緩急を付けた加速と停止による移動で、ゼフォンの頭部まで行き着くと、そこにあるアイカメラ――ひょっとしたら眼球とも呼べるそれに近距離で右手のショットガンで二発、続いて左手のショットガンでもう一方の眼球に二発、弾丸を浴びせた。

『振り下ろし位置がさっきまでバイオさんを追っていたのに、止まって、そのまま振り下ろすみたい』

 ルーティの通信をそのまま呑み込めば、バイオへの追尾がヴァルフレアの攻撃によって停止したらしい。


「全員、攻撃範囲から逸れて下さい。正直、下がり切ってしまえば攻撃は届かないと思いますけど、それだとこっちも攻撃する手が限られてしまいます。なので、避けつつ戦線を上げて下さい。これは情報通りに、ではなく全員の操縦技術であれば難なく出来ることだと思って、言っています」


 こんな大型の攻撃に怯え切って下がっていたらいつまで経ってもこのセクションが終わらないし、エッダは無限湧きだし、あとは火球攻撃まであるのならジリ貧になる。そうなるぐらいなら、ゼフォンの攻撃タイミングに合わせて攻撃範囲から逃れ切り、そして前進する。両腕だけなら絶対にカバーし切れない箇所が生じる。上空と地上を狙えばその中間部分で避けられるし、中間と地上なら上空が空く、上空と中間なら地上が安全圏だ。そういう、絶対に攻撃を受けない場所を見極めてそこに移動し、攻撃を凌いでゼフォンに近付きダメージを与える。これが僕たち、遠距離型の居ないチームのこのセクションにおける作戦方針だ。


 ゼフォンは情報通りなら、コアの耐久力を半分ほど削ると攻撃方法が変わるはずだ。まずは、そこを目指す。

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