29.5-2 マメりコルの現実2
少しだけ残酷な話あります。
今日も桜さんと採掘に行く。
待ち合わせ場所でしばらく待っていると、やたらニマニマした顔で私に近づいてくる。桜さんがきました。正直、顔を見る前までは、本当に来るかどうか心配だった。桜さんの実力があれば、割の合わない依頼だから、気が変わっても仕方ないと思っていた。
しかし、桜さんは私のそんな不安をよそに、なんと私の装備を作ってきてくれたのだ。素材をもらった分で作っただけと言っていたが、こんないい装備をもらっていいのだろうか。しばらく、押し問答をしたが、最終的には、守るこっちが大変なんだからと、言われてしまえば返す言葉もなかった。あとはなんか、やたら上質なのに、センスの悪い絵が書いてある服をもらった。嫌味を行ったが内心は嬉しかった。あまりに嬉しくて、自分の体に汚い痣があることも忘れて、着替えてしまった。桜さんが何か言いたそうな顔をしていたが、嫌われたくないため、顔を背けてしまった。
それからの日々は、本当に幸せだった。だからこそ、私は浮かれていた。
人生で何度も油断してはいけない、人を信じてはいけないと学んでいたのに。
普段ならギルドを出てしばらく歩くと、マントをポーチに入れ、服を前着ていた、ボロイ服に着替える。そうしないと、スラムで身ぐるみを剥がされるからだ。
だけど今日は、ちょっと街を歩いてみたかった。私は勘違いしていたんだ。私も普通の人生を歩めるかもと、ほんとは自分の人生に光が指すことなんてないのに。
私はマントだけポーチに入れ、桜さんに貰った服で街をぶらつく。今ではこの、服の真ん中にある、桜という花と豆の絵は桜さんには言えないが、今では私のお気に入りだ。しかも、この服は、桜さんは街中をこの服で歩くので、このマークは意外と、中級街とかではそれなりの知名度だ。
ただ私のスラム街の人達は、もちろん知らない。
街をぷらぷら歩いていると、突然頭に袋をかぶせられ私は、攫われた。声も出せない。しばらくすると背中に衝撃が走った。
袋を取られると、そこは見慣れたスラム街、その地面に叩きつけられた衝撃だった。
相手は私の服やら下着やら着てる物を売るのが目的みたいだ。今までの私は、どうせ反抗しても痛い目をみるだけ損だ、だけど、この服だけは渡せない。私が無言で睨んでると、一人の男が私のお腹を笑いながら蹴ってきた。何度も殴られ何度も投げられ、私を痛めつけてく。結局この世界はこうなのだ。悔しい。気が付ければ、私はゴミの山に投げられた。せめてもと、アイテムポーチはゴミの山の中に隠す。私の全財産や、貰った装備が全て入っている。今着ている服の換えもあるのだから、こっちのが高いものなのに、見た目安そうなポーチには気にもとめてないようだ。
男の一人が、下衆な笑いを浮かべ、大きな岩を両手で抱えて近づいてくる。やめて、と言っても喜ばすだけだ。私はもうすぐ来る痛みに備えて覚悟を決めた。
意識を取り戻した私はの体が熱い。少しでも体を動かすと、激痛が走る。なのに右膝から下は何も感じない。あぁ、これは死ぬなぁ。結局最後は、桜さんを信じれたのかなぁ。人を信じないって決めたのに、たかだかこんな絵の為に、命捨てるなんて馬鹿みたい。殺したい奴もいたのに。最後は裸でゴミ山に捨てられるのかぁ。あぁ~なんか最後に桜さんに会いたいなぁ。なんでだろ……




