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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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難しいことばかりを選択しなくても良い

 素っ頓狂な声やらおかしな笑い声を発しながらも、ティアが操縦するパールは的確にエッダを仕留めて行く。その華麗な動きに見惚れず、僕もまたオルナを駆ってエッダを破壊して行く。

 ただ、制限時間は設けられていないので規定数を撃破するまでこのエッダとの戦いは続く。規定数は人数で比例するので、開かれたままのコンソールでカウントされている撃破数を見ると、ようやく半分を越えた辺りと言ったところだろうか。

『リグリス、ずっと前衛を張ってんじゃねぇ。コイツらは距離さえ取ればあとはミサイルや銃撃だけ避けりゃ大して遠距離じゃ強くねぇ。テキトーに流して、休憩するぞ』

『これを倒したら下がります』

 長期戦、というほどではないがエッダを薙ぎ払っている間にも集中力は使う。徐々にそれが摩耗し、肝心なゼフォンでの戦いでとんでもないポカをやらかさないとも限らないため、流す。制限時間が無いのなら、逆手に取って時間を大きく取り、心の余裕を保つ。バイオはどうやらリグリスの集中力がそろそろ乱れ始めていると読み取り、指示を出したのだろう。

「私たちも流しますか?」

『向かって来る敵に対して、そんな手を抜くことは絶対にしない』

 なにをムキに……怖がらされている分、根絶するまで戦い続けたいんだろうか。そういうのを逆恨みって言うんだよ。

「ルーティさんとシャロンさん、こっちはまだ大丈夫なんでバイオとリグリスが下がったところに入って下さい」

『『はーい』』

 気の抜けた返事ではあったが、マップ画面では光点二つが下がって来た光点二つと入れ替わって前衛になったのが分かる。


 ヴァルフレアは基本的にヒット&アウェイな戦い方を取ってもらうけれど、キューキャットのサポートとしても立ち回ってもらう。アンブッシュがクーシーのサポートに入ったように、ヴァルフレアがキューキャットのサポートをするというわけだ。作戦としては誰と誰が組むかはマップに放り出された際の位置取りで変えることになっていたのだが、クーシーの刹那的な移動とパールの先行が相まって、一部変更せざるを得なくなった。二人一組でエッダを倒す。これが基本だったが、現在、ティアは僕と協力してというよりも一機で立ち回ってエッダを破壊しているので、この基本が崩れている。僕がこっちに来たのも、予定外だ。腕前は均一にしたいが、僕とティアはリョウとテオドラで相当なやり込みをして来た熟練者であるのだが、分かれるはずが合流することになって偏ってしまった。この場合、もう一方の方は予定通りに交代しつつ流しつつとプレイできるが、僕たちはその分、踏ん張らなきゃならない。そして、引き撃ちしつつ休憩したいのに、ティアがそれを拒否するので常にガチな戦闘を強いられる。かと言って、さっき交代したばかりのバイオやリグリスのどちらか一人と交代したら、現在の均衡が崩れるかも知れない。


 要するに、キツいことを意図せずやっている。やりたくないのにやっている。楽が出来るなら楽をしたいのに、ティアと組むと大体いつもこんな感じなんだよなぁ。本人は手を抜きたがらないから、結果的に僕もそれに付き合わされる。僕もちゃんと言わないからだけど、なんだかんだで楽しそうだし口を挟み辛い。今回は楽しいのか怖いのか分かんないけど、やっぱり口を挟み辛い。


「前半で疲れて、中盤で変なミスしないで下さいよ?」

『この私が、そんなぎゃっひぃ! すると思ひぃやぁああ!』

 悲鳴を上げてエッダと戦いながら言わないで欲しい。一々、悲鳴やら笑い声やらと発していたら絶対にバテると思うんだけど……セクション終わりの休憩で、どこまで回復するかってところだろうか。

「でも、危なくなったら下がらせれば良いや」

 呟き、僕はパールよりも前にオルナを出させて、エッダの注目を集めさせ、右に左にと蛇行しつつソードで一撃二撃与えて離脱し、また別のエッダに一撃二撃与えて離脱を繰り返す。シャロンと同じくヒット&アウェイ戦法に切り替える。これなら耐久力の減ったエッダがパールに向かっても、少ない手数で仕留められるのでティアの負担が軽減される。その分、僕の負担が大きくなるけど、ワンマンプレイばっかりやっていた頃はほぼ周囲一帯が敵機だらけみたいなこともあったので、これで僕が極端に疲れるということは恐らくだが無い。だってエッダは対人戦と比べれば圧倒的に弱いし、クリティカル距離によってシステムアシストが掛かり、爪の攻撃モーションに追尾が掛かったってソードで弾いてしまえば良い。対人戦ならここで弾くのか鍔迫り合いのように接するのか、それとも強引に避けるのかの駆け引きをしなければならないけど、エッダの場合は大抵弾けば隙が出来るので、そこで畳み掛けてしまえば終わる。終わらなければ一時的に見逃して、次のタイミングで破壊する。

「バーニアをもうちょっと速度寄りにしても良かったかな……でも、今の調整じゃないとこの移動でバランスを崩した時の立て直しがちょっと遅くなりそうだしなぁ」

 独り言を呟きつつ、エッダにソードを突き立て、左に裂いてその場から移動する。

「蛇行は地上戦じゃ必須だし、Armorだとこれが丁度良いとは思うんだけど……これでミッションを失敗したら見直そうか。速度寄りにして、どれだけバランスが取り辛くなるのかも確かめないと……シャロンに訊いたら早いのかな?」

 呟きは加速し、オルナの操縦も更に深く的確になって行き、エッダの移動に合わせて機体を逸らし、エネルギーライフルで撃ち抜きながら、後方のエッダの攻撃をソードで弾いて退かせる。

「やっていることはいつもと変わらない。変わっているのはミッション内容だけ。落ち着いて、的確に、冷静に、冷徹に」

『スズー楽しんでる?』

 ルーティの通信で我に帰る。

『まーたブツブツなにか呟きながら戦っているんじゃないかって思って』

「……当たりだよ」

 敬語では無くタメ口になっていた。やっぱり意識しないとすぐいつも通りの感じで話しちゃうな。

『そうやって一人だけで呟いていたら、どんどんテンションがおかしな方向に行きそうにならない? 悪い方向に行ったり、良い方向に行ったり、まぁ、なんか気分が落ち込むことがほとんどだけどね』

「落ち込むっていうか、なんかまた感情を放り出そうとしていた、かな」

『じゃぁ改めて訊くけど、楽しい?』

「……楽しいよ」

 深呼吸をしてから、微笑みつつ僕は操縦桿を握り直して、モニターへと目を向ける。

 先ほどと見ていた景色が変わったような――オブシディと『百機組み手』に挑んでいた際も受けたこの境地、この感覚、この昂ぶる気持ちが脳細胞の一つ一つにまで行き渡ったかのように、オルナを動かして行く。

『良かった。それじゃ、こっちも大変だから』

「ピンチになったら言ってよ」

『ならないし。シャロンも居るんだから』

「……うん、そうだ。一人じゃなかったな」

『そうだよ』

 通信はそこで切れて、僕はエッダに剣戟を浴びせて撃墜し、機体の向きを変える。

「ティアさん、やっぱり下がって引き撃ちしながら逃げ回って、ちょっとでも気分を楽にさせましょう」

『目の前の敵機は全部、倒すって決めているのよ』

「それじゃ、一人で戦っているみたいになっちゃいますよ」

 しばし沈黙が続く。

『驚いたわ。あなたに諭されるなんて……ええ、分かったわ。意地に拘っていてはチームプレイとは程遠いもの。下がりましょう』

 難しい話じゃない。辛いことばかりを選択して、辛いことばかりに挑み続ける必要はどこにも無い。楽が出来るなら楽をしよう。多分、要領の良い人っていうのはそういう風に楽が出来る時に楽をしている。でも、それは要領の良い人の特権じゃないし、要領の良い人しか出来ないことでも無い。


 やってみれば良い。やってみるだけやってみて、無理だったら無理だったで別の楽な方法を考えれば良い。


 少なくとも、僕とティアはこの決断のおかげで引き撃ちでエッダを撃墜しつつ逃げ回ることで時間稼ぎをし、途中でアンブッシュとクーシーも加わり、キューキャットとヴァルフレアと合流することでエッダ撃墜の規定数に達し、危なげなく、それで居て心に余裕を持たせたまま第一セクションを終えることが出来た。

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