誕生日
あれから7年が過ぎた。
髪の毛先から徐々に白くなってきている。
父にもシルベにもバレたくはないので髪を上に持ってきたり、結んだりしてうまく誤魔化している。
白髪の量が多くなくてよかった。
私は外に出る機会も増えていった。
シルベと何度かあって遊ぶ機会も多くなっていった。
15歳の誕生日、シルベと遊び
家に帰ってきた。
遊ぶのも、バレずに帰るのも日常の一部に溶け込んだ
普通に家に帰るとバレるから2階の窓から入り、リビングへと向かう
「お父さん、今日のご飯なに?」
父からの返答はなかった
「お父さん?」
リビングの机のそばで倒れている
「お父さん、大丈夫?」
返事はなかった
「怪我したのかな?」
うつ伏せで転がっている父を仰向けにして確認したが怪我の跡は無かった。
そんな中、机に立て掛けられている布を被ったものと机の上に置いてあった小さな棒が目に入った。
そういえば、誕生日の前日に自室でゴソゴソしてたのを思い出す
「これなんだろ?」
布を被ったものの布を解く
そこには私の身長よりも少し大きな杖があった
棒状の部部は漆黒で、冷たさが布ごしでも伝わる、先端には赤色の大きな宝石なようなものに、周りを2つのリングが囲んでる。
見た目は綺麗だが、杖の奥のから嫌な予感がひしひしと伝わってくる
私はその杖を自分の手で『触った』
瞬間に伝わってきた。
脳みそを直に触られたような嫌悪、心を握りつぶされたような苦しみ、体の内側から焼き尽くされるような痛み。
そして、なんでもできるような全能感が私の思考を覆った。
視界の左半分が赤く染まる。
左目を抑え、その場に蹲った。
痛みが引くまで何時間かかっただろうか
いや、数分もかかってないのかもしれない
ただ、一つだけ言えるのは…
「ワクワク、して、きた?」
歪み始めた
思考も、感覚も、表情も
しばらく感じてなかった、自身の内側から高ぶる感情
いや、今までの、どんなワクワクとも違う
感じたことのない全能感!
感じたことのない吐き気
何かに自分の身体を操られるように
脳は従い、歪んだ感覚は抵抗する
目の前に自分を育ててくれたものが、倒れてるのに
踊り出した。歌い出した。笑い出した。
疲れ果てるまで、リビングで笑った。
倒れても、眠気が襲っても、声を出した。
足が動かなくなるまで、踊った。
辛かった
自分が聞いてくれないことが
その辛さは、身体に痛みとして伝わる
床に倒れてる、『それ』が邪魔だった。
今の私には必要ないものだ
部屋の端に蹴り飛ばした。
普段の自分が絶対しないことをしてる、けど
その自覚はない
ただ、笑った。泣いてる声に近い笑いで
なんで私は、笑ってるんだろう
気づいたら朝になってた。
一人しかいないリビングの床で寝てた。
気分良く寝てた。
視界を覆った『赤』はもうなくなっていた