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第122話 優しき海の王

霊牙神が霊豹神に近づく。

霊豹神は見上げながら呟いた。

「弱点無しかよ・・・」

「弱点ならあるさ!」

そういう霊牙神の体がどんどん縮んでいく。

「この力は強大故に時間制限があるんだ。さらに力を使うと私は子供の姿になってしまい、その間は能力が使えない」

子供の姿になった霊牙神を見た霊豹神は悔しい顔をしていた。

「判断が早すぎたか・・・」

「そういうことだね!」

臭撃神のアナウンスが始まる。

「準々決勝第三試合!霊牙神の勝利です!」

『わぁー!』

歓声が上がり、二人は控え室へ戻っていく。

控え室では亡鎧が待っており、ニコニコしながら二人を迎えていた。

「・・・その顔ムカつくなぁ」

霊豹神が嫌そうな顔で呟く。

「お疲れ様でした♪」

アナウンスが続く。

「会場の修復が終わり次第、準決勝を行います!」

準決勝までの間、魔王と俺は談笑していた。

「次も魔海竜が勝つだろう」

「魔海竜ってそもそもなんなの?」

「うむ・・・実は我もよくわかっておらんのだ」

「魔王さんが作ったんじゃないの?」

「我ではない。いつの間にか海に生息していた」

「魔海竜には聞いてないの?」

「一度だけ聞いたことあるが、本人もよくわかっていないそうだ。ただ一つだけ"子供たちを守る"というのが頭の中にあったらしい」

好『独創神は何か知らない?』

独『さぁなぁ?俺はお前と吾亦紅神を作ってからこの世界には居なかったからなぁ』

好『吾亦紅神は?』

吾『・・・ごめん、俺だわ』

好、独『・・・は?』

吾『人間界にいた蛇を魔界の海に放り込んだらいつの間にか魔海竜になっちゃった』

好、独『お前だったんかい!』

「魔王さん、魔海竜のことがわかったよ・・・」

「なんだ?」

「この吾亦紅神の気まぐれだったよ」

俺の首元から吾亦紅神の頭が飛び出す。

吾「ごめんごめん」

「お前が原因だったのか・・・」

吾「でもなんで子供たちを守るようになったんだろうね?」

「それもお前じゃないのか?」

吾「違うよ〜、俺は何もしてない」

魔海竜の謎が解けたと思ったらまた謎が出てきたのであった。

そして臭撃神のアナウンスが始まる。

「お待たせしました!これより準決勝を行います!あのスピード狂の怪猫神を打ち破った魔海竜!次はどんな戦いを見せるのか!?対する刃鮫神は剛力神、針影神を破った強者!まだまだ力を見せてはいない刃鮫神!海に関する生物同士!準決勝スタートです!」

バァーン!

魔海竜が赤い水を纏い始める。

ザァー!

それを見た刃鮫神が口を開く。

「それが出来るのは君だけではありませんよ」

ザァー!

刃鮫神も水を纏い始める。

「さすがは鮫の神だ。こんなことは当たり前に出来るか」

「こんなことも可能ですよ!」

纏った水の形状を槍状に変化させ、魔海竜に向かって飛ばす。

シュシュシュシュ!

次々と魔海竜に襲い掛かる水の槍を魔海竜は余裕の表情で避ける。

「さすがですね」

「お返しだ」

魔海竜も刃鮫神と同じ様に赤い水で槍を形成し飛ばす。

シュシュシュシュ!

刃鮫神は全てを紙一重で避け、笑みをこぼす。

「やりますねぇ」

「お互い様だ」

二人は笑いながら距離を詰める。

ザッ!

刃鮫神が自身の周りの水を複数の鮫の形に変化させ、一斉に襲い掛からせる。

ズァッ!

その隙に刃鮫神は鮫の姿となり、土に潜る。

ズボッ!

「土の中も泳げるのか!?」

魔海竜は驚きつつも、水の鮫を横に上にと避け続けていた。

魔海竜が着地した瞬間、土の中から大きく口を開けた刃鮫神が現れ、魔海竜に噛み付く。

バクッ!

「ぐっ・・・」

噛みついたまま、宙を泳ぎそのまま地面へ叩きつけた。

バゴォーン!

土煙が舞い、人型へ戻った刃鮫神が着地すると、一本の赤い水が刃鮫神を貫く。

「ガッ・・・!」

「気を緩めるな。我はまだ本気を出しておらぬぞ」

足元に傷を負いつつも立ち上がる魔海竜。

「その様ですね」

お互いに傷を負うが、二人から笑みは消えていなかった。

ザッ!

魔海竜が一瞬で距離を詰め、蹴りを入れる。

シャッ!

回転して避ける刃鮫神はそのまま裏拳を入れる。ガッ!

右手で裏拳を防御し左手の指を刃鮫神に向ける。

ヒュッ!

赤い水が一直線に刃鮫神を襲う。

紙一重で避ける刃鮫神。

ガブッ!

「ウガッ!」

刃鮫神に気を取られ、後ろにいた水の鮫に気付かず胴体を咬まれる魔海竜。

そして刃鮫神が巨大な顎を出現させ、水の鮫ごと魔海竜に噛み付く。

「ぐっ・・・」

さらに水をヒレの様に変形させ、一気に魔海竜を襲う。

スパパパパ!

切り刻まれる魔海竜から笑みが消える。

その瞬間、魔海竜が本来の姿へ戻り刃鮫神の顎から逃れる。

「・・・大きいですね」

「ふぅ・・・なかなか強いな鮫の神よ」

「あなたも強いですよ」

「少し本気を出させてもらう」

バゴォーン!

魔海竜が言い終わった瞬間、刃鮫神が吹き飛び壁に激突していた。

『今・・・なにをした?』

会場がざわつく中、瓦礫の中から立ち上がる刃鮫神。

「何が起こったんですか?」

「これくらい避けると思ったんだがな」

魔海竜の後ろから赤い水が現れる。

ザァァァァァ

「水?」

次第に客先に届くギリギリまで水が溜まり、小さな海が出来上がっていた。

「いいのですか?こんなことをして」

「貴様の得意な海で倒してやる。来い」

「そうですか・・・舐められてますね!」

鮫の姿になった刃鮫神は海中を泳ぎ回り、魔海竜を翻弄するが、常に視界に入れられていた。

「見えているぞ、刃鮫神」

「そうですか?」

魔海竜の視線とは逆から声が聞こえ、驚きながら振り返る。

そこには刃鮫神の姿は無く、海中を泳いでいる。

「どういうことだ?」

海中を泳ぐ鮫の方を向くとまたしても逆側から声がする。

「こういうことですよ」

その瞬間、魔海竜の顔に衝撃が走る。

バキィッ!

そこには人型の刃鮫神が浮いており、海中には巨大な鮫が泳いでいた。

「なるほど・・・あの鮫は囮か」

魔海竜は海中の鮫を追う事をやめ、常に囮とは逆方向を見ている。

「どこを見ているんですか?」

囮だと思っていた鮫の方から声が聞こえ、魔海竜の下半身に衝撃が走る。

「うぐっ!」

次第に翻弄され始めた魔海竜が、赤い水を操り海中の鮫を拘束する。

バキィッ!

再び顔に衝撃が走る魔海竜。

「ガッ・・・」

「随分惑わされてきましたね」

「・・・ふむ、仕方あるまい」

ザァァァァァ!

観客席ギリギリまで溜まっていた水の水位が円柱状に上がり、魔海竜を飲み込んでいく。

「来るがいい」

ザバッ!

刃鮫神が動き始める。

しかし、動けなかった。

「どうなっているのですか?」

「我は魔界の海を操る。この小さき海は我の支配下だ。貴様を捉えることなど造作もない」

バキィッ!

「ぐっ・・・」

魔海竜の一撃が刃鮫神を襲う。吹き飛ばされることなくその場で留まり二発、三発と連続で魔海竜の攻撃が直撃する。

バゴッ!ドガッ!

「うっ・・・ガッ・・・」

このまま魔海竜の勝利かと思えた瞬間、攻撃を辞めた魔海竜。

そして水が引き、海が消える。

「なぜ・・・辞めたのですか・・・?」

傷付いた体を水で支えながら立ち上がる刃鮫神。

「子供たちの怖がる姿が目に入った。これ以上は我にはできん。降参する」

魔海竜の降参という言葉に会場の全員が言葉を失う。静かな会場。

臭撃神のアナウンスにより静寂が破られる。

「じゅ・・・準決勝は魔海竜の降参により、刃鮫神の勝利です」

『魔海竜が圧倒的だったのに』『見た目の割に優しいんだな』

次々と言葉を発し騒ぎ出す会場。

「あなたは優しいのですね」

「子供たちを怖がらせてまで得る勝利などいらん」

「そうですか」

ドサッ!

刃鮫神が微笑みながら倒れる。

「創造神、治してあげて?」

「は〜い♪」

創造神が観客席を飛び出し、刃鮫神に向かう。

独『俺も修復に行ってくらぁ』

独創神が俺の体を飛び出し、会場の修復に向かった。

読んでいただきありがとうございました!


次回 第123話 見極め


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