時計
秒針を眺めていると死を感じる。
針が動く度に一つ、また一つと私の残された時間が減っていく。
それはとても残酷だが、私には至福の一瞬だった。
一秒毎に感じる、まだ死ねないのかという焦燥感と。
まだお前を見続けていられるという安心感。
時計は私の命を刻んでくれる。
私が始まってしまった瞬間から、終わる瞬間まで。
私だけを見ていてくれる。
私がお前を見ていない時間でさえ。
お前は私だけの物で。
お前が刻むのは私だけの時間。
健気で、従順。
そして何より、私に死を感じさせてくれる。
こんな生気だらけの救いのない世界で。
唯一、私に救いを見せて、触れさせてくれる。
死は救いだ。
それを感じるからこそ。
私は生きていられる。
こんな世界で。
生きることに、僅かながらの価値を見いだせる。
だから、もっと刻んでくれ。
一秒、一分、一時間、一日。
刻み続けて、いつか私を殺してくれ。
私はお前に救われたい。
ただ、愛したお前に。
それでも、お前は私を死へと向かわせる。
ただ無機質に一秒を刻む。
そんな姿が、堪らなく愛おしい。
ありがとうございました。