三話 測定
入学式にも使われた講堂には、十ヶ所程のブースに分けられパッと見では、何が何だかさっぱりわからないような大型の機械がずらりとならんでいた。
「ハイ注目、自己紹介がまだだったわね。私は生徒会長の時師査時雨。今日一日、貴方たちの面倒を見るようにいわれているわ。今から皆には魔力測定をしてもらうわ。機械を使ってG測った後、タイプによる補正を加える訳だけど……。こう言っては悪いけどこの時点でほとんど進路が決まってしまうからそのつもりで。クラスは特別組のS、研究組のA、進学組のB、上就職組のC、下就職組のDの四つに分けられるけど、Sはクラス内序列もつけられるからそのつもりで。…何か質問はある?ないならそうね、そこのイチャついてた彼女からいこうかしら」
「は、はい」
いきなりの指名に驚き声が裏返り、顔を真っ赤にしていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。何なら彼氏に先に行ってもらう?」
「っな!魁斗とはそんな関係じゃありません!!」
「え~、ホントかなぁ~。どうする彼氏、フラれちゃったよ」
「いいからさっさとやってやれよ。それ以上いじると本当に実力だせなくなるぞ」
「緊張をほぐしてあげたんでしょ。始めましょうか、測定器の上に両手を置いてくれる」
「わ、わかりました」
…緊張しすぎだろ。ガチガチになった薫里は、恐る恐る測定器の上に両手を置いた。震えてるぞコイツ。
「それじゃあ魔力を解放してくれる?」
軽く頷いた薫里の周囲に火柱が何本もあがった。天井に届かんとばかり伸びる炎に「おぉ~」と、外野は感嘆の声を上げた。
「もういいわよ。どうやら火焔系のタイプのようね。G108、火焔系タイプの補正が5%だから…。おめでとうSクラスよ。序列は20って所かしら」
「えっ…それは高い方なのですか?」
「そうねぇ、まだ出揃ってないから何とも言えないけど例年通りなら20人強って所だから、クラス内なら平均より下ってことになるわね。まあ、Sクラスなこと自体凄いんだけど」
「む、もう一度いいですか」
「御免なさい。測定は一度きりって決まりがあるの。次の期末試験でもっと好成績を出すように頑張ってね」
結果に満足しないのであろう薫里は随分と途方に暮れた顔で振り返ってきた。だから、んな顔で俺を見るんじゃねぇ。
「よく頑張ったな、お疲れさん」
取り敢えず頭を撫でといてやる。嫌がるかと思ったのだが、以外にも大人しくしている処か目を細め気持ちよさそうにしている。まるで猫だなコイツないは…。ゾクリ、と背筋が冷える。しまったまたクラスの連中の視線にさらされ……たにしては随分物理的に寒いんだが…
「おい、寒くないか?」
「確かに急に冷えてきたな」
「誰だよ冷房の温度下げた奴……アイツか」
俺を含め全員の視線がその一点に集中していた。測定器に両手を当てている少女の周りには、冷気が立ち込め白い靄に包まれていた。寒いどころの騒ぎでは済まない。まるでドライアイスのようだ。しかも、まだまだ余裕がある。しばらくは、加減をしていたようだが微妙な力でコントロールしていたのが崩れたのだろう。足元、正確には講堂の床は霜で覆われ測定器は完全に氷ついていた。確かG150までならビクともしない設計されてなかったアレ。
「七野瀬麗佳さん。G186、氷結タイプ補正5%現段階序列1位」
「おい、マジかよ」「学園最強クラスじゃないのか?」「私、あんなの初めて見た」次々と拍手を送る生徒に対して七野瀬と呼ばれた少女はどこか不満げな表情を浮かべると人混みの中へといえていった。
「なんて人だ。あそこまでのGをもつなんて…。すまん魁斗少し離れる。結果はちゃんと教えてくれ」
言い終わるや否や小走りで人混みの中に突撃していった。向上心の高い奴だろうから現トップには興味があるんだろう。それにしてもあの野郎、俺の母さんかよ…。まあいいか、どうせ隠せるもんでもないし派手にやってやるか。
「次、彼氏くん。キミだよ」
「あぁ、分かった。下がってろ先輩、危ねぇぞ」
「何、七野瀬さん並のGでも持ってるの?」
「まあ、見ればわかる」
測定器に両手を置くと本気の七割程度の力で解放した。……頼むからこの程度壊れてくれるなよ。…講堂……。
☆★☆★
まるで巨大な地震が凝縮されているようだった。揺れが収まった時には近くにいた私処か、一人を除く全員が床に座り込んでいた。頑丈に固定されていたハズの機械類はひっくり返され、窓ガラスは無惨にも粉々砕け散ってしまっていた。測定器は見事に床に埋もれ、それをやった男はバツの悪いをして頬を掻いていた。
「うそでしょ」
「か……魁斗のGって」
なんとか無事な正面の大型スクリーンに彼の数値が写し出された。そこに書かれている内容を理解するのに数秒を必要とした。周りの人も同じらしい、しばらくモニターの顔写真と本人を見比べた後絶叫に近い叫び声を上げた。
「「「「「「「「「「G、INCOMPREHENSIBILIS(測定不能)!!!!!」」」」」」」」」
そんな馬鹿な!過去の最高のG保持者、アイザックですらG238という測定可能な範囲内に対して300オーバーをして測定不能までいくなんて…
「七割でも振り切っちまったか、高すぎるのも考えものだな不便すぎる」
「待て魁斗。お前、アレで加減していたのか!?」
「当たり前だ。本気なんて出してみろ、講堂処か学園の半分が崩れちまうぞ」
「すごい、本当にいたんだ。英雄になる資格を持つ者が…」
「おい七野瀬……だったよな。なんのフラグかは知らんが、んな中二病的な称号はいらんぞ」
「?…フラグ?中二?」
「あぁ~、わかんないんならいいや…。先輩やっぱこれって弁償しなけりゃなんねぇのか」
「えっ?どうかしらね。今までここまでの被害が出たことが無いから何とも…」
床が割れたり、機械が故障する程度なら何度かあったと思うけど、流石にここまでの被害になったことはないだろうし。学校側の許可を得ないといけないわね、これは。まったく、とんでもないのが入学してきたわね。報告書どうしようかしら…。
「その件なら気にしなくても良い。キミの入学を認めた時点で覚悟はしていたからのう」
「学園長、なぜここへ?」
声に振り返ると、着物姿の白髪頭の老人が立っていた。長く伸ばした髭をいじる姿はどこか仙人のような印象を与えるが、子供のような瞳がそれを打消し親しみやすさを生んでいる変わった人だ。
「この男に用があってのう。気にせんでもええよ」
「What's old geezer of use(何の用だクソジジイ)」
「Mouth is bad enough little shit as usual(相変わらず口が悪いなクソガキ)」
「Although quickly if there is use. Kill(用があるならさっさと言え。殺すぞ)」
「you guy early care. It's ... instruction, Defend Himemiya kaori(気の早い奴め。…命令だ、姫宮薫里を守れ)」
「You do not misunderstand at something or handyman me?Most part, from what I do Tteyuu protect a woman of ordinary Kaori such like.Do not you Ten blurring(お前は俺を便利屋かなにかと勘違いしてないか?大体、薫里みたいな普通の女を何から守れっていうんだ。ボケてんじゃねぇのか)」
「But should I remember the last name of Himemiya also you?(お前も姫宮の性には覚えがあるはずだが?)」
「Hey, could not be ...(おい、まさか…)」
「It's that kind of thing.Do not found, Defend that child(そういうことだ。分かったな、あの子を守れ)」
「Stop messing around!What guy why!It is a husband who is If you change even much more! !(ふざけるな!なんでアイツ何だよ!他に幾らでも替えならいるハズだ!!)」
「Or going to opinion to me,In the social standing of the dog! !(私に意見するつもりか、犬の分際で!!)」
「Fuck! !Not a lick you doing!(クソが!!舐めてんじゃねぇぞ!)」
「Barking at how much, but is good.However, the fact does not changeThe fate of that child is applied to the judgment of you.(幾らでも吠えるがいい。ただし、事実は変わらん。お前の判断にあの子の運命が掛かっている)」
「Would be nice.But The White promise!Do not bring to the world of here absolutely the guy! !(いいだろう。だが約束しろ!アイツを絶対にこっちの世界に連れ込むな!!)」
「It's work depends on you.Would have been found"Fiction"(それはお前の仕事次第だ。分かっているだろう”虚構”よ)」
「Chi,You do not die in decent(ッチ、碌な死に方しねぇよテメェは)」
「KAKAKA,It 's a compliment for me(カカカ、それは儂にとっては褒め言葉じゃよ)。それじゃあ、頼んだよ斬島くん」
「分かりましたよ、学園長。約束、守ってくださいね」
「分かっとるよ。ああ、新入生の諸君お疲れ様。測定し終わってないものは、談話室に測定器を用意してあるから受けるように。終わった者は振り分けられたクラスに移動じゃ。時師査くん、誘導をたのめるかのう」
彼氏くんとしばらく外国語で話していた学園長は、いきなり私に会話の矛先を向けた。
「えっ?は、はい!分かりました」
「カカカ、よろしく頼むよ」
用は終わったとばかりに背を向けると、相変わらずの奇妙な笑い声を上げながら講堂から出ていく。皆ポカンとしてるわね、やっぱり。それは彼氏くんったら事件起こした後で、学園長と外国語で会話し出すし、外国語の時は何でか怒ってたけど日本語に戻ると急に敬語だし…。わけわかんない。
「魁斗、学園長と何を話していたのだ?」
「外国語うまいのね」
「薫里、七野瀬…」
やっぱり彼女しては気になるのねやっぱり。七野瀬さんも何だか彼氏くんに興味があるみたいだし、これはまさかの三角関係?いや、ハーレム!いや~、最近の若い子はすごいわね。あ、彼氏くんが彼女を見つめる……。あ、頭を撫で始めた。わ~大胆////////彼女も嫌がるどころかフニャ~って猫みたいになってるし。ええぇ!七野瀬さん乱入!!「姫宮さんばかりずるい」って、彼氏くんの顔に急接近した。ピュキーンってwwwwwピュキーンって彼女の目が光ると七野瀬さんにネコパンチをお見舞いした。わぁ、修羅場だよ修羅場wwww。会話は聞こえないけど「魁斗に近づくな」「それは貴方」みたいなやつをしてるよきっと!!ん、なんでわかるかって?女の感を甘くみてはいけないよ♪おっと、目を離したスキにって……え…ちょ、二人ともそれ魔聖具!!シアンとスカーレットとのオーラでてるしなんで彼氏くんの首筋当ててるの!?ヤバいってそれ!彼女の大きな両手剣も危ないけど、七野瀬さんのやつなんて日本刀だから!彼氏くんの首がサクンって<……サクン…>逝っちゃた~!?誰か警察、いや、イケメン連れてきて彼女達を止めてぇ~