祐介再び
着信音が鳴ったばかりだというのに
愛花の携帯はそれ以降圏外状態であった。
「ごめん、これ着信音じゃなくて、アタシの
仕事のタイマーなの。次のお客さんにところへ
向かうためのね」
愛花は携帯をいじりながら暗い表情でつぶやいた。
「そもそもアンタなんで添い寝嬢なんて…?
こういう仕事って危険が多いだろ?」
「別にアタシなんてどうなってもいいし。
ってかそんな悠長な会話している場合じゃないし」
「ま、まあそうだけど…」
すると突然アナウンスが入った。
『ツトムどうだい?自分の家を乗っ取られた感想は?』
「ゆ、祐介!?どこにいるんだ?!」
『ふふふふ、今教えてあげるよ。そろそろ解放させてあげようかな?』
「頼む!もうやめてくれ!どうしてこんなことをするんだ?!」
『君が僕の父親を馬鹿にしたからだよ。確かにうちは君の家とは
違い、生活保護を受けていて貧乏だ、でも両親は一生懸命生きている。
それなのに君は僕のうつ病の父親のことを甘えていると言ったね?』
「そ、それだけのことでこんなことを?」
『僕にとってはものすごく憤慨せざるをえない言葉だったんだよ』
「わかったよ、わかった!謝るよ!謝るから頼むから元に戻してくれ!」
『よし、じゃあ僕の言うとおりに動くんだ。とりあえず屋上に
上がってもらう』
「屋上なんて出来たのか?」
『ああ、携帯住宅のリフォーム機能は本当に素晴らしいね』
僕と愛花は祐介の言うとおりに迷路のようになった家の中を進んだ。