Ⅱ
さて今日はどんな風にくるだろうか…
なにもはいってなさそうな鞄を手に、束切レイカは廊下を歩いていた。
たまには肘で顔面を突くとか、いや、ナチュラルにふつうのパンチでもいいだろう。
物騒なことを考えていた。
ガラッ
1-B とかかれた教室のドアをあけてレイカは身構えた。
…なにもこない。
「…アレ??」
1-B、教室のすみ。
「なあ友哉。今日は珍しく真悟いねえのか?」
「らしい。」
「ふーん…」
「……」
「……」
「バカでも風邪ひくんだな。」
「らしい。」
「……」
窓からは気持ちのいい風と日差しがはいっていた。
レイカは岸草友哉としゃべっていた。
というか一方的につぶやいていた。
なんだ、珍しい。
珍しい、という言葉をもう一度心のなかで言った。
いつもの朝。
かならず俺が教室を開けると真悟があいさつをする。
で、しつこい。
だから、殴る。
そんな感じで毎日が成り立っていた。
キーーンコーーン……
チャイムが鳴り響いて、友哉に軽く手をふり席に着いた。
「えー、これで冬休みにはいるわけですがぁー、なるべく気をーぬかないようにぃー。」
風邪…ねえ。
あいつが病気で休んだのをみたことがない。
といっても中学のころからだが。
ボーッと外を眺めた。
ゴスッッ
額に強烈な痛みがはしった。
「イッテェ!!」
「つーかーぎーりー…。いまは自然観察じゃなくて先生の話を聞こうなぁ。」
さっきから眠くなりそうな声でしゃべっていた担任がお約束のように白いチョークを投げた。
すごいコントロール力である。
クスクスと女子の笑い声が上がった。
「とーもやー。かえろーぜー。」
「…おまえ、荷物それだけなのか?」
「は?」
「…まさか明日から冬休みだってこときいてねえのか?」
「へ?」
はあ…
友哉はこれ見よがしにため息をついた。
「バカな友人をもつと苦労する…」
「んだとコラァ!!」
窓からは気持ちのいい風と日差しがはいっていた。