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0時1分の欠落  作者: リョーシリキガク
午後編 愛

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12/24

12時 監視塔

十二月二十一日。

私はレイグラードを歩きながら、最後の平穏な景色を見届けた。

午前十時だというのに街は薄暗く、極圏に近いこの都市には極夜の影が迫っていた。

冬宮広場では、抑圧に抗うため一人の男が焼身自殺を遂げた痕跡が、まだ凍りつく空気に残っていた。

そしてそのすべてを覆い尽くすように、都市を見下ろす監視塔が重く聳えている。


塔の前には数百人規模のデモが集まっていたが、太陽が昇るより早く、装甲車の列に踏み潰された。


「自然は真空を嫌う」――能力者を排斥する国民の叫びは、夜明けを拒むこの都市で、歴史のほうき【検閲により削除】


――『世界を揺るがした十二日間』第三章:前夜



 監視塔の中、白い照明が眩しささえ帯びる部屋には、大量のモニターが絶え間なく稼働していた。この部屋こそ、心の監視装置(ミーア)の中枢だ。


「……USB……違う。タイプCをくれ」


「はい」


 神宮は短く答えると、端子を作り出した。

 タイプCからタイプBへ。変換プラグに至るまで、便利な能力である。


「例の0時のバグ、もうじき修正されるらしい。くだらない話だがな。理由は――」


「端子が逆に挿さってた、だとよ」


 たったそれだけのことで、国家の支配は1分間、空白を抱えていたのだ。

 しかしもうすぐ、欠けのない監視が完成するのだろう。


「一ノ瀬。裏切り者は誰か分かったか?」


 神宮は、モニターを眺める一ノ瀬に声をかけた。

 能力関連の解析を行なっている国立研究所。その研究者の中に薔薇の団と繋がる裏切り者がいるようで、神宮たちはそのネズミを探していた。


「い、いや……」


 一ノ瀬は淡く痛んだ声で、瞳に怯えを宿していた。

 名前を言えば、その者は間違いなく殺される。そう考えてでもいるのだろう。心を読めなくても分かった。


「薔薇の団が企んでるのは秩序の破滅。テロ組織だよ」


 神宮の声は淡々としていた。「穏健なデモとは違う」と、彼は言う。


 神宮の目は鋭かった。さて、"どちらなら死んでもいい"と思ったのか。


 一ノ瀬は震えながら、それでも名を口にした。


「……この、主席研究員」


「ふーん、そっちなんだね」


 神宮はそれを聞くと、立ち上がった。

 指を額に当て、研究所の位置を補足する。瞬間移動だ。


 その背中に、声が届く。


「……殺さないでほしい。私、自分のことしか考えてないのは分かってる。でも、人殺しに加担したくないの」


 神宮はわずかに振り返り、「悪いが嘘はつけない」と答え、消えた。


 ネズミは馬に変わる。とあるトリックを残して。

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