四月一日は俺の嘘
「エイプリルフールは昨日だよ!!」
「……知るか」
「ねぇねぇ!!」
「ん?」
「エイプリルフールってさぁ、あたし、昔、リンゴがいっぱい降ってきて満足する日だと思ってたんだよ!!」
「は? 急に何言っとるん?」
「エイプリルフール! フール 降る FULL……」
「フールにエコーつけるな!」
「あ、そうそう。フールって、ほんとは馬鹿!! って意味らしいよ!」
「馬鹿がお前や」
「日本語おかしいよ! 変に断定しないでよ! せめて疑問にしてよぉ!!」
「で、リンゴ降ってきたことあるんか?」
「あるよ。毎年、お母さんが、エイプリルフール!! って叫びながらお父さんにリンゴ投げつけてたよ!」
「お母さんストレス溜まりすぎやろ……」
「……で、なんで、今日投稿するの?」
「時間なかってんって!!」
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とある予備校に変な恰好をしたやつが入って来た。
「おい、○○! なんや、その服装!?」
驚いた友人がそいつに声をかけた。
「いやぁ……」
そいつは、苦笑しながら答えた。
そいつの服装は上から、GAPのキャップ、白と青のストライプのセーター、赤と白のチェックの短パン、純白のロングソックス、ナイキの黒い靴。
「いやぁ、実はさぁ、昨日、家帰れんくてさ……」
「そうなん?」
「うん。でも2日おんなじ服着るん嫌やん?」
「お、おん……」
「だから、予備校行く前に古着屋行って、そろえてきたんよ」
「いや、そうは言っても、そのセンスは無いやろ……」
「いや、これさぁ……」
そいつは、セーターを引っ張りながら言った。
「洗濯してそんなに時間たってない服を選んでもらってんよ。匂いがあったら嫌やからさ……」
「あぁ……」
「そ。で、選ばれた服がこれやねん!」
「そりゃ、大変やったな」
「……」
「どした?」
「まぁ、嘘やけどな」
「は?」
「いや、古着屋行ったとか、全部嘘やけどな(笑)」
そいつは、ニヤニヤして答えた。
「は? 意味分からんねんけど? なんで?」
「いや、今日って、そーいう日やん?」
「?」
「エイプリルフール(・∀・)」
そいつは、キメ顔でそういった。
「っつ……斧乃木やめい!!」
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麗らかな春の日差しがブラインドの隙間から入り込む。
友人が部屋を去り、1人残されたファッショナヴォーなそいつは、しかし、まだ嘘をついていた。
(まさか、これがアイツからのプレゼントとか言えるわけない・・・)
ファッショナヴォーなそいつは、今日、満面の笑みで玄関の前に立っていた彼女の顔を思い出していた。
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「はい。プレゼント! 誕生日おくれてもたけど、ごめんね」
少し上目づかいでみつめる彼女。いつもより、愛らしく感じる。
「お、おん。ありがとうな」
「うん!!」
「せっかく一式、選んだんだから、今日これ着ていってよね!!」
部屋に入ってくる彼女。きょろきょろとあたりを見渡している。
「ほら! 開けてみてよ~!!」
「お、おん」
俺は紙袋を広げ……
しかし、そこにはカオスが広がっていた。
(ニヤリ)
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彼女の押しに負けて、そいつは、カオスを身にまとって予備校に来たわけだが、そいつはまだ気づいていなかった。
実は彼女、エイプリルフールのつもりでプレゼントしたのだ。
冗談だったのだ。
しかし、そいつは、真に受けてしまった。
受け取ったプレゼントに、戸惑いつつも、彼女がいつもよりニマニマしていることに気付けなかった。
そいつもエイプリルフールをネタにその恰好を誤魔化したのは確かだ。
しかし、そいつは、彼女を疑うことなんてできなかった。
ほら! 恋は盲目とか言うじゃないか!!
……なんてご都合主義なんだろう。
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部屋には誰もいない。
予備校に出て行った部屋の主を迎えるものは何もない、そう思えた。
しかし、その部屋をよく観察すると、枕もとから、おもちゃの兵隊たちが顔をのぞかせている事に気が付いただろう。
兵隊たちがプリントされた袋の中には、いつも彼が欲しがっていた腕時計が入っている。
彼女が、今朝、隙を見つけて、そっと隠していたのだ。
しかし、そんなこと、彼女以外誰も知らない。
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(ニヤニヤ)
という物語を、4月1日、とある予備校の休憩室で考えている男がいた。
(こんなんが、俺の記念すべき小説第一号になったら泣けるな~~)
(まぁ、泣かんけど)
(ほんま、嘘をつくのは、ほどほどにやな! っと……)
(さぁ、やるか!!)
その男は立ち上がり、自習室へと向かった。