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六話  模擬戦

「そういえば凱の魔聖具は、回復系のものだが恋は何系統に分類されるのだ」


「気になる」


食後の紅茶(俺だけブラックコーヒー。あんな甘ったるい液体を飲む奴の気がしれない)で雑談している時に薫里がいきなり話題を変えてきた。どうすれば、たい焼きを頭から喰うかそれとも尻尾から喰うか?から魔聖具に飛ぶんだ?ああ、もちろん凱がしっかりと妊娠について説明したお蔭で麗佳の誤解は解けている。


あ?昼メシはどうしたかって?………疲れた。メシ喰うだけであそこまで精神すり減らすとはな。考えてもみろよ、薫里と麗佳に板挟みされアーンだの口移しだのを悪ノリで強要されるんだぞ。断れば魔聖具突き付けられ、せめて口移しは止めてくれというと涙目になるんだぞ。長谷川兄妹ニヤニヤしやがって何度

ブチ殺そうになったか…兄の方は後でコロスが。まあ、味は悪くなくうまかったな、以外にも麗佳が洋食だったのに驚いたが。後はあれだ、二人の弁当の内容に驚いたくらいだ。なんで弁当に伊勢海老やらローストビーフが普通に入ってんだよ。俺のご馳走牛タン塩弁当(特売時340円)が貧相に感じられた。


「あっ、それなら一度みんなで魔聖具を展開してみない?ボク遠目でしかレイレイとかおりんの魔聖具見たことないし、魁ッチのなんて見た事すらないんだし」


「まあ、いいだろう。あと魁ッチは止めろ。殺すぞ!!」


「諦めろ。恋は昔からこうゆう奴だ」


「くそったれが……」


「では、やるとするか」


「「「「「instruere(展開)」」」」」


鉄黒、スカーレット、シアン、コバルトグリーン、赤錆。五色のオーラと共にそれぞれの魔聖具が展開された。


魅劫不滅之神鬼刄丸みごうふめつのしんきじんまる


焔乃大巫女犹守ほむらのおおみこいずもり


蒼冰丸国重そうひょうまるくにしげ


治療具霊芝ちりょうぐれいし


破滅拷問具切切鮫はめつごうもんぐきりきりさめ


魔聖具は自己の持つ起源によって生み出される為、様々な形状を持ち刀剣類が多く存在するが中には銃火器や防具、装飾品なんかあるとは聞いていたが。


「おい長谷川兄お前のそれって……」


「俺は医者なんでな。似合ってるだろ」


手の平にしっくりと馴染む程度の大きさのメスが握られていた。しかも殆どがグリップで出来ており、実際に切断能力を持ってるのは先端の2㎝ぐらいだろう。


「なんとまあ、見事に医療具だな」


「<実戦じゃあ、後方の救護兵にしかなれねぇな>って言いてえだろ」


「違うのか?」


「兄貴はスゴいよ。だって回復系の魔聖具なのに中学の演習だと護衛なしで前線に立つ処か、一番たくさん倒してたもんね」


幅の厚の1m程大鉈を手で弄びなが何処か自慢げ言う恋。


「兄貴の魔聖具は、回復系の中でも珍しい増殖系タイプでね。下は元素、上は物質まで実物さえあれば大抵の物は量産できるんだよ。すごいでしょ♪」


「?それは、すごいのか?いくら増やしても使える数には限りがあるだろう」


「まあ、見した方が早いか。魁斗、今から俺と模擬戦してくれねぇ」


「ん?俺と殺ろうってか?泣かすぞ」


「あぁん!吠え面かかしてやるぜ」


「(イラッ)上等だゴラァ!!手足吹っ飛んでも後悔すんなよ」


「(ブチッ)ハンッ!胴体にサヨナラ言っときな。次は繋げてやんねぇぞ」


「「上等だ表ぇ出ろ!!!!」」


<男のサガ…その1、売られた喧嘩っぽいのは取り敢えず買う>


互いの魔聖具をぶつけ合う。大剣とメス。魁斗の大剣が大きすぎて凱のメスが余計に小さく見えた。小さな火花を散らし、二人の距離が開いた。………始まる。


「逝け!」


挨拶替わりにメスを投擲してくる。中々いい狙いで投げてくるが、視界の内に入っている限り何本投げようがあたらねぇよ。眉間を狙ったそれを首を傾けるだけで回避する。


「痛ッ!どうなってやがる」


完全に回避したにも関わらず、頬の皮膚がパックリと裂けた。熱く燃えるような痛みを確認する暇もなく、量産されたメスが次々に飛んでくる。地面刺さるメスは石だろうが、木だろうが関係なしに突き刺さっていく。当然、すべてを回避する…にもかかわらず、触れていないハズの肉が抉られていく。大剣で防げば確実なのだろうが、そんな事をすればサボテンに早変わりしちまう。


「クソが、医者が治療具を粗末に扱ってんじゃねぇぞ!」


「今時メスは使い捨てが当たり前なんでな。どうしたよ、そのバカデカい剣はハリボテか?」


「ぶち殺す!!」


「上等!!」


大剣に俺の振動系の魔力を流し込み、ぶん回す。超振動した空気の刃がチェーンソーのように凱に迫るが跳んだ事で避けられ、7m先にある木を両断するに終わった。次はこっちだというようにパン!と、空中で手を叩いた。俺を閉じ込めるように半球体状に百近い量のメスが現れる。しかもキチンと並べられたそれ極細のワイヤーでつながれているらしく、凱が腕を振っただけで一斉に襲い掛かってきた。


「メス千本のサボテンになりな!!」


勝ち誇った顔の凱に無性に腹が立つ。どう考えても千本もねぇだろうが!もう少し、まともなセリフをほざきやがれ!!


<男のサガ…その2、どうでもいい事に細かい。その3、中二病患者はなぜか中二病患者に対抗心を持つ>


首、目、口、こめかみ、心臓、肺、肝臓、腎臓、睾丸。九ヶ所の急所のどれかに当たればお陀仏。全部防いだところで、腕なに足をやられると二射撃目で防ぎきれずにお陀仏。回避も避けたところでさっき同様、当たっていないハズなのに肉抉られて血だるま確実。普通なら八方塞がり……ってか。


「英雄を舐めんじゃねぇぞ!!」


舞い上がった砂煙の中から、俺の怒声が中庭に響きわたった。






            ☆★☆★






「兄貴のバカ!死んじゃったよ絶対!!なんで集団用の技を個人に使ってんの!バラバラ処の騒ぎじゃないよ」


戦いから避難し、中庭の外へ行っていた。恋は兄の暴走気味に頭を抱えていた。オーバーキルもいいところである。いくら魁ッチのGが高いからって、イコール戦闘力があるわけでもないし。ましてや兄貴の力は中学でも敵なしなのだ。少しは加減するだろうと勝手に思っていたが……


「どうすんのよ。流石に死んだ人間は生き返らないよ」


「大丈夫だ。魁斗はあの程度では死なないさ」


「問題ない。私の夫が負けるハズ無い」


「わ・た・し・の・だ!!もう両親に会う約束も済ませている。あとは、魁斗が18になって式を挙げるだけだ」


「む、まだ決まってない。魁斗が18になるまでに私が口説き落とす」


「私が正妻だ!!」


「寝取れば問題ない」


「シアアアアャャャャャ!!」


「グルルルウウウゥゥゥ!!」


「呑気だねそこ!!少しは心配ってものを」


低レベル以前に、今アンタらの旦那死に掛けてるからね。多分全身ミンチになってるからね!猫や犬みたいな威嚇する前に助けにいけよ!!


「たく、危ねぇだろうが!今の俺じゃなかったら、間違えなく死んでただろう」


「えっ?」


嘘でしょ、どうして無傷なの?いやそれ以前に、何なのそのオーラ!体から噴き出したるじゃない。一体どれだけの魔力が体の中で渦巻いてるってゆうのよ!もう何処か体か分かったものじゃない。鉄黒いそれから覗く瞳は血のように赫く、握られた大剣も鉄黒に染まった。


「おいおい、マジかよ。今の喰らって無傷とか、どこのピグザムだよ」


着地し頬を引きつらせながら苦笑い兄貴の気持ちも良くわかる。理不尽というべきか、才能の差というべきか。根本的な所からして違う。今のは努力でどうこう出来るものでわない。あれは天武の才による圧倒的なものだ。


「加減はしねぇ。うまく避けろよ……猛進する大地アーストゥエイラン


地面に刀身を突き刺すと刀を神速で地面をえぐる様に勢いよく振りぬいた。刃先から超高密度の魔力の斬撃を巨大化させて飛ばし、必殺の一撃が兄貴に迫る。地面を割りながら来る鉄黒い魔力の塊を前にしても、兄貴は逃げるどころか笑みを浮かべた。


「ヤッベェ、魔力を使い過ぎちまった。……体…動かねぇや」


あのバカ兄貴!!なにやってるのよ!


「!?instruere!」


すぐに切切鮫を展開する。あれだけの質量を止め切れるか分からないけど、やるしかない。鉈の刃の側面が外れ二枚の剃刀状の薄い刃と柄頭の飾りの角を取り外し、兄貴に向かって投げた。


Gulaグーラ)Acediaアケーディアお願い」


「任せて!!」


「メンドクセ」


刃は背中からドクロマークのある羽を生やした黒髪の少年に、角はねじれた二本の角を生やした金髪の青年へと変わり凱を守るように姿を変え現れた。


「お前ら…」


「話しは後だ。俺はのんびり静かに過ごしたいでな。あんたに死なれるとじゃじゃ馬が五月蠅そうなんでな、助けてやる」


「相変わらずツンデレだね、ベル♪」


「ウッセェぞベルゼ。さっさと終わらせるぞ」


「りょ~か~い」


「「外部接続」」


急激に魔力を吸い取られていく。仕方ないとはいえ、流石に2人同時はきつ過ぎるみたい。


「「完了。制限時間75秒だ(だよ)」」


「それだけ持てば十分!2人ともお願い!!」


「pigritia(怠惰)」


「gula(暴食)」


お願い、何とか耐えて。虚脱感に倒れそうになりながらも踏ん張りをきかせたえる。兄貴絶対に守るからね!僕は兄貴みたいに強くないけど、せめて兄貴を支えられる女だって証明するよ。


「上位命令を下す!ベルフェゴール、ベルゼブブ。第三制約までの解放を許可、全力をもって長谷川凱の守護に徹せよ!!」


さあ、本番はここからだよ













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