Ⅴ
「ど、どうしよう…」
さきほどの自信もむなしく、レイカはその場に崩れおちた。
「あーあ。なんていいわけするの?」
「………」
レイカはついに黙りこくってしまった。
「………」
見かねたリンカが声をかけた。
「ねえ、どうすんの?」
「…ひとつだけ、気になるヤツがいる。」
「はあ?」
「とりあえず、そいつん家行ってみる。」
「え、だれのところ??」
「雨村由梨」
雨村由梨。
レイカが彼女の家を知っているのは、以前真悟とこんな会話をしたからだった。
「なーレイカ、雨村由梨って知ってっか?」
中学2年のとき。
真悟と知り合って仲良くなったのは中1の半ばだった。
その真悟がこんなことを聞いてきた。
「アマムラユリい? だれだそれ。おまえナンパでもしたのか?」
冗談めかして言ったが、お調子者の真悟が真剣そうだったためまじめに聞くことにした。
「まだレイカと仲が良くなる前にだな俺の友達に形野圭太っつーやつがいたんだ。そいつも、まあ、軽いちょっと変わった能力を持っててな、」
「え、ちょっとまて。おめえ、俺以外にもそーゆー能力もった知り合いいたのかよ?」
「まーな。圭太の能力もおまえと同じ、物体浮遊能力だ。」
「へえ~。けっこういるもんなんだな。」
「でもあいつの場合はけっこう重いもんも浮遊させることができたんだぜ?」
「うるせーよ。…ん? ちょっと待てよ。この学年にカタノケイタなんてやついたか?」
「そこなんだよ。圭太は中1の夏休み前に姿を消したんだ。」
「へ?」
「まるっきり、なんの跡も残さず。」
「なんだそれ? 親とかはどうなってんだよ」
「圭太に両親はいねえ。あいつの両親小学校のときに両方ともなくしてる。」
「けっこう壮絶だな…」
「ああ。だから、探す人もとくにいなかったんだ。」
「で、それがどうして、アマムラユリって女と関係あるんだよ。」
「圭太が消えたのがその雨村由梨が転校してきてからだったからだ。」
「……」
「なんらかの関係があるとみてもいいんじゃねえか?」
「だけど…よく考えれば、雨村由梨なんて女も聞いた事ねえ…」
「そいつもすぐいなくなったからな。」
「ふーん。どうしようもねえってわけか…」
その後、二人が高校にあがり2年になったとき、二人はその雨村由梨と再会することになるのだった。
「なあるほどね…。」
「だからほぼ雨村がなにかを知っていることに変わりはねえ。」
「…わかった。あたしもついってたげる。」
「おう!」
「ところで、家は知ってんの?」
「……河取通りのへんってことぐらいは…」
「…使えねー……」