40 ニコルの戦い
桜ちゃん達が、装備を売り出してから一週間。カールのお店で細々と売れてるみたいだ。
カールのお店で売ってることもあり、ちゃんとした装備が売っていると話題になっているみたいだが、カールの普段の行いが微妙なだけに、特に今のところひどい詮索は無いみたいだ。一応貴族なわけだしね。
そんな時、ギルド内では、いろいろな動きがあった。
戦争の援軍に行っていた、マレポの街最大級で、最大戦力のパーティー『銀狼の絆』の精鋭が、集結していた。銀狼の絆の、受ける依頼は人殺しのみ。リーダーのレイ、ランクSSの冒険者であり、快楽殺者。人格破綻者だが、戦闘の腕のみならず、戦争では軍師の役目もこなす、まさに戦闘の申し子。
マレポの町の、結界を担い、警備団たちの上に立つ『正義の盾』、団長はギルド長のマルクだ。60歳を超えてもなお、結界魔法に関しては、随一の腕を持ち、結界の神バルティスの使いだ。その正義の盾も、精鋭達は、結界任務から外れ、戦闘待機中みたいだ。そんな時、私はギルド長に呼ばれた。
「一体何が起こるんですか!銀狼の絆が来たって事は、誰かに抹殺依頼が出たんですよね!」
「落ち着け、まだ出たわけじゃない。それに、誰に出るかはお前が一番分かっておるじゃろ?」
「ギルド長!あの子達は、今は普通に生活してるだけですよ!」
「おいおい、じーさん、もうさくっとと殺しちゃおうぜ?…… そんなに睨むなよ、ニコルゥ~。」
「2人とも落ち着け!何もまだ決まったわけじゃない。」
「失礼しました!」
思いっきり、ギルド長室のドアを、叩きつけるように閉めて部屋を出ていく。
家へ帰る途中、人の気配に気づく。…… 私にも監視がついてる?
やっぱり、今桜ちゃんたちと接触するのはまずいね。
何かあの子達みてると、つい肩入れしちゃうよね。
それから2週間、ついにギルド長から呼び出された。
「『ホンジョウ・サクラ』の、抹殺依頼を正式に出すことが決定した。」
「な、なんで急にですか!」
「暗からな報告によれば、魔法を使う際、髪の色が黒くなっているらしい。」
「嘘よ…… 。」
「もう一つの理由は、ギルド長としてではなく、結界の神バルティスの使いとして、今朝バルティス様から、神託を頂いた。黒髪の忌み子なら、神託が出るのも当然だ。」
「そ、そんなことって…… 。」
「ニコル、諦めろ、あいつは俺ら銀狼の絆に正式に、抹殺依頼が出たんだ。お前の出る幕はねえ。」
私は拳を思いっきり握り、机を叩く。あの子達が何したっていうのよ……
話は、いろいろと続いているが、頭に入ってこない。
「すまんな、ニコル。神託が出た以上決定事項だ。お前一人が何を言っても、変わらない。」
「けっ、認めろよ、お前が何言っても変わんねえんだよ!」
「私が、巫女の事を報告した事が、原因なんですか?」
「多分関係ない、遅かれ早かれこうなることは逃れなかった。で、お前はどうするんだ?お前の手で、最後は楽にしてあげるという、選択もあるぞ。」
「そ、そんなこと、そんなこと出来るわけないでしょ!」
「なら、仕方ない、お前を拘束させてもらうぞ。」
ギルドの地下牢に入れられて一週間。
地下牢の中で、両腕を魔法のかかった手錠で拘束され、全く力が入らない。
そろそろ動く頃かな……




