27.5 マメリコルの生き方
スラム街に来て早2年、私は理解した。結局どこにいっても力を持つものだけが優遇されるようにこの世は出来ている。力といっても腕力だけじゃなく、地位やお金も含めてだ。スラム街にも、強い弱いがあり、余所者の私は最下層だ。いくら、字の読み書きが出来たり、お金の計算ができてもここでは全く意味を持たない。ましてや、足も不自由な中途半端な私は、常に搾取される側だ。
私の唯一の武器が、冒険者だという事だ。何度も裏切られ、この世で最も嫌悪する人種、冒険者。その私が、唯一縋れるのも冒険者だというのは、笑える話だ。あわよくば、Dランクの冒険者が入ってくれれば、ヒスリ洞窟の2階層まで潜れる。しかし勿論、ギルドでパーティーを募集しても、誰も来てくれる事はない。結局何時も、簡単な採取の依頼があれば、それを受け、無ければヒスリ洞窟まで行くだけだ。今日もそんな1日になるはずだった。
見ない顔の、女1人の冒険者がギルドに入ってきた。一目で一級品と分かる、マントを羽織っている。はぁ〜こんな人には私達の世界なんてまるで縁が無いんだろうな。しかも見ると、殆ど初心者の様だ。きっとどこかの貴族様なのだろう。
暫くして、さっきの女の人が、ボードの前で、依頼を吟味している。あぁ、丁度いい時間だ。あの人が帰ったら、今日もまた1人で、ヒスリ洞窟へ行こう。あの女の人が、ボードを離れ、受付のところにまた行った。しかもよりにもよって、あの、『豪腕のニコル』の所に聞きに行った。元A級冒険者、きっとあんな人と知り合いなら、やっぱり貴族様なんだね。手入れの行き届いた金色の綺麗な髪、きめ細かい肌を見れば、垢まみれの私とは何もかもが違う。しかし、その貴族様は私の前に立ちこう言った。
「はじめまして、桜です。Dランク冒険者ですが、冒険者登録をして初めての依頼なので、分からない事だらけですが、一緒に行きませんか?一応、格闘術と魔法を使うので、前衛もできます!」
これが私の人生の、きっと唯一のチャンスだ。世間知らずの貴族様を搾取する側に回ればいい。
「Dランクで、前衛も出来るんですか?はい!こちらこそよろしくお願いします。」
私は元気よくそう言うと、にっこりと笑った。




