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七話  新たな嫁?


ベルフェゴールと呼ばれた金髪の青年はポケットから両手を抜くと、右耳に付けたシルバーピアスを。ベルゼブブと呼ばれた黒髪の少年は黒のチョーカーをぞれ外した。魁斗同様、赤錆色のオーラが二人の体を飲み込み、姿が見えなくなる。


「ベルゼ、喰えそうか?」


「流石に大きいね。7割…いや半分に出来る?」


「そのぐらい、釣りが出る」


オーラが晴れたそこには二匹の<悪魔>がいた。金髪はそのままだが、青紫色に変色した肌に鋭く尖った歯と爪。黄色い瞳はギラリと怪しく光り、腰のあたりから伸びた牛の尻尾はユラユラと意識を持っているかのように揺れ動く。もう一匹の黒髪の方は全身を艶のある紫に光るの外骨格が覆い、顔は虫の持つ赤い大きな目玉に額から伸びて垂れ下がる触覚、口の辺りからは二本の牙が伸びギチギチと動く。


 

「Gravis labor,sumpserat.Ego statim finis lectum ire in domum suam(厄介な仕事を受けちまった。さっさと終わらせて寝るぞ)」


酷く枯れた老人のような声でつぶやくと、左手を魔力に向け一言「pigritia(怠惰)」と声を上げた。たったそれだけで、一気に減少し魔力の刃が半減した。怠惰によって堕落したかのように…


「Hui,Et praecidi paulo.An menti stabit?(やれやれ、削り過ぎだよ。僕を満足させる位は残っているかな?)」


幼さのある無邪気な声と共に虫のような悪魔が、青紫の悪魔の前に立ち「gula(暴食)」とつぶやくと腹の真ん中が裂けて非常にグロテスクな口が現れる。そして、魔力の刃を剃刀状の歯が並ぶ大口で受け止めるとバリバリと噛み砕き、飲み込んでいく。その光景に薫里と麗佳は目を見開いた。突然現れた二人の男にも驚いたが、姿を変え魁斗の本気の一撃をあっさりと受け止めた姿は驚きよりもむしろ恐怖だ。普通ではあり得ない……魁斗や凱、自分達とも違う異質の力。


「ベルフェゴールにベルゼブブ……やっぱり…」


「麗佳、言いたいことはわかるがそんな事はあり得ない。<ペオル山の主神>に<ハエの王>を呼び出すなど、人に出来る事でわないのだぞ。しかも、アケーディアとグーラは七つの大罪の怠惰に暴食を意味する呼び名、それが本当なら恋は……」


「間違いなく残りの五つ。傲慢、憤怒、嫉妬、強欲、色欲を持っていると考えてもいい。でも、それは禁忌のハズ。人が使役するには、あまりにも有名過ぎる」


「堕ちた大天使長<ルキフェル>、魔界の支配者<イーラ>、地獄の海軍提督<インウィディア>、富と財の王<アウァーリティア>、剣の王<ルクスリア>。そしてハエの王<グーラ>、ペオル山の主神<アケーディア>。七つ大罪……人間を罪悪に導く要因たりえる感情や特性、欲望と考えられ、それを司る悪魔を呼び出すなど考えられない。普通なら感情を引きずり込まれて終わりだぞ」


最後の一欠片を咀嚼し終え、飲み込む姿を気を張りながら見守る。ベルゼブブは暴食を司る悪魔。権力と邪悪さでサタンに次ぐと言われ、実力ではサタンを凌ぐとも言われる魔王である。人間の力では、制御はおろか召喚自体が不可能なほど強大なのだ。もし、奴が暴走すれば世界の終わりを招きかねない。いざという時の為いつでも魔聖具を展開できるように神経を集中させるが……


「ふう、ご馳走様。中々イイ味の魔力を持ってるね」


「終わったんならさっさと帰るぞ。こっちの世界は面倒な事しかねぇからな」


二匹はすぐに元の人間の姿に戻ると、再び鉄片と飾り角になった。どうやらあまり人間界こちらには興味が無いらしい。魔力を使いすぎてその場に座り込みそうになった恋を二人がかりで支えるが、力が入らないようで泥のように重い。こんなになるまで魔力を消費するなんて……。


「恋!大丈夫か!!」


動ける程度に回復した凱が恋に駆け寄る。自分もさっきまで魔力切れ起こしたのに、元気なものだ。それだけ妹が大切なのだろうが……。


「うるさい、バカ兄貴。少しは配分考えてやりなさいよ。疲れるからあんまり使いたくないんだからね、アレ」


「それよりも大丈夫なのか。対価は…」


「大丈夫。アケーディアは対価をもらうのもメンドクサイって言ってるし、グーラは美味しいものをお腹いっぱい食べれたからいいって」


「やはり、恋は契約しているのか」


「うん。僕の魔聖具は召喚系で、契約してるのは悪魔だよ。しかも、七つの大罪とね」


「すごいでしょう」と、おどけた顔で舌を出す。止めてくれ、悲しそうな目をしてるのに上辺だけで取り繕うとしないでくれ。禁忌とされている悪魔との契約をしている位で気にはしない。だから、そんな顔をしないでくれ


「何がスゲェんだよ。時間制限付きで化け物呼んだくれぇでいい気になんじゃねぇよ。威張んならキリストの旦那でも呼んでからにしろ」


鬼刄丸を肩に担いだ魁斗が頭を掻きながら近づいて来た。ぶっきらぼうな彼らしい一言と共に……。


「っえ……なに言ってるの?悪魔だよア・ク・マ。普通拒絶したりするものじゃないの?」


声を震わせ耳でもおかしくなったんじゃないかと聞き直す恋。今にも溢れそう程の涙を瞳に溜め、聞き間違いであってくれと訴えかける。


「あ?だからどうした。その程度気にしねぇし、驚くとでも思ってんのか?」


「いや、驚くとかそんなんじゃなくて…。気持ち悪くないの?僕は禁忌にされてる悪魔との契約をしているんだよ。それもかなり有名なものと」


「気持ち悪いもなにも、禁忌だからってなんか問題あんのか?」


「大有なんだけどね。普通は…」


「俺には関係ねぇな。そもそも禁忌っつてもどうせ上の呆けた爺共が勝手に言ってるだけだろ。無視しとけばいいんだよあんなの。どうせ碌に仕事もせずに、高い給料毟り取っていくだけの存在だからな」


「やけに詳しいんだね。ホント、魁ッチは分からないよ」


少し回復したのであろう。自力で危なげながらも立つと魁斗と向かい合う。180を超える魁斗と比べると、150もない恋は胸ほどの高さしかなく完全に見上げる形になったが、気の強そうな視線で魁斗を見極めるようにみつめた。


「なんだ…」


メンドクさ気に首を曲げ見下ろす魁斗。すると恋は肩に手を掛け、背伸びをすると………


………チュッ……


「っえ!!」


「っな!!」


「ちょっと待て!!」


「…何のつもりだ……」


背伸びしても足りず唇に触れる程度。それもすぐに逃げられほんの一瞬だが確かに重なった自分の唇を指で愛おしそうになぞる。頬を赤く染める姿は恋する乙女、同じ男に落とされた少女達はすぐに思った。またか、また女を落としたのか、この天然タラシめ。まあ、私もその一人なのだけれども×2。


「決めた。魁ッチ、僕のものになって」


「な!こんな男と付き合うなんて、お兄ちゃんは許しません!!!」


「兄貴は黙ってて!」


「はい…」


一発KOされる長谷川兄。ダメージ受けたら小さく縮むって、どこのマ○オだよ。


「魁斗は渡さんぞ!正妻は私だ!!」


「そして寝取るのは私。恋に出る幕はない。諦めるのを進める」


おい、お前らは何勝手に決めてやがる。しかも、なんで今日初めて会ったのにそこまで話を大きくできるんだよ。人生計画はキチンと考える必要があるんだぞ


「やだよ。僕の醜いこの力を見ても気にしないって言ってくれたんだ。それに僕のファーストキスを捧げたんだし、このまま娶ってもらわないと。責任、取ってくれるよね」


「ふざけるな!!次から次へと湧きおって、ここで切り捨ててくれる!!!」


「同じく。いい機会、ここで私が最も魁斗に相応しいことを証明する」


「僕が召喚だけだと思ってるなら、後悔させてあげる」


三人が距離をとる。


「「「instruere」」」


再び展開された魔聖具。魁斗は二度も斬り落とされた首をさすりながら、大人しく撤退……


「逃がさんぞ、魁斗。俺はお前の事を義弟おとうとなどと呼んでたまるか!!」


「ならさっさと妹を止めろよ!!」


「リア充には神の鉄槌を!!!!!!!!」


「訳の分からん宗教に毒されてんじゃねぇ!!俺の背中にはお前ら兄妹の運命が乗ってるんじゃなかったのか!!!!」


「妹を寝取られる運命なんぞクソくらえだ!!そんな明日は俺が潰す!!!」


「寝取ってねぇよ!!大体、あんなちんちくりんが恋愛対象になるわけねぇだろうが!せめてJSからJCに成長してからにしろ!!!」


「それはマイエンジェルに対する侮辱と判断するぞ。死ぬ覚悟は出来てんだろうな!!!!!!!!!」


「………妹さん最高です(棒読み)」


「黙れこのロリコンが!!!!!屑が移る!!妹に害を及ぼす変態が!!!!」


「どっちにしろキレんのかよ!!このシスコン!!!!」


「シスコンじゃない!!!お兄ちゃんはただ妹に近づく害虫を駆除するだけだ」


「それを世間一般にシスコンって言うんだよ!!!!」


「喧しい!!兎に角お前は殺す!お前のような自動フラグ製作機に妹をやれるか!!!」


「うるせぇ!!!さっきの続きだ!!肉片すら残してやんねぇぞ!!!!!!」


「ハッ!!言ってな!!!メスの刺さりまくった現代アートにしてやるよ」


「「instruere」」


……………………………………………


……………………………


………………


今日も平和だねぇ~(遠い目)









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