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ゼノグラ  作者: omochi
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出会い

はじめての投稿になります。

まだ拙いところもあるかと思いますが、

あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。

 荒れ果てた街を見下ろしながら、モイラは静かに呟いた。

「世界は、壊れてしまった」

 崩れた建物。焼け焦げた地面。遠くで上がる煙。かつて人が暮らしていたとは思えないその光景は、今では当たり前になっていた。国と国は争い続けている。特殊能力が使える者は皆、前線に立ち、戦っている。


モイラの両親も、その中の一人だった。


 モイラが暮らす施設は、清潔な床、整えられたベッド、規則正しい生活。けれど、それは“守るため”ではない。ここにいる者たちは皆、同じ目的を持っている。


「俺、次は前線行く」「いいな。俺も早く出たい」


 同じ年頃の子どもたちが、当たり前のようにそんな会話をしている。強くなること。戦えるようになること。それが、この場所にいる理由。


「……みんなは?」


 モイラは、少しだけ視線を落とした。窓の外では、遠くで小さな爆発が起きている。

国と国が争っている。それは遠い話ではない。

すぐそこにある現実だった。


 そして――


 モイラは、自分の手を見つめる。わずかに震えている指先を、ぎゅっと握りしめた。


「私の両親も、前線にいる」


 小さく、誰にも聞こえない声で呟く。怖くないわけがない。不安じゃないわけがない。


 それでも、「……だから」モイラは顔を上げる。


「守れるようになりたい」

それが、モイラがここにいる理由だった。



その日、警報が鳴った。


「能力が使える者は準備しろ!」


 施設内が一気に慌ただしくなる。子どもたちは迷いなく動き出し、次々と整列していく。


モイラもその列に加わった。胸の奥がざわつく。


(守られるだけじゃ、生き残れない)


 自分に言い聞かせるように、息を整える。

連れてこられたのは、すでに戦場となっている場所だった。


崩れた建物の影。

空気は重く、張り詰めている。


「来るぞ!」


誰かの声と同時に、気配が近づく。


――敵だ。

その存在を感じた瞬間、モイラの体は固まった。


(こわい)


 足が動かない。呼吸が浅くなる。視界の端で、仲間たちが前に出る。


「押されてるぞ!」

「くそっ――」


状況は一気に悪くなっていく。


そして――

その時だった。


音もなく、そこに“いた”。


ひとりの少年が、静かに立っていた。


 銀と黒が混ざったような髪。感情の読めない瞳。何も言わない。ただ、そこにいるだけなのに、空気が変わった。


 次の瞬間。一撃だった。

無駄のない動き。圧倒的な速さ。気づいた時には、敵はすでに倒れていた。


戦いは、終わっていた。


「……助かったけど」


仲間たちのざわめきが広がる。


「お前、どこの隊だよ」


 問いかける声。

けれど少年は、何も答えない。


「聞いてんのかよ」


それでも、沈黙。


「……気味悪いな」

「関わらない方がいい」


 距離を取るように、周囲が引いていく。

その中で、モイラだけが彼を見ていた。他の誰とも違う何かを感じていた。


その時――


「……っ」


少年が突然、頭を押さえた。


苦しそうに、わずかに顔を歪める。


(断片が、流れ込む)


玉座。跪く人影。戦い。遠くから響く声。


『……シャマシュ様』


――


「……誰だ」


少年は、低く呟いた。


 モイラは迷った。関わらない方がいい。

さっき、そう言われたばかりだ。


それでも、一歩、踏み出す。


「……痛いの?」


少女の声に、少年がわずかに顔を上げる。


「……平気」


短い返事。


モイラは、はっきりと言った。


「……うそ」


 少年が、初めてモイラを見る。その目は、どこか空っぽで、それでいて、深く沈んでいるようにも見えた。


 このとき、モイラはまだ知らなかった。この出会いが、何を意味するのか。


そして――


この少年が、何なのかを。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

また次のお話でお会いできたら幸せです。

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