41 開戦
やっぱり体がおかしい。
さすがにいつも一緒にいる豆ちゃんには、体の異変ばれてるみたいだよね。
初めておかしいなと感じたのは、豆ちゃんがスラム街で襲われた時。
私は平和な日本で暮らしてたはずなのに、今思えば、普通に殺そうとしてたもんね。
魔物を殺すのとは、訳が違うはずなのに……
それから徐々に魔力操作する時に、邪魔が入る感じがする。
なんでだろ?魔術を使っても、途中で霧散したり、逆に強すぎる魔法が出たり、安定しない。
これってきっとやばいよね?でも相談したくても、ニコルさんはいないし……
さらに、豆ちゃん曰く、マレポの町の有名どころの、冒険者が集められてるみたいだ。
索敵では引っかからないけど、微妙な気配も感じるらしい。
これって、何か起こる前に逃げたほうがいいよね。もし私が狙いだったら、とんでもないことになるしね。
荷物の準備とかも、いざというために、私と豆ちゃんのアイテムボックスとポーチに入れてあるし、
「豆ちゃん、なんか雲行き怪しいし、この町出ようか?カールさんとかニコルさんとか、クマの寝ぐらから離れるのは、少し心残りだけど、なんか今そんなこと言ってる場合じゃないよね?」
「そーですね。いろいろ不義理はあるかもですが、そんなこと言ってられないですしね。」
私達は、東門へと歩き出す。
「おじょーちゃん、どこ行くの?」
声をかけられた瞬間、私と豆ちゃんは横へと飛んだ。
ありきたりだけど、鋭いナイフを胸に突きつけられたような感触だ。
レイ
桜より強い
スキルは見れないけど、やっぱい私より強いよね。
「どーしたの?なんにもしてないけど?」
「私達に何か用?用がないなら急いでるから先行くね。豆ちゃんいくよ!」
「…… さく姉、あれ、前話した、銀狼の絆のリーダーの、レイです。」
「う~ん、そっちのチビッ子には、用がないからどっか行きな。僕そっちのお姉さんとお話があるの♫」
「そーなんだ、じゃあ豆ちゃんには、用がないんだね。」
「嫌です!一緒に戦います!」
「豆!逃げろ!」
「嫌です!ずっと一緒にいるって約束してくれたじゃないですか!裏切るんですか!」
思わず大きい声がでる。ちっ、何言ってるの豆ちゃん。2人で死ぬこと無いのに……
さっきから、背中の汗が止まらない。こいつとは多分戦うとかの次元にならない。封印した能力が、どうしたら戻るのかも分からないし…… しかも、魔術もちゃんと出来るか分からないのに……
「う~ん、戦う?僕戦うなんて言ってないよ?僕が一方的に殺しちゃうだけだよ?」
魔力を集中する暇はない。私はアイテムボックスに入ってる、出来上がってる光魔術を取り出す。
「閃光弾」
私は、豆ちゃんの手を引っ張り、逃げる。魔力の操作が上手くいかない時、いざという時の為に、何個も出来上がった魔術を入れておいた。ボックスの中は、時間が止まってるし、思ったとおり、霧散することなく存在し続ける。何故か威力は弱まるみたいだが、今の私の不完全な魔術よりはましだ。
遠くの方で、
「あらら、逃げちった。」
て聞こえる。くそ、やっぱり向こうには余裕があるよね。
「豆ちゃん!一人で逃げろ!」
「嫌です!それにどうせ殺されるに決まってるじゃないですか!冷静になってください。」
そうかもしれないけど、戦ったら確実に死んじゃうじゃん。その時違和感感じる…… 結界?街全体を被っているの?そんなことを思っていると、私達のすぐそばに、氷の矢と、炎の槍が飛んでくる。
「な!街の中で攻撃魔法?正気なの?」
「そんなこと気にしてる場合じゃないですよ!あいつら街のことなんて、考えるような人達じゃないです!」
アイテムボックスの中から、素早さが上がる、シャープネスを2人にかける。基本的に、補助魔術しか入れてない。威力の落ちた攻撃魔術入れるより、逃げるための魔術を沢山入れといたけど…… それなのに結界を張られるなんて!私たちはまた走り出す。
「ごめん、豆ちゃん。私がもっと早く街から離れるようにしてたら。」
「どうせ無茶だと思いますよ、私たち多分ずっと、見張られてましたし。しかも私なんかの索敵に引っかからないから、実力差もすごいと思います。」
ふぅ~走りながら魔力を練る。少し前なら簡単に出来た事なのに、なかなか集まらない。それでも集まった雷魔術を、地面に放ち私と豆ちゃんを中心にクモの巣状に放つ。…… ダメだ。やっぱり弱い。こんなんじゃあ足止めにもならない。気がつけばスラム街あたりまで、走ってきたみたい。豆ちゃんに聞くと、やっぱり囲まれてるみたい。無理だ、逃げ切れない。どうやら町中に、索敵魔方陣も引かれてるみたいで、私たちがそれを踏むと、空中に光が上がる。どんどん、私たちは追い詰められていく。さらには前方には、レイの姿が見える。ついに私達は、足を止め、戦う覚悟をする。戦う覚悟といっても、どうにかして豆ちゃんの命を、が助かる可能性について考える。
「なんで私を狙うの?」
「う~ん、それはそこにいるギルド長殿にでもきけば?」
「え…… ギルドからの依頼なの?」
「すまんな、お前の抹殺依頼を、正式にわしが出した。ここで死んでくれないか?」
「そんなこと言われても、はい死にますなんて言えるわけないじゃない!」
「おぃ!じじい、勝手に話を進めるな。依頼内容にはそのチビッ子は入ってない。お前が俺と、あ~俺達と戦えば、そのチビは見逃してやるぞ。」
「さく姉!嘘だよそんなの!」
嘘でも本当でも、それしか助かる可能性はないでしょ。私は豆ちゃんのお腹を殴り気絶させる。
話を聞く限り、あのレイって奴は、ただの戦闘狂で、私が戦えすれば、約束は守るかも。
道の端に豆ちゃんを移動するまで、攻撃されることはなかった。だけどまさか、ギルドから依頼が出てるなんて。まさかニコルさんも…… いやニコルさんはむしろ、拘束されたり…… 殺されたりはしてないと思うけど。
最後に豆ちゃんの顔を見て、私はレイに戦いを挑んだ。




