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ゼノグラ  作者: omochi
2/2

フェロウ結成

モイラは、意識のないシュウを抱えて部屋へと戻った。思っていたよりも軽い。

けれど、その体はどこか冷たかった。


ベッドにそっと寝かせる。


「きっと大丈夫」


小さく呟き、自分に言い聞かせるように息を整える。


「ヤーシィア」


静かに呪文を紡ぐ。

淡い光がモイラの手から溢れ、シュウの体を包み込んだ。


(効いてる……)


けれど


「……え?」


違和感が走った。

確かに癒しているはずなのに、どこか噛み合っていない。まるで、この力を受け入れていないみたいに。


(体温が下がってきている)


モイラは無我夢中でシュウを抱き寄せた。


「だめ……」


呪文を紡ぎ続ける。何度も。何度も。

祈るように力を込めながら、モイラはそのまま意識を手放した。


目覚めるとそこに居るはずの者はいなかった。ただ、一輪の花だけがそこに存在していた。


「え…?」


見覚えのない花。それなのにどこか懐かしく感じる。

不安が胸をよぎる。


「あんな状態で大丈夫だったのかしら」


モイラは朝の支度を済ませると、いつものように訓練へ向かった。


昨日の出来事がまるで夢のように感じられる。けれどあの花だけは現実だと告げていた。


初の戦闘を終えたモイラは本日からエンゲージへの昇格だ。訓練場はどこか張り詰めた空気が流れている。

いよいよ上官からフェロウのメンバーを発表される。


「これより、フェロウのメンバーを発表する」


上官の低い声が、訓練場に響いた。


「モイラ、ギルガ」


名前を呼ばれ、モイラは一歩前に出た。


「3人目は…シュウだ」


その瞬間。

時計の針が止まったかのように感じた。


「……え?」


思わず、声が漏れる。


周りもざわつきはじめた。


「シュウって……誰だ?」

「そんな奴、いたか……?」


聞き慣れない名前に、戸惑いの声が広がる。

モイラの思考は、それどころではなかった。


(なんで……)


昨夜。確かに、

ここにいた。そして消えた。

あの、少年。


「前へ出ろ」


上官の声。


その直後。

人の隙間から、ひとりの影が現れる。ゆっくりと、歩いてくる。


銀と黒が混ざった髪。

感情の読めない瞳。


――間違いない。


シュウだった。


「……」


何も言わない。ただ、モイラの隣に立つ。

まるで最初から、そこにいるのが当たり前のように。


「以上だ。各自、持ち場に戻れ」


上官の言葉で、その場は解散となった。ざわめきは、しばらく収まらない。


「なあ、お前あいつ知ってるか?」

「いや、初めて見た……」


そんな声が、あちこちから聞こえる。モイラは、隣に立つ少年を見た。


「……なんで」


小さく、問いかける。


「昨日のキズは大丈夫なの?」


シュウは、わずかに視線を向ける。


「……何のことだ」


静かに、そう言った。

モイラの背筋に、冷たいものが走る。


(うそ……)


「モイラ、シュウ、よろしくな」


ギルガは隣で明るく笑っている。

エンゲージに昇格できた喜びを感じているようだ。


モイラは、無意識にポケットへ手を入れた。指先に触れる、柔らかな感触。

あの花。確かに、ここにある。


(夢なんかじゃない)


「……何のことだ」


そう言った彼は、まるで最初から何も起きていないかのようだった。



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