Ⅲ
(11:30。赤野邸集合。必ず来い)
「ああん??」
レイカは寝起きでボサボサの髪をかきむしりながら顔を歪ませた。
冬休みにはいってから4日が経っていた。
そして今日は25日。クリスマスである。
恋人もなにもいないレイカは今年もさびしく家族でぱーてぃーか、と思っていた。
そして今。
友哉からの簡潔すぎるメールにくびをかしげた。
真悟になにかあったのか…?
それとも3人でクリスマスパーティーか?
お調子者の真悟がいるならぜったいに後者だな、と思いながらいそいそと身支度をはじめた。
「しょーがねえ。いってやるか。」
もちろん。
母親が少し前に買ってきた今日のためのクラッカーを1つ持って。
もう心はクリスマスである。
パァァァーーーーン!!
「メルイークリスマス!!」
派手なクラッカーの音でチャイムもならさずレイカは真悟の家の玄関を開けた。
たぶん相当近所迷惑だろう。
だが、のりにのったレイカはまったく気にしていなかった。
ガラッとリビングの戸があいた。
おっ、ノリノリの真悟が、クラッカーをこっちに向けて放つだろうとすこしレイカは身構えた。
だが。
「なにやってんの、お前。」
浴びせられたの冷え冷えとした友哉の声だった。
「…ん?」
友哉の顔は、クリスマスパーティーどころではない、という感じの暗い顔だった。
「真悟が帰ってきてないらしい。」
「はあ?」
先ほどのテンションも落ち着いたレイカはうつむいている二人の子どもの顔をみた。
「五日前に学校に行ったきり、かえってきてない…」
真悟によく似た顔の男の子はたしか、弟の赤野加波で中2だとか。
もうひとりの女の子は、妹の赤野瑠香、小1。
「どっか、旅行にいってんじゃねえの?」
「…いや、たぶんそれはない。」
友哉が答えた。
「なんで。」
「あいつは単純だから旅行いくならいくで俺達に自慢するはずだ。」
「な、なるほど…」
真悟のことをよくわかってんなあ、と感心しながらうなずいた。
「加波兄ちゃん…真悟兄、帰ってくるよね? 今日ね、くりすますなんだよ。」
「…大丈夫だ」
瑠香は加波の手を握った。
「…しょーがねえ。ひとつだけツテがあるんだ。そいつにあたってみる。」
「! ありがとう。」
加波と瑠香の顔がパッと明るくなった。
「おう! 任しとけ!!」
「…と、言ったのはいいが…大丈夫なのか?」
帰り道、友哉は聞いた。
「おう! とりあえず姉キに聞いてみるよ。」
「…リンカさんか…」
「絶対みつかるはずだ!」