パニックハウス
目の前に突然現れた美少女、愛花は言った。
「タブレットの癒しパネルで『女子高生』
『添い寝』『茶髪』『ロングヘアー』『Dカップ』
をお選びになり、アタシの写真で注文されたために
来たのですが、写真とイメージが違いますか?
もし違うようなら再度タブレットで別の女の子を…」
「そうじゃない!僕は信頼していた友人にタブレットを
盗まれたんだ!そいつがいたずらして君がやってきたんだ!」
「そうなんですか?!タブレットが盗まれたら大変なことが
いろいろと起こりますよ!」
「だからさっきから次々と大変な目に遭っているんだ!
そういうわけだから君はもう帰ってもいいよ!」
「いえ、そういうわけにはいきません。タブレットで
別の女の子を選ぶかキャンセルボタンを押してもらわない
限り二時間はいなければいけないことになっていますので」
「はあ?!」
「これもなにかの縁ですし、とりあえず添い寝サービスを…」
「添い寝している暇じゃねえんだよ!」
その時、いきなり家中が揺れ始めた。
「地震か?!」
すると家中にロボットのような音声が鳴り響いた。
「タブレット操作ニヨリ『イメチェン&スーパーリフォーム』
ガ選択サレマシタ。家中ノ家具ガ移動サレタリ部屋ノ面積ガ
大幅ニ変ワリマスノデ危険デス。一分以内ニ家ノ外ニ出テクダサイ」
「大変よ!家の中の構造とか環境とかイメージを変えるボタン
が押されたのよ!」
「あの野郎!とにかくすぐに外に…」
しかし玄関が開かない。
「ねえ、タブレットはどこの会社との契約?!」
「い、いや親父が契約したからすべては親父に
聞かないとわからない、でも家電も携帯もタブレット
操作で使えなくされているんだ」
「じゃあ、アタシのを使いましょ!お父さんの電話番号は?」
「電話帳はみんな携帯のデータの中にあるから携帯が
使えないとわからないよ!」
「わかったわ、じゃあアタシが知り合いのタブレット会社に
勤めている人に電話してみる」
頼もしくテキパキと行動する愛花だったが、
「時間デス、只今ヨリ『イメチェン&スーパーリフォーム』
ヲ開始シマス」
次の瞬間、廊下の奥からものすごいスピードで寝室のタンス類が
台車のようなものに乗せられて二人の目の前を通り過ぎた。
「あぶねえ!」
そして次の瞬間には二人の立っている床が開き、地下への
階段が現れた。
「きゃあ!!」
階段を転げ落ちそうになった愛花の腕を思わずつかむ。
「携帯が!」
携帯は階段の下に落ちていったが、階段自体がとてつもなく
深い地下まで続いているようで、妙にエコーの効いたような
カツーンという音がした。
「取りに行かなきゃ!」
二人で階段を下りていくも真っ暗闇の上、下の方で
壁という壁がガーガーと動いているのがわかる。
「だめだ!危険だ!この家は今リフォーム中なんだ。
ヘタをしたら壁同士に挟まれて大怪我してしまう!」
僕と愛花は再び階段をのぼる。
廊下に出て二人共唖然とした。
玄関は完全になくなり、廊下は二倍の広さになり、
宮殿のような豪華な廊下になっていたのだ。
「どうしてアタシこんなことに巻き込まれているの?!
添い寝しに来ただけなのに!」
「恨むなら僕の友人を恨め!」