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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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さっさと終わらせたいから

「まぁその、長所短所は人それぞれですから、互いの短所を補い合う形で頑張って行きましょう。そうすればネムネムさんには言いませんから」

 僕は僕らしからぬ慰めの言葉をリグリスに投げ掛ける。

「実際、リグリスさんと合わせられるのはスズだけだもんね。スズでなんとか合わせられるってことは、私には全然ってことで、あとはちょっと無理をすればティアがどうにかってレベルだし」

 ルーティの言うように僕はなんとなくでリグリスの動きには合わせられる。敵機体が現れた直後は追い掛ける形になってしまうけれど、その後はサポートするべきなのかそれともアタッカーとして前に立つべきなのかは直感的に判断する。だからギリギリ間に合う。でも、他のみんなにそれを求めてはならない。

「善処はしますが、人と合わせるのが昔から苦手なんで」

 僕みたいなことを言っているけど、この人は僕じゃないんだよな。まだちゃんと常識を持った上で言っている。僕の「人と合わせるのが苦手」はそのまま自己中プレイやワンマンプレイに繋がるけれど、リグリスの「人と合わせるのが苦手」はチームプレイを頭に入れていても、どうしても体が先に動いてしまうという脳筋な行動力だ。これらは似ているようで似ていない。人付き合いが苦手なのが僕、人付き合いは出来るけれど溶け込めないのがリグリスだ。

「じゃぁネムネムさんに説明します」


「だからそれはやめて下さい死んでしまいます」

 縋るような視線と早口にさすがのティアも僕を見るのと同レベルでリグリスに引いている。


「あんまり人の嫌がるようなことを言うものじゃないですよ」

「違うって。あくまで最終手段であって、リグリスさんが私を最大まで怒らせない限りはしないことだから」

 最大まで怒ったら、するって辺りがティアなんだよな。

「けっ、女にビビるなんて情けないな。あの女のなにが怖い? ゲーム内じゃ猫でも被ってんのか?」

 バイオの言葉に応答が無い。

 応答が無いってことは、もしかしてその通りなんだろうか。

「えっと、リグリスさん?」

「ネムネムは、猫を被ってなんかはいません。誰だって他者に見せる顔と素の顔は違うものです。それを猫を被っていると言うのなら、世の中の人は全員、猫を被っているってことになります」

 それはその通りなんだけど、テンションが落ち込んでいるのはどうしてなんだろう。

「俺は、ネムネムに近付く有象無象を追い払い、そして噛み付く猛犬です。何故そうなったかは俺も分かりません。ただ、そうなるように毎日毎日毎日毎日……やっていられませんよ、こっちは。気味悪がって近付いて来ない奴らが大半の中、ネムネムだけ近付いて来て、疲れるんですよ。すると奴らは俺がネムネムにだけ(なつ)いているみたいに言い出して、気付いたらこっち“も”針の(むしろ)です」


 現実でネムネムさんが本当にリグリスを調教して使役していた件について。


「リグリスさん、一緒に頑張りましょう。私はなんとか合わせることが出来るんで、あとはリグリスさんが意識して合わせようとすれば私に関しては問題ありません。バイオさんもあなたが意識すれば恐らく合わせるのにそう時間は掛からないと思います。位置取りなどが異なれば無理に合わせる必要はありません。強いて言えば、同じアタッカーであるティアと合わせられるようになるのがベストです。シャロンはヒット&アウェイの戦法なのでさほどリグリスさんと合わせることは少ないと思いますし、ルーティは私が見ますので、意識の外に出して下さい」


「それだと私が足手纏いみたいな言い方じゃん」

「私は無理して合わせに行けますけど、ルーティは自然とタイミングを合わせに行けます。今回はリグリスさんが突然加入したということで、あとそれほど面識が無い、機体のことを知らないということで合わせられないだけですよ。時間さえ掛ければこの問題はクリアできることなんですけど……ちょっと待って下さいね」

 僕は全員のメールにスケジュール管理ソフトで作り出した全員がログインできる日、時間帯のリストを添付して送信する。

「ええと、全員のスケジュールの空きや時間帯を重ねたところ、九月の上旬辺りでミッションに挑もうと思っていまして、そうなるとその時間で解決できる問題がギリギリになるか、間に合わないかも知れません。それを無理してどうこうするよりも、ルーティの強みをより伸ばした方が良いと思って。九月上旬辺りと定めたのは、あまりこのミッションのことだけで時間を潰すのも勿体無いと思ったからです。一ヶ月や二ヶ月も思案し続けることじゃないですから。それほど考え尽くすよりもまずチャレンジした方が速いと思いますので」

 九月上旬辺りにこのKnightへの乗り換えミッションを受けるとしたならば、リグリスはともかくとして僕たちは約一週間か二週間目ギリギリぐらいまで、このミッションで足止めされていることになる。さすがにそれは作戦やら位置取りやら攻略法やらを考え過ぎだ。難しく考えるより、もうトライ&エラーを繰り返した方が手っ取り早い。正直、リグリスの謎の機体操縦さえ明るみにならなければ今日チャレンジしても良かったのではとすら思っている。


 そう、リグリスの“エネルギー体”発言さえ無ければ、悪戦苦闘しつつもなんとかなったんじゃないかと思う。“エネルギー体”発言さえ無ければね。あれはちょっとレベル高過ぎてみんなが驚いて、ついでにちょっと距離を置きたいプレイヤーになる話だったので、全員の意思疎通が乱れると判断して切り出さなかった。シャロン以外、付いて行けなかったからね。ああもうホント、不思議な操縦について訊いたら、戦々恐々とするような話が出て来るなんて思わないよ。意味無く腹が立つんだけど。


「スズがスズらしくもなく、みんなを仕切っているわ」

「あれはそういんじゃないと思いますよ、ティアさん」


「私、こういうスケジュール管理って大嫌いなんですよね。気を楽にしたいので、ちゃちゃっと済ませてしまいましょう。そう、私が心労で倒れないように!」


「ね?」

「……ちょっとだけ見直した私が馬鹿だった」

 物凄く、ものすごーく深い溜め息をティアが零している。

「基本、スズがやる気になったり躍起になることって、自分のためって考えた方が良さそうね」

「あははー、そこには共感できちゃう」

「それでも引き受けてくれたことだけには感謝するべきではあるんだけど、ああいうこと言われると『ありがとう』って言いたくなくなる」


「女連中の中でテメェの評価がダダ下がりだが?」

「女性同士の友人関係はドロドロしたものだってよく言いますけど、なにか言い返さなくて良いんですか?」

 バイオだけにではなく、リグリスにまで心配されてしまっている。

「もうなんと言いますか、反論しても無駄だろうなって。だって私が言っていることは、本当に自分のためな部分が多いですから」

「けれど、世界中の人間が誰かのために協力を惜しまないっていうのはあり得ないと思いますけどね。誰だって、利己的な部分は持っていると思いますよ。俺だって最初はまず自分のことだけ考えますし。それを無視して来るのが一人、居るわけですが」

 変な笑みを浮かべつつ、リグリスはそう励まして来た。

 励ましていると思ったら励まされていたりと、ややこしい。傷の舐め合いをしたいわけじゃないから、そろそろ話は終わりにしよう。

「あと一回、さっきと同じミッションで練習します。リグリスはマップを気にしつつ、あとタイミングを合わせることにも気を配ってみて下さい。多少、やり辛さはあるかも知れませんが、まずはやってみるってことでお願いします」

「分かりました」

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