18 アレンの冒険者日誌2
ここからの事は信じられない事ばかりだ。
俺の装備を外した彼女はまず俺を、小屋の中に担ぎ込んだ。そして何かごそごそしたと思うと、俺に薬を振りかけた。なんと!石化が始まった。ま、まさかこいつは魔女なのか。俺はここで死ぬ。そう覚悟した俺に、何やら慌てて、別の薬を振りかける。すると今度は、石化がみるみるうちに、治りだした。魔女じゃなく、神の使いか天使なのか。俺が驚いていると、緑の液体が入った瓶を渡し飲んでくれと言われ、言われるままに飲んだところで俺の意識は眠りの奥底に潜り込んだ。
朝目が覚めた俺は、足に違和感をおぼえ見てみると、何やら水をまとっている。動かそうと思っても、重くて動かない。床で寝てる女の子が俺を逃がさない為かけた束縛魔法の一種かもしれないが、もちろんそんなは魔法は見た事もない魔法だったので詳細は分からない。
目が覚めた彼女は、また緑色の液体が入った瓶を渡す。手に取り、鑑定してみるとそこには、「神聖魔法のエキス レア度 A 」と、出ていた。
なんとまさか、聖女が作るといわれ、勇者達が、上位の龍などを倒す時に持っていくと言われている、神秘の秘薬と同じものをこんなに無造作に渡すなんて、一体何者だ。
その後も、不思議な魔法で体や小屋を浄化したり、ほんの一瞬でボロボロになった安物のショートソードを、魔剣にするなど、信じられない事をいとも簡単にやってのけた。
金色の髪に赤い瞳、赤い瞳は間違いなく魔眼持ちの証だ。さらに、ここの辺では、見ない顔立ちではあるが間違いなく整った顔立ち、そして何よりも見た事のない魔法の数々とその魔力、間違いなくこいつは魔女だ。
私がそう叫ぶと、私の横に一瞬で移動し、なんと光の矢を10本も具現化したのだ。俺はあまり魔法に精通していない。だから最初は、光の唯の初級魔法「光の矢」だと思ったが、文字通り具現化してるだけだ。魔法は出現と同時に、対象物に向かったりその場で爆発するなど現象は様々だが、せいぜい数秒で、魔力は現象を起こした後に、霧散して消えてしまうのが常識だ。結界系の魔法以外で、その場で具現化させるだけなど、規格外の魔力と繊細な魔力操作が、ないと出来ない芸当だ。しかもそれを、10本同時に。
しかし、光属性を使えるという事は、魔女ではないと結論するしかない。勿論相手の力量も考慮してでの話だ。ここで敵対しても、とても敵わない。
俺はすぐに謝ったが、明らかに怒っている。弁明をした所、怒ってはいるが理解はしてくれたみたいだ。こんだけ感情が表に出るのも、魔女や悪い奴ではないと思った理由だ。
バシリスクの事などの事情を話したら、協力してくれる事になったのだが、もう驚く事はないと思ったのだが、この女改めて『サクラ』という女は、なんとアイテムボックスまでも作り出したのだ。王国が管理する、王宮錬金術師を数十人と集め、さらに王宮魔術師数十人、それも何日もかけて作るのが、いわゆる、アイテムバッグと言われるものだ。それより下のアイテムポーチなどは、たまに迷宮で出現する宝箱の中に入っていたりするが、それでもかなり貴重だ。
しかし、腕輪型のアイテムボックスとなると、もは神話に出てくる話だ。しかし先程から、サクラが使ってる魔法は、大昔に滅んだと言われている、万能神アポネシア様がいた頃の神話に出てくる魔法にそっくりな気がする。まさか、アポネシア様の生まれ変わりや、神の使い何て事は無いだろうけど、そう言われたら信じてしまうレベルだ。
サクラに魔力を持たせてもらった靴のおかげもあり、戦士型の俺がきっと魔術型のサクラに身体能力で負ける事は無いと思い、付いて来いなんと偉そうに言ったが、サクラの速さ、スタミナに全くついていけず驚いた。しかも、魔物の首を次々に飛ばしながら、移動してるのにスピードが落ちる気配も無い。魔法も、詠唱してる素振りも見せず、発動してる気がする。本当に驚くばかりで、自分がこの日誌を読み返しても信じない内容ばかりだ。
村につき二手に分かれた後、村人を救出した後合流した直後に、バシリスクが現れた。避難し遅れた村人は、自然と俺達の後ろへと逃げてきた。サクラは任せろというがとても一人ではさすがに敵わないと思っていた。サクラ上空に出した光る玉からでる、光を浴びると、怪我も癒え、体力までも回復してる。村人達は、天使様じゃなど、色々な声をあげてたが、皆いい評価だったし、絶望的な空気が、少し希望がでてきた雰囲気になった。
サクラが、高速で移動したと思うと、何かを投げて、激しい衝突音が聞こえたと思った時には、すでにバシリスクは倒れ明らかに、息絶えてた。サクラは勿論、俺や村人までも、キョトンとしてる。その後サクラは休憩しに行き、俺は村人達に手伝ってもらい、サクラが村で倒した魔物の、解体をした。村人達も最初は、サクラについて戸惑っていたが、癒しの光を受けたもの達は、もはやサクラの事を神の使いを見るような目になっており、建物の中に逃げた人達に、サクラの活躍を自慢気に語る姿がチラホラ見えた。宴が始まる頃には、村人全員から歓迎の輪の中心にいた。
今日の酒は格別うまい。
夏の月 7日




