覚悟を決めた日
昼ごろだろうか、散乱したリビングの真ん中で起きた
全身が痛い、床で寝てたからだろうか
寝起きなのに妙に頭が冴えている。
「起きた?」
目の前に見知らぬ人物がいる
黒髪が見える、一体誰なのか、村の人かな
だが、着ている衣服をみて、違うことがわかる
彼は本で見たような、スーツに身を包んでいる。
特に彼のブレザーは後ろが長く、執事のようだった
「誰?」
自分からあまりにも低い声が出た。
無意識に警戒しているのか
「初めまして、杖です」
ねっとりとした優しい口調で言った。
「訳がわか…」
記憶を辿った、昨日赤い宝石のついた大きな杖を触った気がする…
この目の前の人物が、あの無機質な杖なのか
「やっぱり、訳がわからない」
そこで思考を放棄した。
「とりあえず、お腹すいた。」
キッチンに向かおうと立ち上がり、体の機能が鮮明に働き出す。
本能が内側から拒否するような、鼻につく匂い。
目の前の状況と完璧に動き出した思考が嵌った。
吐いた。
目の前の光景と昨日の自分を当てはめられなかった。
あり得なかった。
昨日、自分は父を…
殺した
父に近づき脈を図る。脈は無かった。
どうしても目の前の光景を理解できない。
思考が絶望に染まる。視界が赤くなる。拒否したくなる。
錯乱してる私の肩を杖が触る
目の前の光景を理解させられた。ような気がした。
その日は何も手につかず
部屋のベッドで仰向けになった
1日かけて、誕生日に起きた出来事を振り返る
振り返るたびに思い出す。自分じゃない感覚が自分に入ってくる高揚感、そして今の絶望した現状
それを思うたび、胃液を外に出した。
何回吐いただろうか、自分の部屋は異臭に染まる
胃の中が空っぽになっても、私の思考は無くなってはくれなかった。
何も得られず、今日は幕を閉じた
無理矢理心を押しつぶした。
出ないと何も進まない
起きるのが昼頃になり、たどたどな足取りで父の元に行く
私の知っている父はいなかった。
庭をスコップで穴を掘り
軽くなった父を埋めた。
涙は流れない。
絶望は、昨日に置いてきた。