29.5-1 マメリコルの現実
Dランクの冒険者の桜。
やっぱりどこかの貴族なんだろう。
肝心なお金の話も決めず、どうでもいいような質問をしてきた。
しかも5分5分とふっかけたら、即答で、問題ないと言ってきた。
普通、自分より高いランクが7・3程度多く分けるのが基本なのに。まぁ貴族ぽいし、お金には不自由ない生活をしてきたんだろう。ギルドカードもすんなり見せてくれたし、ほんとこの人は危機感がない。ギルドカードなんて、初めて会った人にすんなり見せるものではない。
東門で待ち合わせたあとも、この女の常識知らずには驚いた。
まず、アイテムポーチを持っていること、そのあとはこちらの荷物を渡せと言ってきたので、信用出来ないので断ると、なんとアイテムポーチをこちらに渡してきたのだった。アイテムポーチの事よりも、こいつは自分の呼び名をこだわっていた。この町に来てから、マメリコルなんて呼ばれたことは、一度もない。おい、ガキ、それ、そいつ、こんな感じだ。そもそもスラムで、お互い名前を知っている奴なんていない気がする。でも、名前を呼ばれると、悪い気はしないが、忘れてはいけない事は、この桜という女は、ただの搾取するだけの女だ。
私が、教えてもいない剥ぎ取りのことを知っていて、警戒したがあっさりと、鑑定持ちだと明かしてきた。赤い瞳を隠す事もしてない、様子を見れば、嘘も言ってないと思う。
しかしほんとに世間知らずの、幸せ者と話してるとイライラしてくる。まるで昔の自分を見てるようだ。
洞窟に入っても、スラムの子達に同情の目をむけてる。
まぁだけど、兵士にギルドカードを見せてもらう為に、おとなしくしておこう。
2層に通してもらったことで、気が焦ってしまい、私は滑る足場に足を取られそのまま、下に落ちて気を失った。
私が気がついたときは、桜が巨人に、飛ばされる瞬間だった。
なんだこいつは、今日初めてであった人間を、普通助けるか?私の態度は決して良くはなかっただろう、しかも私のミスで下に落ちたのだ。なのに私を追って、こんな強そうな魔物と戦っている。ついに私の命もここまでか。いや、もしかしたらあの一つ目の巨人が、桜と戦っている時に、私が逃げるくらいの、隙はうまれるかも。私の不自由な足で逃げ切れるかは、わからないが。
だけど、桜が目を瞑り、ブツブツ何か言ってる時に、異変は起きた。魔力を特別感じれない、私の目でも、はっきりと見えるくらい、魔力が具現化できてる。桜を中心から、広がった魔力が私を包むと、久しく感じたことない、安心感に包まれた。気を抜くとなぜか泣いてしまいそうだ。
その後の戦いは、一方的な戦いだった。
桜さんは、世間知らずもあるかもしれないけど、私と違って強さがあったのだ。だからあんなに、危機感がない行動も出来るのだ。
そのあと、剥ぎ取りをしてから採掘をした。剥ぎ取ったあと、桜さんが何か言っていたが、今まで見下していた相手だったから、顔が赤らみ、逃げてしまった。
普段とは比べ物にならないくらいの量が採掘でき、しかも今日はアイテムポーチがあるので、満足のできる収穫だった。ピッケルも強化してもらったのも大きい、今までのボロボロピッケルがこんなに掘れるようになるなんて、嘘みたいだった。
だけど、こんな幸運はもうないだろう。流石に、今日1回きりのパーティーだろうな。こんなチャンスはもう無いと思い、満足いくまで掘っておいた。昨日町についたばっかと言っていたし、今日は簡単なもので様子見をしたかっただけだと思うから。
街に戻り、鉱石を換金したら銀貨8枚銅貨6枚だった。
いつもはよくても、銅貨1枚もあればいい方だ。半分で分けても、とんでもない稼ぎだ。
あとはこれを分けてお別れだね。討伐証明で、報奨金もらって、素材残しておいたほうがいいですよ、とアドバイスをする。なんか上位種で、金貨1枚になったみたいだ。羨ましいな。まぁ討伐したのは、桜さんだけど、そんなに儲かったなら剥ぎ取ったお礼に、銅貨1枚くらい欲しいかな、いや鉱石だけでも、儲かったからしょうがないかなんて考えていたら、銀貨5枚を渡してきた。桜さんは、剥ぎ取り素材も半分と勘違いしてるようだ。断ろうと思ったが、私は桜さんから搾取するために近づいたのだ。そう思うと、顔が赤らみ何も言えなかった。しかもそのあと、まさかの明日のお誘いもあり、まるで夢のようだった。ご飯も誘われたらが、スラムの子供に、ご飯を出してくれるお店なんて悲しいことに、ないんだよね桜さん。
私の家は、スラム街にある。家といっても、目立たないところで寝るだけだ。
私はスラム街に行く前に、今日の稼ぎや、借りているアイテムポーチを隠す。
そうでもしないと、無理やり取られてしまう。私は、鉄貨5枚だけ持ち、スラムへと向かう。
ここには、私達子供が、せっかく洞窟で稼いだお金を、根こそぎ強奪する輩が沢山いる。下手に反抗して、怪我をするだけで、ここでは命取りになるので、見つかったら諦めるしかない。私達スラムの子には、スラムのお店じゃないと物を売ってくれないから、たかだか買い物が命懸けでなのだ。バカバカしい。こんな最底辺の世界でも、格差があるのだから。スラムのご飯と言えば、ほとんど水のようなスープに硬いパンを浸して食べる。こんな粗悪なご飯でも、食べれるだけ幸運だ。2日に1食食べれればいい方だ。今日は無事食べれて、いい日だった。




