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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第五章 -Advance-
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自分の役割

「あーなんか難易度というか、ミッション内容が変わったらしいですねー」

 奈緒はすぐさま会話の輪に入る。僕にはタメ口なのに、ここで敬語に切り替えられる頭の速いが羨ましい。ってか、なんで僕にだけタメ口なんだよ。

「そう。だから、特殊ミッションの作戦会議をしたいと思って」

 そして倉敷さんも奈緒には敬語ではなくタメ口を遣う。こっちもこっちで頭の切り替えが速そうだ。

「んー、兄貴と私はもうKnightを入手していますから、入手していない人と一緒にはミッションを受けられないんですよ。あくまでArmorでの登竜門ってことにしたいんだと思います。Knight入手後は自由って感じで。あと、ミッション内容の変更に伴って受注できるプレイヤー人数の枠も増えたって聞きましたけど」

 奈緒が倉敷さんの話に喰い付きつつ、チラッと大樹さんの方を見る。その視線に大樹さんは溜め息をつきつつ、タブレット型端末を取り出す。『NeST』とはデザインが違うので、恐らくは大学等で利用している物だろう。

「外を出歩く際に道に迷わないようにと持って来たが、このために使う予定は無かったな」

「そんな堅いことを言わないようにしないと、折角の旅行気分が台無しだなー」

 再び大樹さんは溜め息をつく。奈緒にどう対処したら良いか分からないように見える。

「あんまり大樹さんを困らせるなよ」

 取り敢えず、この一言で奈緒には大樹さんが漂わせている空気を察してもらう。僕と違って、ここに居る大体の人は空気が読めるはずだから、ちょっとは静かになるだろう。

「気を遣わせてしまってすみません」

「いや、君たちには情報が必要だろう。調べてもらって構わない」

 言いつつ大樹さんはブラウザアプリを起動し、端末を倉敷さんの方へとスッと差し出す。内部ストレージを漁ったりしない限りは自由に使ってもらって構わない、ということだろう。倉敷さんはそのような非常識なことをしないと、この人も分かっているのだ。要するに僕や理沙には、漁るかも知れないという疑いが掛けられていたということでもある。望月は大樹さんとはあまり面識が無いこともあって、高価な物を少しの間でも触らせるのに抵抗があったのだろう。なので、望月より僕と理沙の方が信頼度では下であるということのような……。

 大樹さんの信頼度に疑問を抱いている中で、倉敷さんは「お借りします」と言って、タブレット端末が汚れないようにテーブルの上から持ち上げつつ自身の元へと引き寄せ、なにやら検索を掛けている。

「大樹さんから見て、内容の変わった特殊ミッションはどう思いますか?」

 理沙が間の空いた時間を埋めるように訊ねる。

「ゼフォンとグザファンの破壊だったか。ゼフォンの対処はさほど難しくないだろう。その特殊ミッションまで到達しているのなら、どのようなプレイヤーでも突破は容易いはずだ。ここで苦労するのなら、ランク1のミッションを一からやり直した方が良いだろうな」

 相変わらず、無茶なことを言う。

「グザファンだが、こちらの機体のコピーの範囲がどこまでなのかが分からない。CPUの動きなのか、それとも人らしい動きをするのかでも対処が変わる。コピーされた機体が、自分自身よりもコピーした武装を上手く扱っている様を見せられたなら、相応にやり込ませてもらいたくはなるが」

「えーっと、どういうこと、ですか?」

 理沙が首を傾げている。

「大樹さんは自分の限界を決めないんだよ。だから、自分よりも武装を上手く扱うディエーリヴァとミラーマッチできるなら、それを超越できるくらい強くなって、悠々とクリアし、捻じ伏せることができるようになるまでそのミッションをやり続けたいってこと」


 実際、この人は強者から学んで強者と対等になり、そして強者を這い蹲らせて、その上へと登り詰める。そうすることで、相手に熱を与え、自身を貶めるという目標を持たせることで、その相手に再び自分を乗り越えてもらいたいと願う。要は人の目標兼踏み台になりたいというよく分からない性癖を持つ。なので、ちょっと方向性が変わって来るがディエーリヴァ対ディエーリヴァ――ただし中身は大樹さん対CPUの戦いにおいて、全力で自分自身の作り上げたディエーリヴァを捻じ伏せたい願望に駆られているんだろう。それでCPUが強化はされないだろうけど、自身が想定しなかったディエーリヴァの動かし方を見ることが出来たなら、それを自らの糧に加えたいに違いない。ゲームに熱中するあまり、同じ人とは思えない怖ろしいほどの腕前を持つ人を変態って呼ぶけど、まさにそれだよな。


「……なんか視線を感じる」

「同類だと思って」

 視線は理沙の物で、そして僕と大樹さんが同類などということを口にして来た。


 ゲームにおいては防御特化にしていた変態だけど、大樹さんほどでは無いんじゃないかな……いや、でも大樹さんは文武両道で勉強もバイトもゲームですらも全て平均以上の水準なんだから、同類にされるとそれはそれで嬉しいと思わなければならないはずなんだけど。


「しかし、自分自身の機体のコピーに負かされるということは、CPU以下の動きしか出来ていないという意味でも……いや、受注するプレイヤーの数によってCPUの動きに統率力や変化があるのなら、それこそチームワークやチームプレイが攻略の必須条件にはなり得るか。一人で受けるならタイマンだが、複数ならば出て来るグザファンも複数ということなのだから」

「チームプレイ……」

「そこ、呟きながら目線を逸らさない」

 ビシッと理沙に指差されてしまった。

「最近は頑張っている方だから」

 一応、そう反論しておく。

「今回、このメンバーでその特殊ミッションを受けるつもりなら、涼君は意外と重要なポジションに居る」

「なんで僕なんですか?」

「ワンマンプレイや自己中プレイは確かに控えなければならないが、サポートの押し売りや空気の読まずに味方の機体を問答無用で助けに行く姿勢は、チームプレイでは役割を持つ。特に、涼君はここに居る全員に対し、空気を読まずにズケズケと物を言える。逆に涼君以外は、一定の距離を保ちたいために遠慮している部分がある。君は妹との壁を無くすように努めてはいるが、全く関係が無かったものの喧嘩を売ったという後ろめたさから理沙君と距離を置いている。香苗君もまた、理沙君には少しばかり線を引いているようだ」

 最初は僕への攻撃だったが、それが啓二さんと望月に移った。

「続いて、倉敷君は理沙君との関係は良好であり、香苗君とも相性が良くはあるが、その兄に対しては線引きをしている。そして理沙君は年上に対して気を遣い過ぎる点から、倉敷君と良好な関係を築けてはいるが、肝心なところで自分の意見を貫き通せず、その姿勢は香苗君の兄にも通じている。それに比べて、涼君は全員が空気を読んで、線引きをして、入ろうとしない領域に勝手に入り込む。捻じ曲がった性格だからこそ成せることだな。この場の誰にも嫌われたって構わないという姿勢が、後先考えない踏ん切りの良さに繋がっている。が、内心では嫌われたくないという二律背反に苦しみ、怯えているため一旦、決め付けたことから思考が逃れられない。問題ばかりしかないが、こうして人と人との繋がりに藪から棒に入り込んで来るようなプレイヤーが一人は居ないと、チームプレイは成り立たない。作戦指揮に向いているのではなく、作戦や策略の成功率を上げるムードを作り、同時にトラブルを生み出す。居てくれて助かることもあれば、居なければ良いのにとも思うようなプレイヤーが犠牲になれば、割とすんなりとクリアできるのではないかと思っている」


「……あの、みんなの問題点を上げている中で僕だけ、なんか“犠牲”がどうこうってフレーズが飛んで来た気がするんですけど」


「涼の兄貴は自己犠牲の塊だよねー?」

「いつからそうなったんだ」

 僕が頭を抱えそうになっている横で、クスッと望月が笑う。

「なるほど、立花君を犠牲にか」

「立花君が犠牲になってくれれば、ちょっとは楽になるかも」

「涼にはここは犠牲になってもらうしかないか」

「テメェを犠牲にするってのは良い話だな」


 呪いに詳しくて、呪詛返しへの対策法もバッチリなオカルトにどっぷりハマっている誰かを急募したいところである。そうすれば、軽度の呪いでみんなを怪我しない程度にちょっと苦しめたいと思ってしまった。

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